02、最初の街に潜入…?A
どうやらマイカ……なんとかあの街に……?
●【No.002】●
私とミドリが街を目指して、西へ西へと歩いていた。
その途中で、何度もとても強そうな魔物が、私の目の前に現れてきて、急に速く激しく襲いかかってくる。
そんな中でも私の目の前には、また…あの白い毛並みのとても大きな狼が現れた。
「ガルルルルゥーーッ!!」
「また出てきたわね」
「ひぃぃぃっ!!」
コイツもさっきのヤツとまったく同じ動作で、左前足を大きく高く振り上げていて、私の方に向けて、その鋭い爪を速く激しく振り下ろしてくる。
「ガルルルルゥーーッ!!」
「………」
ブゥン、ドガッ!
この白色の大きな狼の左前足が地面に激突して、凄い土埃が発生してたけど―――だけどね、既にそこに私の姿はもうないんだよね。
ドォン、ドサッ!
「……ガッ…ルルゥ……ッ?」
まもなく、白色の大きな狼が左側横に倒れて、気絶した。
「ふーう、やれやれだね」
今度の私は、あの白色の大きな狼が気絶した場所から、少し離れた場所に再び姿を現した。
「まったく、しつこい魔物だよねぇ。 今のマイカに勝てるわけないじゃないかぁ。」
「さぁ、さっさと街へ向かいましょうか。 ミドリ」
「うん、そだねー」
そう言うと、急襲してきた魔物でレベル44の "ホワイトウルフタイガーE" を、勇者マイカが一瞬で倒し、そのまま踵を返して振り返り、再び街の方へ向かっていった。
「やっと…見えてきたわね」
やがて街らしき、建物が沢山並んで建ってるのが見えてきたんだけど、何故か…街全体が高い壁に囲まれていて、しかも壁の至るところが傷だらけだったのよ。 さらに街の入口には、木でできた頑丈な門で閉じられていて、どうやら…もう中に入ることができないんだよね。
まぁ、私には無駄だけどね。
そこで私が辺りをよく見渡すと、もうすっかり暗くなっていて、夜の闇になってたわ。
「……もう……夜ね」
「あ~あ、やっぱりあの場所から1キロも歩いてきたからだよ。 しかも歩いてる途中で魔物がよく出現してくるから、それで遅くなったんだよ。」
まぁ、ミドリが指摘してきたけど―――もしかしたら、その通りなのかもね。 少しゆっくりしすぎたようだね。
「あ~あ、やっぱり夜は門が閉まってるかぁ~ 残念だけど、これから一体どうするの? マイカ…もしかして、野宿…?」
「う~~ん、そうねぇ~~」
そう言いながら、私が壁の傷に目を向けてよ~く見ていた。
「う~~ん、この傷はねぇ~~ なんかぁ~~ おかしいんだよねぇ~~」
私が唇に指を当てて、率直に疑問に思ったことを口にする。
「…えっ!? 一体何がおかしいのぉ!?」
「いや、だって…この傷……魔物が付けたにしては、あまりにも人為的……人工的なんだもん」
「…えっ!? それは一体どういうことなのぉ!?」
「ほら、これ。 剣や槍や斧などで傷つけた跡だよ。 これは明らかにそうだよ。」
この壁に付いている傷は、明らかに魔物が付けたモノではなく、これは人間が武器を使用して攻撃した傷跡なのである。
「…えっ!? でも…魔物の中にも、剣や槍を持って攻撃するヤツもいるけど、それとどう違うのぉ!?」
「確かに、そういうヤツもいるでしょうけど、この傷は魔物が付けたにしては、なぁ~んかぁ…綺麗なのよねぇ~~」
「…あっ! ホントだ! この傷…いっぱいあるけど、どれも綺麗に整列―――並んでる!」
「ねぇ、おかしくない?」
「………」
そうなんだよね。 この壁に剣や斧などを振り下ろして、傷つけてるけど、どれも綺麗に整列してる傷跡なのよね。 これを魔物がやったのなら、相当な技術力と統率力を持った優れた賢い魔物なんだよね。
でもこの街に来るまでに、色んな魔物に遭遇してきて、群れで行動してるヤツらもいたけど、みんなバラバラで…とても統率力があるとは思えないし、武器も持ってなかったわ。 もちろん、爪や牙などで付けた傷でもないわ。
う~~ん…だとすると、消去法で考えても…人間の兵士…軍隊が付けた傷……だとしか思えないんだよね。
じゃあ、なんで人間の軍隊が…この街に攻撃してきたの!? 一体何が起きているの!? それと一体何の為に!?
って、考えすぎかな?
するとそこで私が―――
「さぁ、街の中に潜入するわよ。 ミドリ」
「……えぇっ!?」
ミドリがキョトンとする中で、私がこの高い壁を飛び越えるくらいにピョ~ンとジャンプして、無事に街の中に潜入できたわ。 わざわざ明日の朝まで待つ必要なんてないのよ。
あら、街の中も…ほとんど真っ暗で、外で歩いてる人もほとんどいないようね。 おそらく、もう家の中で熟睡してるかもね。
「もう! ビックリしたよ! まさか壁を飛び越えるなんて滅茶苦茶だよ! マイカ!」
「うるさい!」
「……うっ……」
なんかぁミドリが怒ってるけど、私はそれをすぐに制止した。
「さてと、街には入れたけど、このあとどうするかな?」
「せっかく、街の中に入れたんなら、"ギルド冒険商" にでも行ってみたら?」
「…えっ!? こんな夜遅くまでやってるの…!?」
「もちろん、"ギルド冒険商" は24時間営業だよ。 なにせ、冒険者をお客様にしているからね。」
「なるほどね、それじゃあ…早速、行ってみましょうか。」
「うん、そだねー」
そこで私とミドリが、夜の街を次なる目的地の "ギルド冒険商" を目指して、さ迷い…いや…歩き始めた。
どうやらマイカ……なんとかあの街の中へ……?