42、次の目的地へ
王様の謁見が続く。
●【No.042】●
勇者マイカたち『ブラックファントム』の女性四人組は、王宮の『玉座の間』にて、アリスノヴァイン六世やヤナイ姫との謁見をまだまだ続けていた。
そのヤナイ姫から勇者マイカに連絡事項的な話をする。
「マイカさん、今回はあの "SMエロスの塔" で沢山のモンスターを倒してますね。 特にSMエロス伯爵・リンと上位魔族・ヒョウには、討伐した者に多額の報酬が出ています。 あとでギルド冒険商に行って確認してみて下さい。」
「はい、判りました。」
例の上位魔族討伐の報酬は結構高いので、これはなかなか期待がもてる。
以前も説明したけど、この世界には "冒険者カード" というモノがあって、それがお金の代わりになる。 一般的に硬貨や紙幣などのやりとりがなく、全ては "冒険者カード" で決算されている。 いわゆる "電子マネー" みたいなモノであり、モンスター討伐や宝箱で見つけたモノなどで貯めたお金は、全て "冒険者カード" の中に自動的に入っており、宿屋やお店などに設置されてる専用の装置で支払いなどを行う仕組みになっている。 さらに "冒険者カード" には、自分以外の者が使用すると、必ず「エラー」が発生してしまい、使用不可能な状態になってしまうのだ。
マイカの場合は、勇者なので勇者専用の "黒い冒険者カード" が対象となる。
なお、現在の所持金は "ギルド冒険商" で確認することができ、この世界のお金はポイント制 (P) になっている。 価値としては1P→日本円で10円となっており、例としては、1000Pならば10000円という計算になる。
またポイントとは、お金の支払いについてくる付加価値や予備金などのことではなく、この世界のお金の単位そのものが、このポイント制 (P) となっており、この大陸共通の正式な通貨として使われている。
また爵位について簡単に説明する。
この世界の爵位は全部で六つあり、王・公・侯・伯・子・男となっている。
主に王族や貴族が持ってる身分の階級であり、男爵→子爵→伯爵→侯爵→公爵→王爵の順番で偉くなる。
貴族の爵位では、一番下位が男爵であり、最高位が公爵である。 それと皇太子以外の王族皇子でも公爵や侯爵となる場合がある。
王族の爵位では、一括して王爵で括られて、主に皇太子や国王の妻や母なども王爵にあたる。 ちなみに国王の場合は、王爵ではなく王位にあたる。
ちなみに勇者マイカたちの爵位は男爵。 貴族としては、一番下位だけど、これで貴族として認定される。 つまり冒険者でありながら貴族でもある。
今度は冒険者ランクについて、少し説明する。
冒険者ランクも六つあり、S・A・B・C・D・Eとなっている。
いわゆる冒険者の階級であり、E→D→C→B→A→Sの順番で強く偉くなる。
だいたいが "ギルド冒険商" からの依頼や国王からの依頼や魔族討伐依頼などで活躍して、見事に依頼を達成すると、今回の時のように王様やお姫様から直接ランクを上げてもらったり、"ギルド冒険商" からランクを上げてもらったりできる。 また上位魔族を討伐すると、自動的にランクが上がってる場合もある。
今回の勇者マイカたちは、上位魔族の討伐とヤナイ姫救出に大きく貢献し、十二分に活躍したので、ランクなしから一気にランクDまで上がったのだ。
すると今度は王様から話しかけてきた。
「ねぇねぇ、マイカお姉ちゃんたちはこれからどうするの?」
「はい、そうですね―――王様にひとつお聞きしたいのですが?」
「な~に? 言ってみて」
「はい、私が最初に訪れた『アリステレストの町』という街には、街全体が高い壁に覆われていました。」
「あ~、あの街ね」
「その高い壁に付いてるあの傷は一体何なんですか?」
「あ~、アレね。 アレは魔族に付けられた傷らしいよ。」
「………」
「お父様から聞いた話。 昔……魔族を従えた『聖女』が、あの『アリステレストの町』を侵攻したらしいよ。 だからあの街は高い壁に囲まれているんだよ。」
「それは違うわ王よ。 あの街のあの高い壁は『聖女』が来る以前からあったモノよ。 だから魔族が侵攻した際に、あの壁を傷つけられたのよ。」
「あっ、そうか……確かにそうだよ。 あの壁は確かに昔からあったよ」
「それで……その『聖女』は一体何処から来たのでしょうか?」
「あぁ、お父様の話では、あの『聖女』は『アリステレストの町』のはるか西南にある『邪惚教都』と呼ばれる国からやって来たらしいよ。」
「……『邪惚教都』……」
どうやら次の目的地みたいね。
「でもでも、もう昔の話だよ。 その『聖女』だって生きてるかどうか、仮に生きてたとしても、もうヨボヨボのお婆ちゃんだよ。 きっと」
「いいえ、そうとは限りません。 もし仮に彼女もまた異世界から来た者で、私同様に不老不死の身体を得ていれば、私同様に肉体年齢が20歳のままかもしれませんよ。」
「「………」」
そこで王様もお姉様も黙ってしまった。
「王様。 その『聖女』の目的までは、まだよく解りません。 しかしながら、もう既に『アリステレストの町』にも "SMエロスの塔" にも魔族が出現しており、現に街が襲われたり、ヤナイ姫が誘拐されたり、被害が出ております。 急ぎ『邪惚教都』まで行って、その『聖女』の真の目的を調査せねばなりません。」
「なるほどね。 それじゃあマイカお姉ちゃんたち "も" 調査隊として、その『邪惚教都』に行ってもらおうかな。」
「…… "も" ……」
「実は勇者マトオたちも、ボクから『聖女』の話を聞いて、その『邪惚教都』まで行っちゃったんだよ。 マイカお姉ちゃんたちにも馬車をあげるから、それで『邪惚教都』まで行くといいよ。」
やっぱり彼らも向かったようね。
「はい、ありがとうございます。 王様」
「うん、気をつけてね。 マイカお姉ちゃん」
「どうか気をつけて下さいね。 マイカさんたちのご武運をお祈りします。」
「はい、ありがとうございます。 ヤナイ姫」
「それでは失礼します。」
私たちは立ち上がり、一礼すると踵を返して振り向いて、『玉座の間』の扉まで歩いていき、衛兵の人に扉を開けてもらい、そのまま退出した。
私たちがいなくなると王様とお姉様が話し合う。
「お姉ちゃん、その『聖女』の真の目的って、一体何だろうね?」
「そもそも、その『聖女』が本物の『聖女』かどうかも怪しいモノよ。 本来『聖女』とは、正義と慈愛に満ちた淑女であるべき存在よ。 それが全く正反対の魔族を従えるなんて、絶対に何かあったと思うべきよ。」
「なるほどね、確かにそうかもしれないね。」
「いずれにしても勇者マトオや勇者マイカが、何らかの答えを出してくれるでしょう。 それを待ちます」
その後で王様やお姉様も『玉座の間』を退出した。
こうして私たちの次の目的地も決まり、今夜は王宮のあの豪華な部屋 (四人一部屋) に宿泊することになった。
また王様が私たちの為に宴会を開いてくれていて、豪華な料理や甘いお酒などをご馳走になった。
そして翌朝には、王都・城下町の "ギルド冒険商" まで行って、色々と手続きしてもらい (男爵やランクDの確認と報酬受け取りや所持金の確認など)、街の外にある王様からもらった馬車で、再び『アリステレストの町』まで戻った。
ちなみに勇者マトオたちも、もう既に王様からもらった馬車で先行している。
どうやら勇者マイカたち『ブラックファントム』が再び『アリステレストの町』まで戻るみたいだね。




