46、初めてのオーク
●【No.046】●
ようやくこの『邪惚教都』の地で勇者マイカたち『ブラックファントム』(パーティー名) と勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』(パーティー名) が完全に合流した。 馬車を所定の場所に停止させて、全員が馬車から降りて、辺りを見渡す。 その周囲には建物の瓦礫や岩石や大木などが無造作に転がっており、それに人間どころか、魔物も魔族も『聖女』も誰もいない。 でも、普通に動物 (ウサギやシカやリスなど) や鳥とかはちゃんといる。
それと勇者マイカたちの目の前には、あの『05522』の立て札・看板が置いてある。 ※(立て掛けてある訳ではなく、地面の上に無造作に置いてあるだけ)
現在は完全に盗賊の隠れ蓑・縄張りと化している。
まず再会した私と勇者マトオが話し合った。
「ようやく追いついたわね」
「はい、どうやらマイカさんたちも馬車を頂いたようですね。 これで馬車での旅も出来ると思います。」
「ええ、そのようね。
でも、これは一体……?」
「………」
次に私は周囲を見回した。
「これは『聖女』どころか、人っ子一人いないわね」
「はい、そうですね。
見た感じ、誰もいないみたいですね。」
「これではいくら『聖女』といえども、生活するのは容易ではないでしょうね。 本当に誰も見当たらないですよね?」
「ということは拠点を変えて移動した?」
「それはまだ解りませんけど」
「………」
私たちがなおも周囲を見回していると―――
「くそっ、貴様たちぃ! このままで済むと思うなよっ!? 親分が黙っていないぞっ!?」
「「……!?」」
「「んっ!?」」
「………」
そこに先程捕まえてロープで縛られた盗賊のリーダー格の男が、動けない身体で私たちの方に向かって喚き散らしている。
「親分……?」
「なんだ? お前が親分じゃないのか?」
「それで、その親分とやらは何処に居るのかしら?」
「な、なにぃっ!?」
「あら、いるんでしょ? その親分ってヤツ……?」
「くそっ、何を言ってやがるんだぁ貴様たちはぁ!? 親分は凄く強いんだぞっ!? 貴様たちなんかすぐに蹴散らしてくれるぞっ!! 貴様たちビビって逃げ出すんじゃないぞっ!! この野郎ぉっ!!」
「なんだとっ!? こいつ、言いたいこと言いやがってっ!!」
「だ・か・ら、そいつは一体何処に居るのよぉ!?」
「………」
この盗賊のリーダー格の男……単なる負け惜しみなのかしら?
「そ、それは―――ん?
く……くくく……いひひひ……あはははっ……ひゃあはははぁ……」
なんと突然、盗賊のリーダー格の男が変な笑い方をし始めた。
「えっ!?」
「何こいつ……?」
「な、なんだ?」
「あらら、遂に頭がおかしくなったのかしら?」
「………」
どうやら始まったようね。
やっぱりミドリの情報に間違いないようね。
こいつが親分―――
「ぐぎゃああああああああああぁぁぁぁぁ―――」
ここで盗賊のリーダー格の男が発狂し始めた。
なんと突然、その盗賊のリーダー格の男の身体が、急に大きくなり肌の色が焦げ茶色に変色して、ロープや着ている衣服も全部破壊して、(全裸の状態で) 瞳がなくなり目の色も黄色く変色して腕も足も大きく太くなり、巨大な魔物・『オーク』へ変貌を遂げた。
「ウギァアアアアアアアァァァァァーーーーッ!!!」
オークが吠える。
「な、なにっ!?」
「ば、バケモノッ!?」
「こ、コイツッ!?」
「まさか、コイツがぁ!?」
「………」
いきなりのオークの出現にあわてふためくみんな。 だけど私だけが冷静に伝説の皇剣【八魔蛇の剣】を取り出して、素早くオークへ飛びかかり、剣で首を斬り裂いて切断する。
「ふっ、ミドリの報告通りよ」
タッ、ザァン!
「ウガアッ!!?」
驚愕したオークだけど、その驚いた顔は、もう既に地面に転がってる岩石へ落下して、頭と岩が激突して、鈍く気味の悪い音を立ててた。
グチャァッ、ドサッ!
それと同時にオークの巨体も後方へ倒れていき、背中が地面に転がってる岩石と激突して、背骨が折れる音が聞こえた。 意外に脆い身体なのかしら?
ボキィッ!
まさに一瞬の出来事だった。
あらかじめ私はミドリからコイツが、あのオークであることを知っていた。 ミドリが入手した情報は、パートナーでもある私にも共有されるのよ。
なんにしても一瞬で、あのオークを倒すあたり、私もだいぶ強くなったわね。 まぁもとから強いのにプラスして、あの塔での戦闘で相当経験値が稼げてたみたいね。 またレベルが上がったのかしらね? また後でミドリに確認しておかないとね。
「マイカさん、さすがです」
「スゴい、マイカさん」
「速いです、マイカさん」
「マイカさん、アイツがオークだと判っていたのですか?」
「ええ、そうよ。
さっきのアイツが言う親分とは、アイツのもうひとつの姿・正体でもあった、あのオークの事よ。 だからコイツは盗賊でもリーダー格になってたのよ。」
「二重人格……?」
「あるいは人間の姿に変化できるオーク……?」
「でもオークに、そんな能力が……?」
「それにしてもよく判りましたね?
マイカさん」
「ミドリのお陰よ。
ミドリの情報収集能力はパートナーでもある私にも共有できるのよ」
「あっ、もしかしてあの時ですか?」
「そう、コイツの仲間の盗賊の男を木に縛って、ついでに盗賊に関する情報も頂いた訳。 まぁ『聖女』については解らなかったけど、コイツが親分のオークだって事は、もう事前に掌握済みよ」
「だから、あんな素早く対応が出来たのですか?」
「さすがに凄いです!
マイカさん」
「ええ、ミドリのお陰ね。
ミドリの情報がなかったら、さすがの私でもあのいきなりのオークは少し危なかったかも?」
「エッヘン!」
緑色のスライム・ミドリが胸を張って、自慢げな顔をした。 最もスライムに胸があるのか知らないけど。
「それよりもこれからどうするの? 見ての通り『聖女』どころか誰もいないわよ?」
「「「………」」」
「そ、そうですね……」
困惑するマトオ。
どうやらここまで来て、早くも行き詰まったみたいね。
気絶させたハズの盗賊のリーダー格の男がいつの間にか起きていた。




