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絶望老人が異世界転生をしたら、もう既に最強無双になっている?  作者: 賭博士郎C賢厳
B.バイオメドリグスの国編
84/121

77、いずれにしても……私のシナリオ通りよ

  ●【No.077】●



 ここは "バイオメドリグス" の国にて。


 かの国の最初の街 "ガナリドの町" に潜入することに成功した勇者マイカたち『ブラックファントム』と、勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』の面々(メンバー)。 街自体は普通の街であり、建物も宿屋・民家・お店・食堂・酒屋・教会などあり、人通りも多くの人で賑わっている。 秘密主義な国だと聞いていたので、てっきりもっともの静かで人々も家の中に閉じ籠っているものだと思っていたけど、案外…普通に盛況ね。 とても明るくて開放的だわ。


 これは意外―――


「……?」

「へぇ~、普通の街じゃない?」

「一体どこが秘密主義なのかしら?」

「どこにでもある普通の街並みよね?」

「はい、そうですね…」


 なんだか拍子抜けな感じで、思わず率直な感想を()べる。


「とりあえず宿屋か "ギルド冒険商" を探しましょうか?」

「はい、そうですね」

「それじゃあ、まず先に宿屋から探しましょうか?」

「はい、判りました。」

「ええ、そうね。 わかったわ」


 この後もマイカたち8人が街中を歩きながら宿屋を探す。


 ちなみに勇者マイカたちが有するモンスターの現在地は、スライムのミドリがマイカの左肩に、ドラゴンのムラサキが小さくなってアロトリスの左肩に、(ドラゴンのクロヒコは既に帰還した) それぞれ乗ってる。 また【デスキラー・シャ】は、この国のはるか上空を浮いている。






 しばらく街中を歩いていると、ようやく宿屋を見つけた。

 目の前まで来ると、三階建ての普通の宿屋に見える。


「あっ、あった! 宿屋よ!」

「おお、見つけたぞ! 宿屋」

「ようやくありましたね?」

早速(さっそく)だけど、部屋がまだあるか確認してみましょう。」

「はい、判りました。」


 そこで私たち8人が宿屋に入る。

 まだ何部屋か残っていたけど、私たち4人で一部屋、マトオたち4人で一部屋、それぞれ宿泊部屋を予約する。 案内された宿泊部屋まで行くと、大きな荷物は部屋に置いて、手荷物だけ持って、また部屋を出る。 ()()()()()()()()()()()()。 今度は "ギルド冒険商" を探すためよ。






 私たち8人が "ギルド冒険商" を探す。


 しばらく街中を歩いていると、()()()()()建物を見つけた。

 ただし、店名は違う。

 本来なら "ギルド冒険商" となってるところが "ギルド屋" になってる。

 そもそも "ギルド冒険商" とは、冒険者が仕事の依頼や任務を受けて、()()()達成・成功すると、その仕事にあてられた報酬の受け取りやランクの昇格などあって、それで冒険者の生計が成り立つギルドなんだけど、この "ギルド屋" も、それと同じ()()なのか?


 とにかく建物の中に入る。


 中に入ると、ほとんど人がいない…。

 冒険者()()()()()もいるけど、ほとんどマバラ…。

 建物の奥にあるカウンターの所に受付嬢()()()美女が立っているので、近づいて話を聞いてみることにした。


「いらっしゃいませ」

「ここは "ギルド冒険商" では…ないのかしら?」

「はい、ここは "ギルド冒険商" ではありません。 ここは "ギルド屋" です」

「それで "ギルド屋" とは、一体何かしら?」

「はい、ここは余所者……特に冒険者たちに仕事を斡旋・紹介する所です。 あなた方のいう "ギルド冒険商" とほぼ同じ内容のお店だと思われます。」

「名前だけ違うってこと?」

「はい、おそらく…。 私たちの国では "ギルド冒険商" とは呼びません。」

「……」

「へぇ~、なるほどねぇ~」

「へぇ~、そうなんですねぇ~」


「それで…ご用件は?」

「ここでは情報収集は可能かしら?」

「可能です。 ただし、事前に身分の確認をお願いしております。」

「ええ、いいわよ」

「はい、判りました」


 そう言うと私たちは漆黒のカードを取り出して、美人受付嬢に手渡した。


「黒いカード…勇者…様…?」


 そう言って美人受付嬢が漆黒のカードを受け取ると、その漆黒のカードから私たちの身分や情報を確認する。


「!」

「…?」

「何かしら?」

「だ…男爵様…?」

「あぁ~、確かに―――」

「あら、そう言えば―――」


 そう言えば…私たちって貴族だったわね。

 もう…すっかり忘れていたわ。


「しかも…冒険者ランク…C…?

 これまで数々の功績を残してきてますね…? 凄いです」

「あら、そうかしら?」

「それほどでもありませんけど…?」

「まぁ…確かに…凄いけど…ね…」

「……」


 凄い割には…まだ冒険者ランクがCだけどね。


「それで…何の情報をお知りになりたいのですか?」

「…『聖女』について…です」

「!」


 なんと『聖女』という言葉を発した途端、美人受付嬢の顔色が変わった。 かなり難しそうな顔になる。 せっかくの美女が台無しね。


「ここでは『聖女』って言葉は禁句かしら?」

「……」


 よほど、この国では『聖女』のことについての情報収集はキツいらしいね。 もしかしたら、この国に来る前のあの連中とも、何か関係あるかもしれないわね?


「この国に来る途中で、色んな奴に絡まれてね。

 ()()()()を倒したら、あの大きな門が自動的に開いたのよ。

 これって…何か関係あるかしら?」

「……」

「どうやらあなたに聞いても解らないでしょうね。

 仕方ないから、後ろの人達に聞いてみましょうか?」

「?」


 私がそう言うと、美人受付嬢が私たちの背後を見て驚く。 私たちの背後……つまり、建物の入口にたくさんの兵士が槍を構えて立っているからだ。 特に一番前にいる兵士たちの隊長さんが、私のことを睨み付けてる。


「こ…これは…?」

「ふふふ…」


「お前が勇者マイカか?

 我々と一緒に来てもらおうか?」

「ええ、いいわ」

「はい、判りました。 隊長殿」


 驚く美人受付嬢に、私は意味深で不敵な笑みを浮かべる。 全ては……計画通りよ。


 私のシナリオは…とっくに出来ている。


 この兵士共は、おそらく私たちを捕縛するために現れた…マヌケな人達…。

 捕縛理由はみっつ……かしら?


 ひとつは、この国では『聖女』についての調査・情報収集は御法度。 特に私たちみたいな余所者が『聖女』について調べるなんて、もっての(ほか)。 おそらく入国した時から監視されてたと思われる。

 ふたつは、この国に来る途中で出会った連中がこの国の関係者、もしくは要人で、()()()()を私たちが倒してしまったから、私たちを捕縛してきた。 きっと何処(どこ)かで見ていたんだわ。 私たちが()()を倒すところを…。

 みっつは、勇者の到来。 しかも、男爵の貴族で冒険者ランクCの余所者が、この国に来たことへの対応…。


 このみっつのどれか―――あるいは全部か―――


 やっぱり、情報収集はちまちまと街中を歩きながら探すより、一気に()()()()に行った方が確実よね?


 いずれにしても……私のシナリオ通りよ。


 ふふふ―――私は密かに…ほくそ笑む。


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