76、油断大敵では済まされない行為
●【No.076】●
勇者マイカたち『ブラックファントム』を乗せた馬車と、勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』を乗せた馬車からでも、ようやく次の目的地 "バイオメドリグス" の国の出入口である大きな門が見えてきた。 その途中…変な邪魔者が登場して、少しだけ予定から遅れたけど、どうやらちゃんと目的地に到着できた。
「ん?」
大きな門の前に、誰か立ってる。
その姿は深紅の全身鎧兜に、真紅のマントを身に付けて、深紅の大槍を持った騎士が立ってる。 まるで門番のように堂々と仁王立ちしてる。
「……」
勇者マイカたち『ブラックファントム』の馬車を大きな門の脇に停めて、馬車から降りる。 続けて、勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』の馬車も大きな門の脇に停めて、馬車から降りた。 この8人が大きな門の前に立つ深紅の騎士を見る。
私たちが、その深紅の騎士の前に立つ。
「あら、また…なの?」
「アイツ…?」
「なんだ…あの騎士は…?」
「あいつ…なかなか強そう…ね」
「高名な…騎士なのかな…?」
「「「「……」」」」
そこにアイツが言った。
「よくぞ、ここまで来たな。
勇者たちよ、我が名はカラスナイトクリムゾン。
勇者たちを倒しに来た。
いざ、尋常に勝負!」
やっぱり、アイツ…か…?
あの深紅の騎士が…例のカラスナイトクリムゾンというヤツなのね?
かなり強そうなヤツに見えるけど、まだ私には敵わない…はずよ。
しかし、ここまで来て、まだ闘うつもり…なの?
もう次の目的地 "バイオメドリグス" の国までは目と鼻の先…なのに、ここまで邪魔するとは…?
なんだか怒りがこみ上げてきたわ!
「なんで、そこまで邪魔するの!」
私は思わず、アイツに向かって怒鳴る。
「笑止。 我々は悪魔神ヴォグゲロルス様を復活させる者たち。 お前たちは悪魔神ヴォグゲロルスを封印・打倒する者たち。 これだけ、明確な敵対関係があって、今更そのような世迷い言をいうか?」
「解らない? 悪魔神は全ての世界・全ての生命体を消滅させられるほどの恐ろしいヤツなのよ? それを復活させるつもり?」
「笑止。 我々はそれを望んでいる。
むしろ、我々の命だけで全てを消滅させられるならば…本望!」
「……」
コイツらイカれてやがる。
自分たちも一緒になって、関係ない者たちを全て消滅させるというの?
やっぱり、何がなんでも悪魔神ヴォグゲロルス復活も、コイツらの野望も止めなければならないね。
「いいわ。 相手をしてあげるわ」
「ちょっと待って下さい。 マイカさん」
「何かしら? マトオ」
「あの騎士は俺たちが相手をします。」
「?」
「俺も勇者のはしくれです。
あのようなヤツにいいように言われているのがシャクにさわります。」
「あら、そうなの?」
「はい、アイツに目にモノを見せてやりますよ!」
「でも、アイツは強いわよ?」
「はい、承知の上です」
「いいわ。 それならあなたたちに任せるわ」
「ありがとうございます。 マイカさん」
「ふっ、バカめ!」
マトオが私に一礼すると、マトオたち四人が深紅の騎士と対峙する。 そこからマトオが【剛魂の剣】を隠し持つ。
「愚か者め。 貴様らごときに我の相手がつとまるか?」
「そのセリフ、俺たちを倒したあとで言え」
「ふん、よかろう。 後悔するがいい!」
深紅の騎士が深紅の大槍の先をマトオに向けて地面を蹴った。 続けて、マトオも隠し持った【剛魂の剣】を取り出し構える。
タッ、シュッ!
「死ね! 愚か者!」
「後悔するのは…お前の方だっ!」
マトオが【剛魂の剣】の剣先を前へ向けて、自分に向かってくる深紅の騎士に [紅] の小型火球を発射させる。
ズドォン!
「な、何っ!?」
マトオの突然の攻撃に、深紅の騎士は向かって突進してくるので、勢い余って防御体勢が取れない。 完全に油断した。
「まだまだ行くぞ!」
続けて、マトオが【剛魂の剣】の剣先から小型火球 [紅] を深紅の騎士に向けて連続発射する。 驚愕・油断したため、一瞬対処が遅れる。
ズドドォン!
「な、なんだとっ!!?」
これでは突進中の深紅の騎士が前方から迫ってくる小型火球 [紅] 三連続発射をモロに喰らうしかない?
まさか…あんな攻撃ができるとは思わなかったから、完全に裏目った。 否、あの勇者の男を完全に舐めてた。 油断大敵。 ここに来て、大ピンチ?
「うまく背後に回り込めたな!」
「私たちを舐めていたあなたの負けよ!」
さらに素早いハーリルのお陰で、深紅の騎士の背後に回り込めたエミリアスが最強の攻撃魔法【大火球】の大型火球を瞬時に発動させて、ヤツの背中めがけて発射させる。
ズドォーーン!!
「そ、そんなバカなぁぁーーーっ!!?」
前方からマトオの【剛魂の剣】が放った [紅] 小型火球三連続に、後方からエミリアスの最強の攻撃魔法【大火球】の大型火球が突進しかできない深紅の騎士を高速強襲。
「チクショォオオオオオオオオォォォォーーーーッ!!!
カラスクイーンアテナさぁぁまぁぁぁぁーーーーっ!!!」
[情けなく散る]
ドッカァァァァーーーーッ!!
小型火球 [紅] 三連続と【大火球】の大型火球が深紅の騎士に直撃。
━・ 大爆発 ・━
かの国の大きな門の目の前で爆発。 深紅の鎧兜は粉々に吹き飛び、鎧の破片があちこちに散乱する。 深紅の大槍だけが近隣の森の中に飛び去る。 改めて完全に裏目った。 てっきり槍と剣の斬撃による接近戦を予想していたけど、なんと中間距離からの炎系攻撃で決着をつけるなど、さすがの深紅の騎士でも想像してなかった。 このパーティーが炎系攻撃もできたとは…。 ちなみに鎧の中身が見つからない…?
まさに油断大敵では済まされない行為だ。
否、これは窮鼠猫を噛む―――か?
「「「……」」」
「だから言ったはずだ……後悔するのは…お前の方だと…」
彼らに勝利の喜びはない。
こうなることは判っていたから…。
その後で私たち8人はバラバラになった深紅の鎧兜の破片をかの国の近隣の森の地面に埋める。 何故か、深紅の大槍だけは何処にも見当たらない。 それでもバラバラになった深紅の鎧兜の破片を全部地面に埋めると、なんと "バイオメドリグス" の国の大きな門が大きな音を立てて自動的に開いた。
ギギギギギギギギィィィィィ―――
大きな門が開くのを見て、私たちが―――
「……」
「あら、開いたわ?」
「おお、あの深紅の騎士を倒すと、あの大きな門が開くのか?」
「これで街に入りますね?」
「ええ、入れますね?」
「それでは早速入りましょう。」
「はい、判りました。 マイカさん」
「ええ、そうね」
そう言って私たち8人が大きな門をくぐり抜け、そのまま最初の街へと歩く。 ちなみに二台の馬車は、国外の指定された場所に改めて停める。
おそらく今年はこれで終わりです。
今年もどうもありがとうございます。
それでは皆さん、来年も良いお年を。
あくまで予定だけど、この話で今年は終了だと思います。
来年も宜しくお願いします。
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