81、言っておくけど、私は天才じゃないわよ!
●【No.081】●
ここは "バイオメドリグス" の国の "SMエロスの町" にて。
街中には約290人の兵士がいて、巨大昆虫カマキリモンスター【デスキラー・シャ】がいて、勇者マイカたち『ブラックファントム』がいて、勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』がいて、上位魔族トウがいる状態。 先程までは勇者マイカと上位魔族トウが闘っていた。 もともとはマイカの力を試すために勝負を挑んだはずなのに、終わってみればあっさり負けてしまった。 気絶して、今はマイカの膝枕で眠っている。 マイカにとっては全く相手にしておらず、最大限手加減した状態で技を出した形になる。 だから言ったはずだ……マイカは最強だと…。
私はトウを膝枕した状態で気絶してるトウを静かに優しく見てる。
「……」
「!?」
するとトウが目が醒めて突然起き上がる。
「こ…ここは…?」
「あら、起きたのね?」
「えっ!?」
トウが後ろを振り向いて見ると、私がニコリと微笑む。
「…あんたは……マイカ…?」
「ええ、そうよ。 あなた…記憶にないの?」
「……?」
そこでミドリがトウの現状を解説する。
「これは一時的な記憶障害だね。
マイカのあの技が凄すぎて、あの闘いの前後の記憶が一時的に欠如してるんじゃないかな?」
「なるほど、あの技…そんなに凄い威力なの?
もの凄く手加減したつもりなんだけど?」
「そ、そーなんだ…」
「……?」
しばらくすると、トウもようやくさっきの出来事を思い出す。
「そうか……あた……私の負け……か……」
「残念だけどね」
『アホか! お前ごときがマイカに勝てる訳がないやろ!』
「……」
『身の程を知れ! おのれは!』
「別にあんたの力じゃないクセに、なんでそんなに威張ってんだ?」
『フン!』
「ようやく思い出したようね。
私との約束」
「……なんで私を殺さないんだい?」
「あら、そんなことをしたらあなたから情報が聞き出せないじゃない?」
「……後悔するかもしれないよ?」
「あら、あなた……私の敵になるのかしら?」
「!」
『!』
ゾクリ!
私はニコリと微笑みながら言うけど、心までは笑っていない。 それを見たトウと【デスキラー・シャ】の背筋から冷や汗が出てきて、顔がみるみるうちに青ざめる。 二人とも理解できた。 この女に敵対して楽に死なせてくれない……絶対に敵対してはいけないと……本能的に悟った。
『オレは終生マイカの味方やで!
敵対なんかとんでもない!』
「あなたには言ってないわ」
『あ……はい…』
あの巨大昆虫カマキリモンスター【デスキラー・シャ】が慌てて弁明していて、私に軽くあしらわれると小さく萎んでおとなしくなる。
「……私は一応、大魔王ゼン様の部下……あんたとゼン様が敵対しなければ、私もあんたと戦うつもりはない…」
「自分の意思では動けないのは宮仕えのサガだけど、自由になりないなら私たちがいつでも協力するわよ?」
「今のところ、間に合ってる」
「あら、そう……残念ね…」
「……」
『……』
これを機に上位魔族も仲間に引き込むつもりなのか? と思ったトウと【デスキラー・シャ】の二人。 この二人…既に私の掌中にあるみたいね…。
「それで…『聖女』について聞きたいんだけど…?」
「ああ、そうだったな。
あの『聖女』カロテラは人間ではない。
私たちと同じ上位魔族だ。」
「えっ!?」
「なにっ!?」
「「「!?」」」
「ふ~ん、そう…」
「ヤツの名前は上位魔族カイ。 大魔王ゼン様の元部下だった女だ。 それが一体どうなったか知らんけど、いつの間にか悪魔神復活の信仰狂者に成り下がったんだ。」
「へぇ~、あの『聖女』カロテラが上位魔族カイ…ねぇ~」
「「「……」」」
『……』
「最初は私も説得を試みたけど、アイツ『悪魔神復活を妨げる愚か者め!』とかいって、私に襲いかかってきた。 説得が不能なため、そのまま戦闘になった。」
「へぇ~、そうなのねぇ~」
「「「……」」」
『……』
「あた……私も手ぶらで大魔王様の下へ戻る訳にもいかないから、なんとか食らいついていたら、アイツ妙な術を使ってオークの身体の中に閉じ込めやがったんだ…」
「オークの身体の中…?」
「あんたが倒したあのオークの身体の中さ。
一応、礼は言っておく。 ありがとう」
「あぁ~、あのオークね。 なるほど」
「今でもこの国のこの町の上空で戦闘を繰り広げている。」
「その彼女は一体何処にいるのかしら?」
「心配ない。 いつも通りなら夜になれば、この国のこの町の上空に当然現れるはずだ。 アイツを突き止めれば、きっとアイツの本拠地もわかるはず」
「なるほど、そういうことなのね。
よくわかったわ」
「ちくしょう! なんでアイツ…ゼン様を裏切ったんだ! あれほどゼン様に忠誠を誓っていたはずなのに…!」
「私の仮説なんだけど、おそらく上位魔族カイは洗脳されているわね。」
「……洗脳?」
「そう、おそらく上位魔族カイを『聖女』カロテラに仕立て上げた張本人がいるはず…」
「そいつは誰だ!」
「それはこの国の主、カラスクイーンアテナじゃないかしら?」
「なにっ!?」
『なんやとっ!?』
「「「!?」」」
私の発言に上位魔族トウや【デスキラー・シャ】は勿論、この国の兵士たちも驚く。
「いつも『聖女』カロテラはカラスクイーンアテナの下にいる。 それだったら言葉巧みに唆して、カイを悪魔神復活の信仰狂者に仕立て上げた。 それだったら辻褄が合うんだけど…ね?」
「一体どうやって洗脳した!」
「それは本人に聞かないと解らないわね。
勿論、洗脳を解いた後でね。」
「……」
『……』
「それはつまり…カラスクイーンアテナを倒さないと、その『聖女』カロテラも元の上位魔族カイに戻らない…ってことですか…?」
「おそらくね。
これで全ての辻褄が合うわね。」
「「「「……」」」」
『……』
「あんた……天才か……?」
「あら、普通よ普通。 前世の記憶に頼ってる部分もあるし、私には優秀なナビゲーターもいるしね」
「エッヘン!」
ミドリが偉そうにドヤ顔する。
「私の見立てでは、もうまもなくここに新たな兵士がたくさん現れる……とか?」
「えっ!?」
「なにっ!?」
「そんなぁ!?」
『なんやとっ!?』
「なんで、そんなことがわかるんだ!」
「今までの経験上、これで終わる様な奴なら上位魔族を洗脳できたりしないわ。 先の先まで読んで行動しないと、悪魔神なんて復活できないわよ。」
「あんた……やっぱり天才か……?
なんで…ゼン様がマイカには手を出すなって言ったのか、ようやく判りかけてきた…」
「うふふ、私は天才じゃないわよ」
「!」
『!』
ゾクリ!
また私はニコリと微笑みながら言うけど、心までは笑っていない。 それを見たトウと【デスキラー・シャ】の背筋からまた冷や汗が出て、顔がみるみるうちに青ざめる。 思わず視線を逸らす。 どうやらいらぬ恐怖心を与えてしまったようね。
相変わらずトウや【デスキラー・シャ】や兵士たちは驚くけど、私たち八人はもう驚かない。 おそらくそのカラスクイーンアテナが私並みの頭脳の持ち主なら、もう次の手を打ってるはず。 もうそろそろ現れるはず―――あの黒い鎧の兵士たちが…。




