64、王様との謁見C
●【No.064】●
勇者マイカたち『ブラックファントム』と、勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』の混成チームは馬車で移動する。 以前は徒歩での移動だったが、今は馬車を入手した勇者マイカたちが移動手段を徒歩→馬車へグレードアップした。 これなら楽できる上に速く移動できる。 なおかつアリスノヴァイン王国の王都・城下町 "プリデミア" の王宮まで、一直線に向かう。 一直線とは言っても、抜け道を選んで行ったり、近道を選んで行ったり、なるべくモンスターが出現しない道を選んで行ってる。 ミドリの案内による最短ルートで、王都・城下町 "プリデミア" へ向かう。
勇者マイカたちがいた草原→アリスノヴァイン王国の王都・城下町 "プリデミア" まで、徒歩で約4~5日・馬車で約2~3日・馬車の最短ルートで約1日半の距離。(※最短ルートとは、案内スライム・ミドリがいないと通ることができないとされるルートである)
やがて…王都・城下町 "プリデミア" が肉眼で見えてきた。 草原から出発して、約2日と半日。 意外に早く着いたのかしら? それと城下町に入る為の大きな門は、相変わらず閉じていて門番もいない?
だけど、その大きな門の右側―――門に向かってる私たちから見て右側という意味ね。 その右側に大きな塔がいつの間にか建てられてる? そんな大きな塔の目の前には、なんと十三歳の黒髪の可愛い男の子が黄金の豪華な王族衣装を着ている童顔の少年王…国王・アリスノヴァイン六世と、少年王・アリスノヴァイン六世の姉で白銀の豪華な王族ドレスを着ている絶世の美女のヤナイ姫が立ってる? わざわざ立って待ってくれたの? その二人の背後には護衛で、30人ぐらいの王護聖騎士が立ってる。 またその周囲を守るようにして、たくさんの衛兵が立ってる。
以前、王都に来た時には、あんな大きな塔はなかったはず。 私たちがいない間に建てられた塔なのかしら? しかも、その塔の前に何故、王様とお姉様が立ってるのかしら?
―――何かあったのかしら?
私たちの馬車が大きな塔の前で停まる。 邪魔にならないように所定の場所に停めておく。 その後で私たちが、すぐに王様のもとへ駆けつけて話しかける。
「やぁ、お姉ちゃんたち」
「お待ちしておりました。 マイカさん」
「王様! 何故、ここに?」
「王様が何故、ここに?」
「うん、ちょっと色々あってね…」
「えっ!?」
「…っ!!?」
「立ち話もなんだから塔の中に入ろうか…」
「……?」
「はい…判りました…」
正直いって、全く意味が解らないわ。 これは一体どういうことなのか? そこで王様とお姉様が大きな塔の扉から中に入り、続けて私たちも大きな塔の扉から中に入る。
大きな塔の中は意外にも広い。 奥にある玉座モドキに王様とお姉様が並んで座る。 その玉座モドキの左右横にも椅子がたくさん並んでいて、そこに私たち全員が座って王様・お姉様の方を向く。 また王様・お姉様や私たちの背後に護衛の王護聖騎士が立ってる。 それと衛兵が大きな塔の周囲を警戒する。 この大きな塔は急いで建てられたみたいで、外見も内装も所々が結構雑ね。 まるで急場凌ぎで造らせた塔という感じね。
そこで先程の質問する。
「王様。 何故、ここに? 前来た時には、こんな塔ありませんでしたよね?」
「うん、そうだね。
急いで造らせたからね。」
「「「……?」」」
なんとも歯切れがよくないわね。 歯に何か引っ掛かった感じね。 やっぱり、私たちがいない間に…何かあったのかしら?
そこで今度はお姉様のヤナイ姫が話す。
「この塔は王を守る為に造らせた塔なのです。」
「こんな塔が……?」
「王を守る為に……?」
「はい、あなた方が『邪惚教都』で調査してる間に…恐ろしい事が起こりました。」
「えっ、恐ろしい事?」
「はい、とても恐ろしい事です。」
「「「……?」」」
「とても恐ろしい事とは、一体何でしょう?」
「その前に、マイカさんたちの『邪惚教都』での調査結果はどうでしたか?」
「はい、判りました。
では報告します。」
そこで私たちは『邪惚教都』で起きた恐怖の出来事を王様・お姉様に説明・報告した。 地下階段のこと・地下通路のこと・巨大カマキリモンスター【デスキラー・シャ】のこと・二人の『聖女』のこと・神光聖者ミラドリルスのことまで、できるだけ詳細に説明・報告した。 それを聞いた王様もお姉様も驚愕・絶句した。
「そ、そんなことがありましたか……。
も、もしかしたら……そちらの方がとんでもない経験をしてるのでは……?」
「やっぱり凄いね。 お姉ちゃんたち……。 普通なら、もうとっくに死んでるよ。 並みの人間なら、もうとっくに……」
「はい、なんとか生き延びました。
しかし、まだまだ謎を解明できた訳ではありませんけど…」
「その後で『邪惚教都』へは行かなかったのですか?」
「はい、その前に王様に報告を…と思って戻ってきたところです。」
「さすがだね。 そういうところを見習わないとね。」
「はい、さすがはマイカさんです。 手際がよく退くべき時には退き、状況を見極めて行動する判断力の良さは見習うべきところでしょう。 お陰で私たちも難を逃れることができました。」
「えっ!?」
「「「……?」」」
「それで話を戻しますけど、何故、王様とお姉様がこんな所に……?」
「実は………王が襲われそうになりました……」
「「えっ!?」」
「「「ッ!!?」」」
これは今日一番で驚愕・絶句した。
「お………王様が襲われた………?」
「いや、違うよマイカ。
襲われそうになった…だよ」
「あぁ…なるほどね」
「それは一体どういうことなのでしょうか……?」
「はい、実は私を魔族に誘拐させた犯人がようやく特定できたのです。」
「誘拐を手引きしたヤツ?」
「えっ、ヤナイ姫の誘拐に…協力した犯人ってことですか?」
「はい、私が迂闊でした。 その魔族と協力して、私を魔族に誘拐させて、その隙をついて、まだ幼い王を襲わせるなど、鬼畜にも劣る所業です。」
「な、なんとぉ!?」
「そ、そんなことがぁ!?」
「はい、ですけど……あなた方のお陰で難を逃れることができました。 本当にありがとうございます。」
「「えっ!?」」
「「「……?」」」
「あの……カシオストが……」
王様が悔しさを滲ませる。
ヤナイ姫が私たちのお陰―――って言ってたけど、何の事やら、皆目見当もつかないわね。 それで王様・お姉様から、その詳細を聞いてみる。 上位魔族にヤナイ姫を誘拐させた協力者は、なんと貴族伯爵のカシオスト卿。 ヤナイ姫が慎重に調査した結果、カシオスト卿が犯人に浮上した。 そこで玉座の間にて、王様とヤナイ姫がカシオスト卿に事情を聞いてるうちに、突如として漆黒の鎧を着た見たこともない兵士が玉座の間に乱入。 王様たちを守る衛兵・王護聖騎士と、王様を襲う謎の黒兵との乱戦の混乱に紛れて、王様とヤナイ姫が玉座の間から逃げ出すことに成功。 そのまま一気に王都・城下町を抜け出したらしい。 実は私がかねてから王様とヤナイ姫を守る衛兵・王護聖騎士の数を増やす進言をしてたのよ。 今のままだと、あまりに少なすぎるからね。 それが功を奏したようね。 その後で王様がここに大きな塔を造らせて、ここで謎の黒兵が来ないように見張り籠城してたみたい。
今、玉座にいるべき王様とヤナイ姫が外へ追いやられ、上位魔族と協力して、ヤナイ姫を誘拐させて、幼き王を襲わせようとした犯人の貴族伯爵カシオスト卿が、何食わぬ顔で玉座に座る状況らしい。
◎『ブラックファントム』
勇者マイカ :爵位→男爵
勇者.冒険者ランクD
戦士ラグレテス:爵位→男爵
戦士.冒険者ランクD
神官アロトリス:爵位→男爵
神官.冒険者ランクD
大魔女シャニル:爵位→男爵
魔女.冒険者ランクD
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