80、あんたの力、試させてもらうよ
●【No.080】●
ここは "バイオメドリグス" の国。
その "バイオメドリグス" の国にある薄暗く陰気な街 "SMエロスの町" の中央広場に、余所者の勇者マイカたち『ブラックファントム』と、勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』の面々がいる。
この国に来た目的の『聖女』カロテラを探すには、まず上位魔族トウを探す必要がある。 よくカロテラとトウが闘ってるらしく、もしかしたらトウがカロテラの居場所を知ってるかもしれないからだ。
そのトウの所在を【デスキラー・シャ】が知ってるかもしれないので、呼んでみて聞いてみると、なんとこの国のはるか上空にトウが浮いていた。 上から見下ろすトウと下から見上げるマイカが遂に対峙・対面する。
上空から私の目の前まで降りてきたトウ。
銀髪に褐色の肌がよく目立つ全裸の上位魔族…ね。
そのトウが私を見る。 私もトウを見る。 なんだか緊張感が走る。
「あた……私が上位魔族トウだ」
「私は勇者マイカよ」
私たちはお互い、面と向かって自己紹介する。
「あんたがあの勇者マイカかい?」
「ええ、そうよ。 あなた…服は…?」
「…フク…? ああ、あんたらが着てる布のことかい? 私は着ないね。」
「あなた……自分で恥ずかしいと思わないの?」
「恥ずかしい…? ああ、思わないね。 私の裸が見られるのは、ほんの僅かな時間だけさ。 あた……私に敵対した者は、みんな死んでいったからね。」
「へぇ~、そうなの? でも…死んでない者もいるわね?」
「………」
トウが顔を歪ませて難しい顔になる。
ちなみに兵士たちは手で目を覆い、なるべくトウの裸を見ないようにしてる。 意外に律儀というかウブというか…。 一方の勇者マトオは見慣れているのか、全裸のトウでもちっとも気にせず見てる。 まぁ…相手が女性とはいえ、上位魔族だからね。 仮にも勇者が目を逸らすなどできるはずがない。
「まさか…とは思うけど、その全裸も実力のうちなのかしら?」
「なに…?」
「敵が男だった場合、あなたの裸を見ないように目を逸らすでしょう? そこを攻撃されたら、さすがにひとたまりもないからね。」
「………」
「あら、話が逸れたわね? あなたに聞きたいことがあるの? あなたは『聖女』の居場所を知ってるかしら?」
「…『聖女』…だと? 勇者が何故、『聖女』を探している?」
「こちらにも色々と事情があるのよ。」
「………」
すると…今度は【デスキラー・シャ】の方を見る。
『…なんや?』
「あんた……なんで…勇者マイカと一緒にいるの?」
『オレは別に大魔王ゼンの忠実なる部下やない。 魔族やないし、虫やし、今はマイカについた方が徳やと思ったからや。 なんか文句あるか?』
「あんた…大魔王ゼン様に強くしてもらった恩義を仇で返すつもりなの?」
『ふん、普通の虫にでも戻すんかい? やれるもんならやってみい!』
「……ふふっ」
『何がおかしい?』
「私があんたを強くした訳じゃない。 これはただの忠告よ。 大魔王ゼン様もあまりお優しいお方ではないのでね。」
『脅しかい?』
「いいえ、これはただの忠告よ。 よく覚えておきなさい。」
『………』
「まぁいいわ。 話が逸れたわね? 『聖女』についてだったかしら?」
「………」
「いいわよ。 もし私に勝てたら『聖女』の居場所を教えてあげる。」
「私と勝負するのかい?」
「ええ、そうよ。 私より強い者でない者に情報提供するつもりはないわよ。」
「………」
「あら、今更…怖じ気づいた…かしら?」
「ええ、いいわよ。 上位魔族とは戦闘経験もあるしね。」
「あた……私をあのヒョウと一緒にしない方がいいわよ。 私の方が明らかに強いからね」
「あら、そうなのね。 では…始めましょうか?」
「ええ、いいわよ。 いつでもどうぞ。」
ここに勇者マイカと上位魔族トウとの一騎討ちが始まる。 トウにとっては果たしてマイカの実力がどこまで凄いのか? または自分の実力がどこまで私に通用するのか? それを確かめるチャンスみたいね。 一方の私にとってはあまり無駄な時間を使いたくないので、一気に行こうかしらね?
トウは素手の状態で拳を構える。
一方の私は―――
【フルメタルジャケット・ミラージュ】
私の目の前に無数の光の小型球体が出現して、それが私の目の前で一ヶ所に集まる。 すると、それは光の剣となった。 私は【フルメタルジャケット・ミラージュ】の無数の光の小型弾丸を応用して、ある一点に集中させて、長細い光の棒にさせる。 それをよく練り合わせて光の刃にさせることで、光の剣を作り上げた。 その光の剣を右手で持つ。
次に伝説の皇剣【八魔蛇の剣】を取り出して、左手で持つ。
「「「……?」」」
「……二刀流……?」
みんなが私の行動を疑問に思う。
私は光の剣と伝説の皇剣【八魔蛇の剣】のふたつの剣を "十字の形" に構える。 その "十字の形" に構えたふたつの剣の刀身が光り輝く。
※[この時、光の剣を縦にして、伝説の皇剣【八魔蛇の剣】を横にする]
ガキィーーン、ピカァーーン!
「私から行ってもいいかしら?」
「無論だ。 いつでも構わん。」
「それじゃあ、行かせてもらおうかしら」
「来い!」
トウは拳を構えて待つ。
おそらく、あの拳で私の技を迎撃するつもりでしょうね。
私はふたつの剣を "十字の形" にした状態にして、ふたつの刀身が激しく光り輝く。 まるで刀身にパワーを集束させてる感じね。
「「「……?」」」
「なんだ…パワーが上がってるのか?」
私は特に何もせず、ただ静かにじっと構えて立ってるだけ。 この技の弱点は少し時間がかかること。
それでも天には曇りひとつない青空。 地は何処までも広がる青い海。 一切の淀みも邪念もない水平線なき青一色の空間。 何も音がしない無の境地。
まさに『明鏡止水』―――それよ。
少しの間、そのままの状態を維持。
タッ!
次の瞬間、私はもの凄い勢いで地(海?)を蹴る。
そのままの状態を維持しつつ、もの凄い速度でトウに急接近。 ここから一気に敵との距離を詰める。
「えっ!?」
「それっ!」
ヒュッ、ザァーーン!
私がトウの目の前まで来ると、一気に縦横に構えたふたつの剣 "十字の形" を素早く振り抜いて、その十字の斬撃・衝撃波を接近させて喰らわせる。
「【琥紋十字閃】!!」
「ちょっ……まっ……っ!!?」
ドォーーン、バァーーン!!
私の必殺技のひとつ【琥紋十字閃】がトウにあっさり命中。 直撃した十字の斬撃・衝撃波でトウが後方に吹っ飛ぶ。 そのまま背後にあった民家の外壁に激突する。
ドカァーーーッ!!
「うぐっ!?」
「あら、当たっちゃった?」
十分に対応する時間…回避・防御する時間は与えたつもりなんだけど、終わってみれば…トウはそのままうつ伏せで倒れてしまった。
十分に手加減したつもりなんだけど、やっぱり私の【琥紋十字閃】は威力がありすぎるようね。
※何故、トウは「あたし」から「私」に言い換えたのか? 特に誰も気にしないし、誰も指摘しなかった?
([報告])
近々、新作が投稿される予定。
今度の作品は歪んだ歴史モノ。
興味があればご覧下さい。




