60、二体の鏡の鎧の騎士の異変
●【No.060】●
ここ最終の地・突き当たりにある広く何もない空間に、勇者マイカ・勇者マトオ・戦士ラグレテス・戦士ハーリルの四人が立っている。 今回はマトオ・ラグレテス・ハーリルの三人だけで、あの《ウォークゾンビ》を倒すことに成功して、無事に【反射鏡の剣】を入手した。 ちなみに【反射鏡の剣】は勇者・戦士が装備できる剣だけど、この後にまた使用すると思うので、とりあえずマトオが所持するアイテム袋の中に入れる。
そこで私たち四人が話し合う。
「ようやく全部揃ったわね」
「はい、これで反射鏡の剣・盾・鎧・兜の四つが手に入りました。」
「それじゃあ、例の場所へ」
「またあそこに戻るの?」
「ええ、そうね。
またあそこまで戻って、アレを完成させるわよ。」
「はい、判りました。 マイカさん」
「はい、了解です」
「ええ、わかったわ」
そこで私たち四人が踵を返して振り向いて、このまま元来た通路を戻る。
やがて…例の場所・あの広く何もない空間に戻った。 正確に言うと広く何もない空間の中央には、鏡の鎧の騎士 (剣・盾・鎧・兜) と鏡の鎧の騎士 (盾・鎧) が向き合う形で立っているだけ。 そこに私たち四人が、この鏡の鎧の騎士のある場所まで歩いて近づく。
「アレね」
「はい、アレです」
マトオが所持するアイテム袋から【反射鏡の兜】と【反射鏡の剣】を取り出し、未完成の鏡の鎧の騎士の方の頭部に【反射鏡の兜】を被せて【反射鏡の鎧】の右手に【反射鏡の剣】を持たせる。
私たちが入手した【反射鏡の鎧】・【反射鏡の盾】・【反射鏡の兜】・【反射鏡の剣】の四つからなる鏡の鎧の騎士が完成して、ふたつの完成された鏡の鎧の騎士が向き合う形になる。 所詮は全く動かないただの置物。
これで一体どうなるのか?
すると突如として床が少し揺れだし、二体の鏡の鎧の騎士がグラグラ揺れる。 地震でいえば、震度3くらいかな? そんな感じの揺れで、この場にいる私たち四人もグラグラ揺れる。 この二体の鏡の鎧の騎士がグラグラ揺れながらどんどん接近する。 (※[地-1])
ゴゴゴゴゴ―――
「…?」
「な、何ぃっ!?」
「床が揺れてる?」
「じ、地震か…?」
「こ、これは一体どうなってるの?」
「ちょっと、これ…何事なの?
床が揺れてない?」
私たち四人がこの床の揺れに対応する為、それぞれが壁にもたれ掛かったり、床にへばりついたり、なんとか立ったまま耐えたりしながら、あの二体の鏡の鎧の騎士から少し離れる。
次に二体の鏡の鎧の騎士が突如として光りだし、その眩い輝きで私たちの目が潰れそうになる。 また少しずつだけど二体の鏡の鎧の騎士が接近する。 (※[光-2])
ピッカァァーーーッ!
かなり強烈な光ね。
「…?」
「うわっ、眩しいっ!?」
「な、なんだとぉ!?」
「この光は―――」
「なんで光るのよっ!?」
「なんだ…あの鎧はっ!?」
咄嗟に私たちが手や腕などで目を覆う。
私たち四人があの強烈な光から逃れる為、その場から後ろに下がって、また二体の鏡の鎧の騎士から少し離れる。
今度は二体の鏡の鎧の騎士の背後から突如として突風が現れ、その突風がそれぞれ二体の鏡の鎧の騎士の背中部分に激突。 その突風に背中を押される形で、さらに二体の鏡の鎧の騎士が接近する。 (※[風-3])
ブアアアァァァ―――
かなりの突風に、さすがの私たちでも驚く。
「くっ、風だとっ!?」
「こ、今度は何が起こるのっ!?」
「この突風は一体どこからっ!?」
「一体何なのよっ!?
ここはぁっ!?」
「……」
私たち四人がこの突風に堪らず、その場からさらに後退して、あの二体の鏡の鎧の騎士から少し離れる。
その間も二体の鏡の鎧の騎士がどんどんと接近して、私たち四人は二体の鏡の鎧の騎士からどんどん離れる。
なんで…この広く何もない空間の床がイキナリ揺れだし、それと二体の鏡の鎧の騎士がイキナリ光りだし、それに二体の鏡の鎧の騎士の背後からイキナリ突風が出たり、私たちにはよく解らないけど、これって…あまりいい感じがしないわね。
イヤな予感がするわ。
この地の力・光の力・風の力で、二体の鏡の鎧の騎士がどんどん近づき、一方で私たちが二体の鏡の鎧の騎士からどんどん離れる。 私たち四人がある程度、二体の鏡の鎧の騎士から離れると、遂に二体の鏡の鎧の騎士の【反射鏡の鎧】の腹部が接触する。 そこから二体の鏡の鎧の騎士に "透明の球体結界" が張られていき、もう近寄れない。
「これって…何なのっ!?」
「い、一体何が起こるって…いうのよぉ!?」
「うわっ、ちょっとぉ!?」
「くそっ、何かがヤバイ!」
「……」
その広く何もない空間の床の揺れが凄く震度3→震度4になり、または二体の鏡の鎧の騎士から発する光も凄くなり、左右横から来る突風も二体の鏡の鎧の騎士を包むように凄くなる。 それと "透明の球体結界" を張ってる二体の鏡の鎧の騎士がどんどん合体していき、そのまま宙に浮かぶ。
「来るわよ」
「「えっ!!?」」
「来るって…」
「もしかしたら、この地下通路でのラスボス級かもしれないわ」
「「えっ!!?」」
「それって…つまりは…」
この現象、かなり大がかりすぎるわ。 明らかにラスボス出現の予感がしてならないわ。
その二体の鏡の鎧の騎士が、遂に完全に合体する。
私たち四人の目の前に、黄金の長髪・橙色の瞳・薄紫色の口紅に、黄金の剣・盾・鎧・兜を装備した謎の女性が、"透明の球体結界" を張ったまま宙に浮いている。
さらに先程まで地下の広く何もない空間にいた筈なのに、いつの間にか今は紫色の草・紫色の木や葉・紫色の空などと、全く見覚えのない異常な草原にいる。
しかも私たち四人の他にも、地上にいた筈のアロトリスやシャニルたち四人と、紫色の巨大龍・ムラサキや【デスキラー・シャ】までが、いつの間にかこの地に来ていて、私たち全員が合流する。
当然、地下にいた私たち四人だけでなく、地上にいた筈のアロトリスやシャニルたちも驚愕する。
「「えぇっ!!?」」
「「なんでぇ!!?」」
「こ、これは……っ!!?」
「ウソでしょぉ!!?」
「これって…まさかぁ!!?」
「どうやら私の予想通りのようね」
『……』
そこに私たちの目の前にいる黄金の剣・盾・鎧・兜を装備して、黄金の長髪・橙色の瞳・薄紫色の口紅をした謎の女性が、私たちに話しかける。
「初めまして、私の名前は神光聖者ミラドリルスと言います。 どうぞヨロシク」
何ですって、神光聖者ミラドリルスって―――『聖女』じゃないのぉーーーっ!!?
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