73、バイオメドリグス上空での戦闘
●【No.073】●
あの日の深夜のこと。
ここは秘密主義の国… "バイオメドリグス" の国内のはるか上空にて。
そこに槍を持ち青色の教会仕様の戦闘服 [教会戦闘衣鎖]を着用し、腰には剣を背中には弓矢を装備した武士風の女性『聖女』カロテラと、銀髪.褐色肌.巨乳の容姿の全裸の女性・上位魔族トウが空中戦闘をしていた。
引き続き聖女カロテラが巧みに素早く槍を操って上位魔族トウを刺し殺そうとする。 それをトウが巧みに素早く回避して後退する。
シュッシュッシュッ、サッサッサッ!
「おのれ、ちょこまかと逃げるわね」
「こいつ、相変わらず速いわね」
両者共に睨み合う。
この二人がまだこの国に居て戦闘中。
先程から何度もカロテラの鋭い突きの槍をトウが全てかわす。 トウも右手から攻撃魔法【火球】を放つが、それも防がれてしまう。 まだまだ二人ともに実力が拮抗していて互角の勝負をしている。
ボォウ、ザァッ!
「まずあなたを倒してから、その勇者マイカとやらを倒す必要があるわね」
「へぇ~、聖女が勇者を倒すねぇ~」
「何が言いたい?」
「ふっ、あんたに…あの勇者マイカを倒せるのかい?」
「なんだとっ!?」
「言っておくよ。 あの勇者マイカはあたしよりも強いよ。 あたしを倒せない奴が彼女に勝てるかねぇ~?」
「バカなぁ! この私が負けると言うのかぁ!
この聖女カロテラがぁ!」
「ふふふ、さぁねぇ~?」
「ふん、なら…あなたを殺してから、あの勇者も殺してやるわ!」
「ふっ、そうかい?」
この時、カロテラが怒りの表情を見せる。
「あはは、あんたの怒りの表情もそそるねぇ~」
「ほざけぇ! 殺す!」
「あはは、この上位魔族トウを殺す?
面白い冗談だね。 だが…それも無理だね。
その前にあんたは、このあたしに倒されるんだからねぇ。」
「ぬかせぇ! この邪魔族がぁ!」
「ふふふ、まだやるかい?」
再び聖女カロテラと上位魔族トウの戦闘が開始される。 槍を鋭く突いてトウを刺し殺そうとするカロテラと、槍を防いで彼女の隙をついて攻撃に移るトウ。 だが…まだまだ互角ゆえに決定打にならない。
シュッシュッシュッ、ザッザッザッ!
この後もカロテラが連続して槍を鋭く突いてトウを刺し殺そうとする。 けど、トウも巧みに素早く回避しながら、右手で攻撃魔法【火球】を放ち、カロテラに当てようとする。 けど、そのカロテラも巧みに素早く回避しながら攻撃する。 さっきからこれの繰り返しで、お互いの攻撃が全然相手に当たらない。 これではラチがあかない。
「ちっ、さすがは上位魔族。
意外にしぶとい…」
「ちっ、聖女のクセに何であんなに強いんだ?」
「ふん、私はただの聖女ではない。
あのお方に力を授けて貰ったからね。」
「……あのお方?」
ここでも双方が決め手を欠いて、また睨み合う。
その瞬間―――
そこにカロテラの頭に直接語りかける謎の声が聞こえた。
戻りなさい聖女。
一本どういうことですか?
今度はカロテラも頭に直接語りかける謎の声に受け答える。
今…勇者マイカがそちらに向かってきてます。
ならば、その勇者マイカとやらも、この私が片付けて参ります。
無駄です。 いかにあなたでも勇者マイカを倒せないでしょう。
何故です?
それは彼女があなたよりも強いからです。
そんなバカなぁ!
確かにあなたは強い。
しかし、勇者マイカは女神の加護を受けていて、段違いに強い。 あの神光聖者ミラドリルスさえも倒した女です。
えっ、あの神光聖者ミラドリルスを倒した…?
ですから、今すぐに戻りなさい聖女。
まだです! まだ上位魔族トウも倒していません!
駄目です。 今すぐに戻りなさい聖女。
一度だけ、チャンスを下さい!
見事に上位魔族トウも勇者マイカも倒してご覧に入れます!
………
お願いします! もう一度だけ、私にチャンスを下さい!
判りました。 でももし、危うくなったら強制的に戻します聖女。
はい、判りました。 見事に倒して見せます。
私がこの手で…!
………
危うき聖女カロテラよ。
これが最後のチャンスです。
はっ、今度こそ必ず!
………
そこでカロテラの頭に直接語りかける謎の声が消え、カロテラも現実に引き戻される。 この瞬間はまだカロテラの動きだけ止まっていた。
「スキアリ!」
「!!?」
まさしく、一瞬の油断だった。
戦闘中に脳内会話に集中しすぎたようだ。
もっとも戦闘中に脳内会話をする方が悪く、気づかないトウには関係ないこと。
ボォウ、サッ!
その隙を突いて、再度右手から攻撃魔法【火球】を放ち、カロテラに攻撃する。 頭の中で会話をしていたカロテラの反応が一瞬遅れてしまい、その【火球】をなんとか回避するも、無理な動きをして体勢を崩し浮力を失い、このまま地上へ落下する。
※攻撃魔法【火球】とは、小型の火の球のこと。 魔法ランクはC。 威力はそれほど高くはない。
「ちっ!」
「待て! 逃がさん!」
体勢を崩して浮力を失ったカロテラが地面へ落下していき、トウも彼女のあとを追うようにして落下する。
「今度こそ、とどめだ聖女!」
「!」
シャッキィーン!
そこでトウが落下するカロテラに追いつき、今度は左手から攻撃魔法【氷刀】を発動させて、その氷の刀で一気にカロテラを斬り殺そうとする。 さすがのカロテラもこれを回避・防御する時間がない。
※攻撃魔法【氷刀】とは、氷でできた刀のこと。 魔法ランクはC。 斬撃はそれほど高くはない。
「あっ…」
シュッ!
「何っ!?」
だが…あともう少しでカロテラの首を切断できると思ったのに、次の瞬間には彼女の姿が消えていた。
「ちっ、消えたか…」
トウが周囲を見渡しても彼女の姿がない。
どうやら聖女カロテラは攻撃が当たる瞬間、別の場所へ瞬間移動させられたようだ。
「いない…?
そうか、あの例の奴に戻されたか…?」
トウの言うあの例の奴とは、おそらくカロテラの言うあのお方のことなのだろう。 あともう少しで、彼女にとどめが刺せるところで、無理矢理引き戻された形となる。
「ちっ、逃がしたか…。
だが…まぁいい。 もしアイツが逃げたというなら。
それなら勇者マイカたちが来るまで待つとしよう。」
ヒュッ!
そう言ってトウはバイオメドリグスの国の上空から近くにある森へ飛び去った。




