75、とにかくなるべく時間を稼げ!
●【No.075】●
勇者マイカたち『ブラックファントム』を乗せた馬車と勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』を乗せた馬車が、次の目的地 "バイオメドリグス" の国へ向かって走る。 まだまだ目的地までは時間がかかる。 道中のんびりしてるわけにもいかないけど、慌てて急いでも仕方ない。 こういう時は冷静になって事を進める必要がある。 その途中に何があろうとも…。
まず先に行くのが『ブラックファントム』の馬車で、次に後からついてくるのが『セックス・ハーレム・ナイトメア』の馬車よ。 私は御者台に座って、巧みに馬を操って前へ進める。 その二台の馬車がしばらくまっずく前へ進むと、前方の道の真ん中に何かある。
人影よ。 誰かが道の真ん中に立ってる。
「何かしら?」
その人影に私たちが乗る馬車が近づく。
「そこで止まりなさい!」
その人影が私たちに声をかけるけど、このまま止まらずに、馬車を進める。
ヒヒィーーーン!
どういう原理か知らないけど、あの人影の背後へ馬車を進めることができない。 何か透明な結界の壁みたいなモノが道を塞いでる。
「おーほほほー、だから言ったでしょ?
ここから先に進みたければ、この私を倒すしかないわよ!」
「……」
「おーほほほー、ここから先へは通さないわぁー!」
あの人影。 よく見ると、漆黒の長髪&漆黒のカラスの翼に、漆黒のビキニアーマーと漆黒のニーハイソックス・ブーツを履いて、漆黒のムチを持った女性が立ってる。 後で知ったけど、彼女の名前は『ミスカラスレディ』と言うそうね。 私たちの前に現れて道を塞ぐけど、これは明らかに時間稼ぎね。 可哀想にね。
「……」
仕方がないので、私一人で相手をする。
私が馬車を止めて御者台から降りて、そのミスカラスレディに聞く。
「それで…あなたを倒せば、この先の道も通れるのね?」
「その通りよ! でも残念ながらお前に私は倒せない! 私は凄く強いからよ!」
「……」
「お前の負けよ! そのままくたばれ!」
今のセリフが、私が聞いた彼女の最後の言葉である。
そのミスカラスレディが仁王立ちしながら強気な発言をして、すぐに漆黒のムチを素早く振り抜いて、私に向かって攻撃してくる。
ブゥーン、シュッ、トォン、ドサッ!
ムチが私に当たる瞬間に、私はこの世界から姿・存在を消して、素早く彼女の背後に回り込む。
【ストリンガー・デスロック】
私が彼女の背後から首筋を思いっきり素早く振り切って、手刀を繰り出す。 まるで首を切断するような衝撃で、手刀が彼女の首筋に当たり、彼女が悲鳴や断末魔をあげることなく、白目をむいて地面に前のめりに倒れ込んで気絶する。 この女、一体何しに現れた?
「……」
私にあっさり倒されて、うつ伏せの状態から動かない。 本当ならもっと時間稼ぎもできたはず。 なんだったらこの私を倒すぐらいの能力もあったはず。 だけど、もともと私は最強なのに加えて、今までの実戦での経験でさらに強くなり、もはや私と彼女との力量に大差があった。 残念だけど、これが事実。
ガッ、ブゥーン、ドサッ!
私は気絶するミスカラスレディを道の脇に放り投げて、御者台に座って巧みに馬を操って、そのまま何事もなく馬車を走らせる。
「何かありましたか?」
「いいえ、何もないわ」
「そうですか…」
馬車の後方からシャニルが私に何かあったか聞いてくるけど、私は返事を軽く受け流した。 実際に何かあったわけではなく、ただ邪魔があっただけ。 それだけのこと。
夜になると、馬車を道から平地・空地などに停めて、馬車の中で一晩明かす。 今夜はマトオが焚き火しながら見張りする。 他の者たちは馬車の中で寝袋・毛布に丸まって眠る。
翌朝、私はしばらく馬車を走らせる。
続けて、後ろからマトオたちの馬車もついてくる。
「ん?」
また道の真ん中に人影がある。
今度は上半身が褐色の肌の筋肉を極限まで鍛え上げた肉体美と黒いズボンを履いた…長身の謎の男が立ってる。 まるで見せつけるように変なポーズをする男の名前を『ミスターカラスポーン』と言うそうね。 後で聞いた話だけど、あのミスカラスレディの仲間だそうね。
「またかしら?」
そいつに私たちが乗る馬車が近づく。
「そこで止まれ!」
そいつが私たちに声をかけるけど、このまま止まらずに、馬車を進める。 さすがの私でも気持ち悪い奴だと思ったから―――
ヒヒィーーーン!
またどういう原理か知らないけど、あいつの背後へ馬車を進めることができない。 何か透明な結界の障壁みたいなモノで道を塞いでる。
「おい、止まれと言ったはずだ!
ここから先に進みたければ、この俺様を倒すことだ!」
「……」
「ここから先へは通さんぞぉー!」
あいつ…彼女の仲間なのに、明らかに彼女の尻拭いかしらね? 可哀想に私たちの前に現れて道を塞ぐけど、明らかにこれも時間稼ぎだわ。
「……」
仕方がないので、また私が一人で相手をする。
私が馬車を止めて御者台から降りて、そのミスターカラスポーンに聞く。
「それで…あなたも倒せば、この先の道も通れるのね?」
「ふざけるな! 貴様ごときがこの俺様に勝てるわけがないだろう! 俺様は貴様よりも強いからだ!」
「……」
「貴様の負けだ! このままくたばれ!」
今のセリフが、私が聞いた彼の最後の言葉になる。
そのミスタースカラポーンが変なポーズをしながら強気な発言をすると、すぐに地面を蹴って素早く私に近づく。
ダッ、シュッ、トォン、ドサッ!
速く走りながら私に向かって右拳を振り上げて殴りかかる。 だけど…次の瞬間、私はこの世界から姿・存在を消して、素早く彼の背後に回り込む。
【ストリンガー・デスロック】
先程と同様に、私が彼の背後から首筋を思いっきり素早く振り切って、手刀を繰り出す。 まるで首が切断されたような衝撃で、手刀が彼の首筋に当たり、彼が悲鳴や断末魔をあげることなく、白目をむいて地面に前のめりに倒れ込んで気絶する。 やっぱり、一体何しに現れたの?
「……」
私にあっさり倒されて、情けなくうつ伏せの状態で動かない。 本当ならここでも時間稼ぎをしたかったはず。 なんだったらこの私を倒すぐらいの実力もあったはず。 だけど…先程も言ったけど、元から私は最強なのに加えて、今までの実戦での経験からさらに強くなって、もはや私と彼との力量に大差がある。 残念ながら、これが真実。
ガッ、ブゥーン、ドサッ!
私は気絶するミスターカラスポーンを道の脇に放り投げて、また御者台に座って巧みに馬を操って、そのまま何事もなく馬車を走らせた。
「また何かありました?」
「いいえ、何もないわ」
「そうですか…」
馬車の後方からアロトリスが私に何かあったか聞いてきたけど、また返事を軽く受け流す。 実際に何かあったわけでもなく、ただ邪魔者がいただけ。 それだけのこと。
夜になると、馬車を道から平地・草原などに停めて、馬車の中で一晩明かす。 今夜は私が焚き火しながら見張りをする。 他の者たちは馬車の中で寝袋・毛布に丸まって眠る。
翌朝、私はまた馬車を走らせる。
続けて、後ろからマトオたちの馬車もついてくる。
「見えた。 アレね」
ここでようやく次の目的地 "バイオメドリグス" の国の出入口の大きな門が肉眼でも見えてきた。 それにしてもアイツらはアレで時間稼ぎができたのだろうか?




