36、漆黒の下着の悲惨な惨劇
今回は再び勇者マイカが登場する。
●【No.036】●
◎【十二階】
そこは広い空間である。
一切の窓や穴・隙間などもなく、その壁の上部には、複数の松明が並んで付いている。
この空間の奥の方には、大きな石で造られた玉座が置いてあり、それ以外に、特に何もない広いだけの空間である。
その玉座の前方の空間の中央には、エロ坊主頭・真紅色の瞳の、全長が4m近くはある巨大男性人型の上位魔族の『ヒョウ』が仁王立ちで立っていた。
そこの上位魔族・ヒョウこそが、ここの "SMエロスの塔" の主―――ラスボスである。
対するは、勇者マイカ率いる女性四人組の『ブラックファントム』である。 そこの上位魔族・ヒョウと丁度向き合う形で、四人が横一列に並んで立っている。 しかも、これは一体どういう訳なのか解らないけど、勇者マイカたち四人共に、全員が少し疲れ気味で漆黒の下着姿のまま立っていて、なんと…その下着自体も、もう既にボロボロにされていた。 一体どういうことなのか? 一体何があったのか?
今まさに戦闘中のようである。
《上位魔族・ヒョウ》
エロ坊主頭・真紅色の瞳の巨大男性人型魔族
レベル:270・ランクAA
攻撃:拳や頭突きでの接近攻撃
:全体攻撃の【禁着の炎】
:特殊攻撃の【服砕の叫び】
まず勇者マイカ、戦士ラグレテス、神官アロトリス、大魔女シャニルの四人が、ボロボロの漆黒の下着姿で戦うことになる。
どうやら、なかなか苦戦しているようだ。
そもそも上位魔族とは、魔族・魔物の中でも上位に位置して、Aクラスの爵位を持つ魔界の強者・エリートのことであり、魔王に次ぐ地位とされている。 当然、偉さと強さは比例しており、普通の一般魔族などとは比べモノにならない程に強いのだ。
ここで私たちが息を切らせながら、この上位魔族の『ヒョウ』の強さに対して、率直な感想を述べている。
「ちっ、強いわね。 これが上位魔族の実力なの?」
「しかも、なかなか近づけないわね? むこうは接近戦でも遠距離戦でも、どちらでも対応可能なのに……ねぇ。」
「さすがは、この塔のラスボスだけのことはありますわ。 ここからなんとか対応しないと、私たちが先に全滅してしまいますわ。」
「でもなんで、こんなにも私たちの服がボロボロになるんですか? もう下着しか残っていませんよ?」
「おそらく、それが……この塔での攻撃方法なのかもしれませんね。 侵入者の衣服を破壊して戦意・士気を削ぐ作戦なのかもしれませんね。」
「なんとも姑息な作戦よね?」
「でも、なんとかしないと私たちも下で拘束されてるお姉様もヤバイですよ。」
「くっ、そうね。 なんとかするわよ」
「………」
戦闘の合間を縫っての作戦会議。 別に余裕があるワケではなく、相談するだけの場所と時間を設けている。
ここでひとつ疑問が生じる。
確かに、ここでのラスボスが上位魔族・ヒョウなので、相当強いのはわかる。 しかも、相手はレベル270を有した強者であり、普通の人間なら相当苦戦して、もうとっくに敗北しているかもしれない。 それだけ強い相手なのだ。
だけど、こちら側にも最強の勇者マイカがいる。 勇者マイカのレベルは、有に500を超えているのに、何故ここまで、こんな相手に苦戦しているのか?
ヴァグドーの場合はたった一人で、あの上位魔族を討伐できているのに……? 単純な計算で言えば、ヴァグドーも勇者マイカも攻撃力も防御力も耐久力も、双方ほぼ互角の実力といえる。 だけど、ひとつだけ違うところがある。 それが肉体の強度である。
ヴァグドーの場合、すぐに冒険には出ずに森の中で99年間もの長い間、自身の肉体強化の特訓に励んでいた。 そもそも彼は、たとえ衣服がボロボロされても戦い続けられるし、肉体強化により鋼鉄の肉体を得たことで、敵からのあらゆる攻撃のダメージが受けにくくなってる。 そのため彼は多少無茶しても融通の利く身体と攻撃が可能になっている。
勇者マイカの場合、すぐに冒険に出ていて、特に肉体強化の特訓もしておらず、か弱い乙女の肉体のままである。 また自分の衣服が破れれば、当然ながら攻撃の速度や精度などが鈍るのも、裸で戦うことに慣れていない女性にとっては仕方ないことなのだろう。
その差が出てきてるようだ。
つまり、このような特殊攻撃をしてくる相手に、さすがの勇者マイカでも対応しきれずに、遅れを取ってるのだと思う。
それでもなんとかしなければ……私たちが全裸にされる前に……。
そこで私は黙って考え込むけど、今はまだ戦闘中。 当然だけど、上位魔族の『ヒョウ』が容赦なく攻撃してくる。
「ウッ…ヒョーオオオオオォォォーーーーッ!!!」
そこに上位魔族の『ヒョウ』が突然叫ぶ。
特殊攻撃の【服砕の叫び】(限定的超音波衝撃)
ギャアアァゴオオオオォォォ―――
「んっ!!?」
「うっ!!?」
「えっ!!?」
「あっ!!?」
なんと…私たち四人の残りの衣服である、漆黒でお揃いのブラジャーとパンティーのうち、漆黒のブラジャーの方が破壊されてしまった。
ボボボォーン!
「くっ!!」
「ひゃあぁーっ!!?」
「きゃあああぁーーっ!!?」
「ぎゃぁあああぁぁーーーっ!!?」
思わずアロトリスとシャニルの二人が、自分の両手で自慢の巨乳を押さえ隠して、その場でしゃがみ込んだ。
またラグレテスも剣を持っていない左手で、自慢の巨乳を押さえ隠して、構えて立っていた。
私は自慢の巨乳を押さえ隠さずに、あえて両手を自由にして、構えて立っていた。
つまり、この場で巨乳の真ん中・先端部にあるピンク色の突起物が見えているのが、この私だけである。
やっぱり、三人は恥ずかしいみたいね。
別に私は、この攻撃をゲスとか卑怯だとは思わないわ。 これは生死を賭けた戦い。 相手も必死よ。 こんな勝負にもならない戦闘が、ルールのあるスポーツだとか何かの競技ではないんだから、当然のことでしょ?
それはそうと、いずれにして私たち四人の衣服も残りは、漆黒のパンティー一枚だけになった。
なんと…あの勇者マイカがいきなりピンチッ!!?




