74、追跡者・死の女神タナトス
●【No.074】●
ここは暗闇の世界。
その暗闇の世界の中に浮かぶ紫色の水晶玉。
その水晶玉には、勇者マイカたちを乗せた馬車と勇者マトオたちを乗せた馬車が、次の目的地 "バイオメドリグス" の国へ向けて出発する所を映し出している。 そこにわざわざ少年王とお姉様が護衛を伴って見送りに来ている。 そのまま馬車が二台、次の目的地 "バイオメドリグス" の国に向かって走る最中の道中を映し出しており、このままのペースだと、三日目の夜には "バイオメドリグス" の国に到着する予定だ。
「……」
その水晶玉を覗き込む謎の女性が暗闇の中を浮いている。
その隣には深紅の全身鎧兜を装備して、真紅のマントを身に付けて、深紅の大槍を持った騎士が浮いている。
さらにその後ろには、先ほど上位魔族トウと戦ったあの『聖女』カロテラが横になった状態で浮いている。 どうやら深く眠っているようだ。
確かに暗闇の空間では、普通は何も見えないはずなのに、どういう仕組みなのか知らないけど、ある特定の人物・物体は見えているようだ。
すると、そこに―――
「どうやら死の女神タナトスが、ここにも来そうですね?」
「アテナ…いかが致しましょうか?」
その謎の女性が紫色の水晶玉の隣にある赤色の水晶玉が激しく点滅しているのを見て言う。
「まだ彼女の相手は無理です。
ここは撤退しましょう。」
「はっ、承知しました。」
よく見ると、他にも橙色の水晶玉や黄色の水晶玉に、緑色の水晶玉や青色の水晶玉と、藍色の水晶玉の計七つの水晶玉が横一列に並べられて浮かんでいる。
「そろそろこの場所も放棄して、別の場所に向かう必要がありますね?」
「はっ、すぐに準備致します。」
今度は黄色の水晶玉も激しく点滅して、その点滅する水晶玉を見ながら、また謎の女性が言う。
謎の女性も深紅の騎士も慌てることなく、落ち着いて慎重に行動する。
全ての準備が終了して、最後に深紅の騎士が眠っているカロテラをお姫様抱っこする。
「よし、準備OKです。 行きますよ?」
「はっ!」
スゥーーーッ!
すると、まるで暗闇の空間に溶け込むようにして、謎の女性も深紅の騎士も『聖女』カロテラも七つの水晶玉も全て消えた。
少しして、今度は死の女神タナトスが暗闇の世界に現れた。
「逃げられてしまいましたか?」
そこで死の女神タナトスが周囲を見渡しても、もう誰もいない。 もっともここは暗闇の空間なので、本当は何も見えないはずなのに、さすが死の女神タナトスには普通に暗闇でも見えている。
「やはり…私の存在が感知できますか…?
些か侮っていましたか?」
しかし何故、あの謎の女性に死の女神タナトスの存在が感知・察知できたのか? それがあの謎の女性の能力なのか? それとあの謎の女性とは、一体何者なのか? それに死の女神タナトスには、あの謎の女性の素性・正体を知っているのか?
「あの聖女カロテラを後退させた英断は、なかなかのモノがありますよ。 それがあなたの能力なのですか? ―――アテナ」
!!?
―――アテナ?
まさか…アテナとは…?
あのカラスクイーンアテナのことか?
七色の水晶玉を操る女王カラスクイーンアテナ。
その七色の水晶玉とは、
「全ての者の行動を見る紫色の水晶玉。」
「あらゆる環境に対応できる藍色の水晶玉。」
「全ての者の感情を視る青色の水晶玉。」
「持ち主をあらゆる場所へ転移させる緑色の水晶玉。」
「侵入者を感知・察知する黄色の水晶玉。」
「全ての者の体温を視る橙色の水晶玉。」
「持ち主に危険を知らせる赤色の水晶玉。」
この世界広しといえど、七色の水晶玉を操れる者は、この女王カラスクイーンアテナをおいて、他にいない。
では…隣にいた深紅の騎士は、あのカラスナイトクリムゾンというヤツか?
でも…ミスカラスレディとミスターカラスポーンの二人は、ここにはいないようだ。
なるほど、そういうことか。
確かに、女王カラスクイーンアテナもカラスナイトクリムゾンも悪魔神ヴォグゲロルスの忠実なる僕。 それなら悪魔神ヴォグゲロルスの完全復活に関与していてもおかしくない。 では…あの『聖女』カロテラはどうだ? 彼女は自分の意思で悪魔神ヴォグゲロルスの完全復活に手を貸しているのか? それとも洗脳されているのか? それは誰にも解らない。 いずれにしても、このまま逃がすわけにはいかない。 必ず彼女たちを追跡する。
「ふふふ、今度こそ逃がしませんよ。
―――カラスクイーンアテナ」
ここで少し考え込み、おもむろに呟く。
「…この事は一応…大魔王たちにも報告した方がいいでしょう…」
スゥーーーッ!
(※彼女の言う大魔王たちとは、大魔王エリュドルスと大魔王イザベリュータと大魔王ゼンの三人のこと。 大魔王デスゴラグションは含まれていない)
すると、今度は死の女神タナトスもまるで暗闇の空間に溶け込むようにして、その姿を消していく。
この悪魔神ヴォグゲロルスの完全復活に関与する者たち。
今現在で判っている者は、
01.『聖女』カロテラ Lv.90 ランクA
02.神光聖者ミラドリルス Lv.88 ランクA
03.ミスカラスレディ Lv.88 ランクB
04.ミスターカラスポーン Lv.88 ランクB
05.カラスナイトクリムゾン Lv.90 ランクB
06.カラスクイーンアテナ Lv.99 ランクA
07.《ゴールデンデッドリバーカラスドラゴン》 Lv.550 ランクZ
08.『堕神坊ベルシェールトン』 Lv.500 ランクZ
09.《クリスタル.エルフニア.ノヴァドラゴン》 Lv.440 ランクS
10.《クリムゾン.エルフニア.ノヴァドラゴン》 Lv.440 ランクS
といった面々である。
まず『聖女』カロテラは大魔王ゼンの部下・上位魔族トウと対決させる。
次にカラスクイーンアテナたちは死の女神タナトスが追跡中。
また神光聖者ミラドリルスは勇者マイカたちがなんとか勝利・打倒している。
そして堕神坊ベルシェールトンたちは運命の女神ベルダルディアや悪魔神モドキ=ジ・デルスと協力者が追跡中。
最後に仮に万が一、悪魔神ヴォグゲロルスが完全復活した場合でも、大魔王イザベリュータや大魔王ゼンに、死の女神タナトスや運命の女神ベルダルディアたちが勇者マイカに協力しつつ、最終的に選ばれし勇者マイカが悪魔神ヴォグゲロルスに勝利して、打倒もしくは再度封印してもらう。 まさに総力戦。 全員が一丸となって、あの悪魔神相手に対抗・抵抗する。
絶対に悪魔神ヴォグゲロルスを完全復活させてはいけない。 悪魔神には全ての世界を一瞬にして消滅させるだけの力を持っているから。 勿論、地球すらも一瞬にして消滅させられるのだ。 この世に住む全ての者は悪魔神などに消されたくないはずだ。 だから、最後まで戦う。
絶対に悪魔神を現世に蘇らせてはならないのだ。
敵の敵は味方。
間接的に勇者と大魔王が協力するかもしれない。
それほど悪魔神復活を阻止したい両者。
そして明らかになってきた悪魔神復活を推進する者たち。
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