50、私だけ知らないわ
●【No.050】●
勇者マイカたち『ブラックファントム』と勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』の面々は、王都 "プリデミア" からやって来た『邪惚教都』の調査派遣部隊を伴って、再度『邪惚教都』まで向かった。
その道中で、ザコモンスターを主に勇者マイカたち一行と勇者マトオたち一行の面々が倒しつつ、すぐに『邪惚教都』の地に到着した。
「…っ!?」
「こ……これは……?」
「……一体どういうことだ……?」
到着するなり、すっかり荒れ果てた『邪惚教都』の地を見て、かなりの動揺と驚愕を見せる王護聖騎士の三人。
どうやら、まだ『邪惚教都』が続いているモノだと思ったようだ。 未だに何かおかしな儀式をしており、多くの人間を生け贄にしているモノだと思っていたけど、実際には以前の面影がなく、荒れ果てていて誰もいない。 建物らしきモノは倒壊しており、瓦礫が散乱しているだけ。 あとは岩石や大木が転がってるだけ。 完全なる廃墟―――否、遺跡化している。
ここで王護聖騎士の三人が周囲を見渡しながら、まだ何か残ってないか、歩兵団に周囲の捜索を指示した。
私が王護聖騎士に話しかけた。
「ここで合ってるのよね?」
「はい、ここです。 ここが『邪惚教都』で間違いありません。
しかし、これは一体……?」
「一体何が起きたのか?」
「ねぇねぇ、ここって、何の儀式をしていた所なの?」
「はい、ここでは、その昔 "悪魔神召喚" の儀式を行っていた、と文献には書いてありました。」
「………」
「あ、悪魔神っ!!?」
「あ、悪魔神だってぇ!!?」
「はい、その昔……この地にて、"悪魔神ヴォグゲロルス" を復活させて召喚させる儀式を行っており、それにより多くの人間を生け贄に捧げたと、文献に書いてありました。」
「あ、悪魔神ヴォグゲロルス……?」
「やはり、いたのか?」
「続けて」
ここで出てきた私が打倒するべき悪魔神の名前ね。
「はい、その "悪魔神召喚" には、たくさんの人間の死体を焼いて、その黒煙から悪魔神ヴォグゲロルスをこの世界へ呼ぼうとしたらしいですけど、一度も成功しなかったと言われています。」
「……?」
「えっ、一度も成功しなかった?」
「なんで?」
「当時、『聖女』と呼ばれた少女が主体となって、その悪魔神ヴォグゲロルスの召喚儀式を行ったそうですけど、その儀式を邪魔したのが、なんと大魔王だったそうです。」
「……?」
「えっ?」
「はぁ?」
「文献では、この地の悪魔神ヴォグゲロルス召喚儀式を懸けて、"悪魔神ヴォグゲロルス召喚儀式を成功させたい『聖女』が率いた軍勢" と "悪魔神ヴォグゲロルス召喚儀式を阻止したい大魔王が率いた軍勢" が争ったとされており、その争いの飛び火で、近隣の街でもあるアリステレストの町にも被害が出たとされています。」
「………」
「普通、逆じゃない?
大魔王が悪魔神召喚儀式を成功させて、『聖女』が悪魔神召喚儀式を阻止するなら、まだ判るけど―――」
「私もそう思う。 明らかに逆よ」
「一体どういうことなのでしょうか? マトオ」
「さぁ?」
「続けて」
あのアリステレストの町の被害は、その頃からあったのね。
「はい、今から約300年ほど前に起こったとされる【悪魔神ヴォグゲロルス召喚儀式戦争】では、あの『聖女』が狡猾で巧みな戦術を使用したそうです。 大魔王が率いる上位魔族によって、"悪魔神信奉者の人間" を殺させて、その死体を焼いていき、その黒煙から悪魔神ヴォグゲロルスを呼びだそうとした、と文献には書いてありました。」
「………」
「―――ウソ」
「あの『聖女』が……?」
「なんで成功しなかったの?」
「残念ながら、なんで最後まで成功しなかったのか、文献には書いてありませんでした。 文献自体も途中までしか書いていないものですから、実際に最後まで成功したか失敗したか、よく解らないのです。」
「なるほど、でも成功しなかった、ということは実証されてるわ。 もし成功してたら、もう今頃は悪魔神ヴォグゲロルスによって、この世界は滅亡・消滅してるでしょうね。」
「「「―――あっ」」」
「な、なるほど、確かにそうか」
「「「………」」」
「それで……?」
もし仮にこの世界が滅亡・消滅していたら、私もこの世界に転生されることもなかったわね。
「残念ながら、その後の記述はありませんでした。 なにしろ、かなり古い昔の文献ですから、最後の方が何枚か破けていて、よく解らないのです。」
「ふ~ん、そうなのね。 ところで『聖女』と大魔王の名前とかは、わかってるの?」
「はい、それは書いてありました。 たしか『聖女』の名前はミラドリルスと言い、大魔王はイザベリュータと言います。」
「へぇ~、そう」
「「「えっ!!?」」」
「あぁっ!!?」
「それって……っ!!?」
「うぅっ!!?」
「ウソッ!!?」
「……?」
私にはイマイチ……ピンとこなかったけど、
大魔王イザベリュータの名前には、シャニル・アロトリス・ラグレテスの三人が反応して驚愕しており、
聖女ミラドリルスの名前には、マトオ・ハーリル・ルシティーク・エミリアスの四人が反応して驚愕していた。
「あの…大魔王イザベリュータ……ですか?
まさか彼女が……悪魔神ヴォグゲロルスの召喚儀式を邪魔してましたか」
「まさか、あの四大魔王ですか?」
「ええ、そうね。
まさか……こんなところで、その名を聞くとは、ね」
「マトオ……ミラドリルスって、もしかして……?」
「まさか、あのミラドリルスのことですか?」
「ああ、そうだ。 間違いない。
おそらく……あのミラドリルスのことだ。」
「ウソッ、じゃあアイツ……300年も前からいたのか……?」
「ああ、もしかしたら、な」
「………」
なにやら、みんな色々と知ってるみたいね。
私には悪魔神ヴォグゲロルスのことはわかるけど、大魔王イザベリュータと聖女ミラドリルスのことは、全く知らないわ。 その事については、また後で詳しく聞くとして、その前に―――
「……ん? なんだ?」
「どうした? 何かあったのか?」
この廃墟の地を捜索していた歩兵団の何人かが、何かを発見したらしく、凄く騒いでいるわ。
私もミドリから色々と情報を聞いているけど、さすがにみんなも色々と知っているわね♪ やるわね♪




