68、反逆者たちの最期・末路
●【No.068】●
カシオスト卿だったオークは身体を動かせない。
遂に正体を現したオーク。 だがしかし、既に勇者マイカによって動きを封じられていた。 あの例の伝説の皇剣【八魔蛇の剣】の特殊能力によって敵の身体の動きを封じられる。 それがあのオークにかけられたのだ。
「な、なんだ…これは…?」
「ふふふ、これであんたの動きは完全に封印されたみたいね」
「な、なんだとっ!? これがっ!?」
「ふふふ、これであんたは味方を失った上に、あんたも身体が動けない。 これから一体どうするつもりなのかしら?」
「くっ…」
「さぁて、とどめは私が刺してあげようかしら? 私だったら楽に逝かせてあげるわよ♪」
「ま、待てぇ! 待ってくれぇ! お願いだから命だけは助けてくれぇぇ!」
「………」
「ふ、ふざけるなぁーーーっ!!」
ここに来て、なんと敵であるマイカに命乞いする情けないオーク。 余程、追い詰められたからなのか。 今まで部下だったはずの [黒兵]や忠誠を誓ったはずの貴族たちに、あっさりと裏切られてしまう。 またオークの左右には巨大なドラゴンがいて、それとオークの背後には巨大カマキリモンスターもいる。 さらに自分の目の前には、あの勇者マイカもいて、しかも自身は身体が動かない。 これこそ絶体絶命・四面楚歌である。
タッ、ヒュウ、ザァン、ドサッ、ズドォォォン!
なんとオークの背後にいた貴族の一人が青銅の剣を持って、後方からオークの首を素早く切断。 頭と胴体がバラバラになって同時に地面に叩きつけられた。
「これで終わりだぁーーっ!!
くたばれぇぇーーっ!!」
「ちくしょぉおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーっ!!?」
完全に不意をつかれたオークが最期の断末魔をあげて首を飛ばされながらうつ伏せに倒れる。
「………」
その様子をただ黙って見ていたマイカ。
結末は案外と呆気ない。
オークのとどめを刺したのはマイカではなく、かつて自分に忠誠を誓ったはずの貴族の一人だった。 完全にマイカの方に注意がいって、油断していたオークがまさか背後から首を切断されるとは、思ってもみなかった。 最期はやっぱり味方・部下に殺られたか?
これが反逆者の結末なのか?
「「「「………」」」」
これで遂に国王を裏切った貴族たちもカシオスト卿の私兵だった [黒兵]たちも全員がなす術なく、マイカの目の前で跪いて投降することになる。
「わ……我々はあなた方に降伏致します。
どうか寛大な処置をお願い致します」
「あら、そう。 もう終わりなのね?
残念だわ……まだまだ反逆者を殺せると思ったのに……ね?」
「申し訳ありませんでした。
どうか慈悲を持って降伏をお許し下さい」
「へぇ~、そうなのねぇ~」
もはや国王を裏切った貴族たちもカシオスト卿の私兵だった [黒兵]たちも戦闘・反逆の意思なしと見ている。 マイカ自身はこれ以上の無益な殺生は好まないので、あとは国王にお任せすることにした。 しかし、まだマイカには釈然としていない事がある。
(コイツら本当に降ったのか?)
いずれにしても、これでカシオスト卿だったオークは倒されたことになる。
国王とお姉様が大きな塔から降りてきて、投降した貴族や [黒兵]たちの前に立つ。 当然ながら、裏切った貴族や [黒兵]たちから全て武器を取り上げてる。 もう何もしてこないはずだ。 ちなみに投降した貴族や [黒兵]たちは土下座の体勢で頭を下げている。
「「「「………」」」」
「随分とやってくれたよね?
危うくボクも死にかけたよ」
「「「「………」」」」
「何か弁明があれば聞くけど?」
「「「「………」」」」
「何かないの?」
まだ子供とは思えない程の威圧感。 さすがは国王である。 反逆者たちは何も言い返せない。 また国王とお姉様を取り囲むようにして、マイカたち『ブラックファントム』の四人とマトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』の四人に、王護聖騎士や衛兵たちと巨大ドラゴン二匹・巨大カマキリモンスターが周囲をガッチリ防御して護衛する。 これでは誰も手出しできない。
しばらく沈黙が続くけど、やがて―――
「ふざけるなぁーーーっ!!
このクソガキィィーーーっ!!」
「「!?」」
「ちっ!」
「バカめ!」
タッ、ヒュッ、ザァン、ドササァッ、コトリ!
なんと先程、オークの首を切断した貴族が全て武器を取り上げて、もう武器は持っていないはずなのに、どこからかまた青銅の剣を取り出して、その剣で国王に襲いかかり斬りつけようとする。 だが当然、国王を護衛するマイカやマトオが即座に反応して、逆に襲ってきた貴族の首と胴体を二人で斬り裂く。 最期まで国王に反逆した貴族は首と上半身と下半身がバラバラになって同時に地面に叩きつけられた。
[マイカが首を、マトオが腰を斬り裂く]
「「「「ヒイイイィィィ―――」」」」
それを見た他の貴族や [黒兵]たちが驚愕・情けない悲鳴をあげる。
ここでカシオスト卿だったオークを倒した貴族もマイカとマトオの二人の勇者に倒された。
「まだキミたちに翻意があるのかな?」
「「「「………」」」」
もはや弁明も……命乞いすらできない状況になった。
ここに来て、お姉様であるヤナイ姫が珍しく声を荒らげる。
「この期に及んで、このような凶行に走ろうとは、もはや弁明の余地はありませんよ!」
「その通り、このまま済ませれば、またボクの身も危ないからね」
「「「「………」」」」
「やっぱり、コイツら心の底から王様に忠誠を誓ったワケではないのね」
「やっぱり、コイツらこのまま国を奪うつもりなのか?」
「「「「………」」」」
「王、こやつらに断罪を!」
「もう処刑するしかないね」
結局、最後まで投降・降伏は口からでまかせ。 心からの謝罪や再び王への忠誠を誓うことはしなかった反逆者共。 最後まで国の乗っ取りを諦めていなかった。 最初はカシオスト卿だけが国盗りをしていたのか、と思いきや、なんと他の貴族やカシオスト卿の私兵のハズの [黒兵]たちですら、カシオスト卿を出し抜き、国盗りをしていた。 つまり、本当に忠誠を誓ったワケではなく、都合よく利用しようとしていただけなのだ。 誰もが羨み、誰もが目指そうとする国王の座。 その国王がまだ子供であれば、王位を奪うことも容易いと思ったのか?
結果、このザマだけど。
いずれにしても、その後で裏切った貴族や [黒兵]たちは、反逆罪で処刑された。 巨大ドラゴンたちが吐いた《激烈火焔》に焼かれ灰となる。
これで反逆者は全滅した。




