67、カシオスト卿だったオーク
●【No.067】●
貴族伯爵のカシオスト卿が凶刃の前に倒れた。
そのカシオスト卿の胸部には伝説の皇剣【八魔蛇の剣】の刃が突き刺さってる。
カシオスト卿が仰向けで倒れて、刺された胸部に大量の出血をしている。
………………。
あれ、赤い血じゃない……?
なんと…青い血が流れてる……?
人間の血は…赤い……ハズ……?
つまり…アイツは人間ではない……?
あのカシオスト卿の右側には紫色のドラゴン・ムラサキが巨大化している。 カシオスト卿の左側には黒色のドラゴン・クロヒコも巨大化している。 カシオスト卿の背後には巨大カマキリモンスター【デスキラー・シャ】がいる。 カシオスト卿の左右と背後に巨大なドラゴンと巨大なモンスターが包囲している。
その青い血を見た [黒兵]や貴族たちがビクッとする。
「「「「!!?」」」」
「あ……青い血……?」
「そ……そんなバカなぁ……?」
「こ……コイツ……人間じゃあ…ないのか……?」
「が……ガハァ……」
なんと…カシオスト卿が青い血を口から吐いて、ムクリと上体を起こして、スクッと立ち上がった。 普通人間だったら完全に致命傷・出血多量で死ぬハズなのに、カシオスト卿はまるで何事もなかった様に起き上がったのだ。 でも苦痛で顔を歪めてる。
当然、それを見た[黒兵]や貴族たちもビックリする。
「「「「!!?」」」」
「く……たかが人間ごときが……このオークに傷をつけるとは……」
「「「……?」」」
「ゆ……勇者マイカめ……」
スタッ!
そこに私が上空からカシオスト卿の目の前でゆっくり静かに着地する。 ちなみに大きな塔の守備は勇者マトオやラグレテスたちに任せている。
「さぁー、どいたどいたぁー!
邪魔よアンタたち!」
「いっ、なんだなんだっ!?」
「うっ、なんだとっ!?」
「き……貴様は……まさか……?」
「グゥッ!?」
ヒュッ!
目の前にいた [黒兵]たちを両手でどかして、右手を前方に突き出す。 そこにカシオスト卿の胸部に突き刺さった伝説の皇剣【八魔蛇の剣】が私の手元に戻る。 すると伝説の皇剣【八魔蛇の剣】を胸部から引き抜かれたカシオスト卿が突然苦しみだす。 青い血の傷口がある胸部を両手で押さえて身体を左右に振る。
「グッ、グガガガガガガガガガガァァァァァーーーーッ!!!」
「「「「!!?」」」」
「………」
このカシオスト卿の異様な苦痛・悲鳴を目撃した [黒兵]や貴族たちには、ただただ言葉を失うほどの強烈さがある。 私は冷静に沈黙して、その一部始終を見届ける。 まさに以前見たことある光景ね。
………………。
やがてカシオスト卿からオークへと変貌を遂げた。 その時に胸部の傷口も消えて青い血もなくなっている。 また大きな塔の上階にある窓越しから、その様子を見ていた国王とお姉様も思わず絶句・驚愕する。 勿論、カシオスト卿の近くにいた [黒兵]や貴族たちも絶句・驚愕する。
「「「「………」」」」
あまりの絶句ぶりに、その場がシィ~~~ンとなる。
そこで私とオークが睨み合う。
「ようやく現れたわね」
「おのれ、俺様がオークだと…いつ気づいた?」
「あなたのお仲間を『邪惚教都』で見かけたわ。 あなたと同じように人間の姿になっても、おかしな言動をしてたから、すぐにわかったわ。」
「やっぱり、あの『邪惚教都』の盗賊共は、貴様たちが殺ったのか?」
「ええ、そうよ」
「チクショウゥーーッ! よくも余計な事をしてくれたなっ!」
「心配しなくてもいいわ。 あなたも始末してあげる♪ 地獄で会わせてあげるわ★」
「な、なんだとぉーーーっ!?」
「ふふふ、あのオークように……ね♪」
「おのれ、お前たち! 何をしている! さっさとこの勇者マイカを殺せぇ!」
「「「「………」」」」
「おい、どうしたっ!? さっさとあの女を殺せぇーーーっ!!」
ここからカシオスト卿だったオークが [黒兵]に命令するけど、肝心の [黒兵]はなんら動きを見せない。 また無口のまま、私の方ではなく、カシオスト卿だったオークの方を睨みつける。
「我々はモンスターの命令に従う必要はない」
「な、なんだとぉーーーっ!?」
「あらあら、やっぱりこうなったわね。 仮にも人間がモンスターなどの命令を聞くわけないわよね?」
「くっ!」
遂にカシオスト卿だったオークは自身の私兵だった [黒兵]からも自分に忠誠を誓ったハズの貴族からも見捨てられることになる。 まぁ…当然の事よね★
「最後に質問があるけど、ホンモノはどうしたの?」
「……ホンモノ……?」
「そう、ホンモノのカシオスト卿よ」
「………」
「……どうしたの?」
「俺様がホンモノのカシオスト卿だ!」
「「「「えっ!!?」」」」
「……えっ……」
「殺した貴族の皮を裂き、別の皮と繋ぎ合わせて作った顔にカシオストと言う名前をつけた。 それを上から被った。 爵位は殺した貴族から奪い取った。 この王国では貴族の管理・監視が徹底されておらず、殺した貴族の死体も家も爵位もなくなったのに、ロクに捜索・調査もしなかった。 だから、この王国を選んだんだ。 この王国を頂く為にな」
「「「「………」」」」
「そ……そんなバカなぁ……?」
「こ……こんなバケモノなんぞに……?」
「なるほど、そういうことね」
「味方はいなくなったが、貴様ごとき倒すのに、俺様一人だけで充分だ!」
「ふふふ、そうかしら?」
「な、なんだとぉーーーっ!?」
カシオスト卿だったオークが動こうとするけど、まるで紫色の蛇が巻き付いたように、全身が思うように自由に動けない。 どうやら伝説の皇剣【八魔蛇の剣】の特殊能力がオークにも効いたようね。 そのオークがなんとかもがくけど、身体が完全に固定されてる。
「な、何っ!!?」
「あらあら、味方もいなくなり、身体の自由も奪われた。 四方をドラゴンとカマキリに囲まれて、あなたもおしまいのようね?」
「………」
「さぁ、どうするつもりかしら?」
「チクショウゥーーーッ!!」
ここで遂にカシオスト卿だったオークの断末魔を聞くことになる。
貴族伯爵カシオスト卿の逆賊・反逆者→オークの孤立・国盗りへ
「ビクッ」・・・少し驚く。
「ビックリ」・・・かなりの驚きぶり。
「驚愕する」・・・衝撃・激しい驚きぶり。
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