35、灰色の勇者『マトオ』登場!E
今回も勇者マトオ視点です。
●【No.035】●
◎【九階】
そこで―――
「―――ここは……」
俺が周囲を見渡す。
こんな灰色の勇者と呼ばれたマトオこと俺と、戦士のハーリルと、魔法使いのエミリアスと、僧侶のルシティークのパーティー四人組が、この9階フロアまで来ていた。
なんということか、この9階フロアも外に出てしまった。 正確に言うと、このフロアに壁がなく天井も見当たらない様だけど、その次の上階もあることから、まだ何らかの方法や手段などを用いて、さらに上階へ登っていくと思われる。
それと、このフロアの床がかなり透明な感じの床であり、もしかしたら下の階にいる奴らが上を見上げたら、俺のハーレムパーティーの女の子たちのミニスカートの中が、下から覗けてしまうのではないのか? そんな感じのスケスケ床である。
この階のフロアには、まず天井が見当たらず、次に壁も一面全くなく、また床も所々に黒い鉄板みたいなモノがあるものの、基本的には透明感のある床で統一されてるようだ。 またこのフロアには、特に何もない。 宝箱も階段も柱も石像も何もない、まさにただの空間である。
「本当に何もない。 8階フロアにあった玉座もロープもない。 ここで行き止まりなのか?」
「それじゃあ、もう上には行けないのか?」
「そんなハズがないわ。 少なくとも12階くらいはあると思ったのに……?」
「………?」
俺たちがこの何もないフロアで途方に暮れてると、そこにルシティークがある事に気がついた。
「マトオ、気がつきましたか? 所々床に黒い鉄板みたいな物がありますけど、これには何か意味があるのでしょうか?」
「あっ!?」
「そういえば……そうだね……なんだろう?」
「これは一体どういう意味があるんだろう?」
「………?」
た、確かに、床の所々に不自然に黒い鉄板が置いてある。 その黒い鉄板には、人一人が乗れる大きさの四角い鉄板であり、それが無造作に床のあちこちに置かれている。 その数はなんと8個はある。
現状で、これ以外に、何か目新しいモノはない。 ―――というか、これ以外に、手掛かりになるモノがないのも確かだ。
―――んっ!!?
なんか8個の黒い鉄板の表面に、何か「文字」が書いてある。 一個の黒い鉄板の表面に、「一文字」が書いてあり、全部で8文字ある。
バラバラに置いてある8個の黒い鉄板、そのまま左側から読んでみると、「わ」・「ヒ」・「す」・「た」・「を」・「ョ」・「お」・「ウ」と読めるけど、一体どういった意味なのか、一体何を言ってるのか、さっぱりよく解らないのだ。
「………?」
「こ、これは一体何を言ってるの?」
「ん~~ よく解りませんね。」
「でも、何か意味があるんだろ? これには……?」
そこで俺たち四人は、この8個の文字・言葉の意味を、よく考えてみる。
━「わ」・「ヒ」・「す」・「た」・「を」・「ョ」・「お」・「ウ」━
この8個の文字・言葉の意味……。
―――「を」は、何かと何かの間に入るバスだけど……。
ここでルシティークがまた何かに気がついた。
「あっ、これって……もしかして「た」・「お」・「す」と言う意味ではありませんか?」
「あっ、なるほどね。 じゃあ……あれも……もしかして「ヒ」・「ョ」・「ウ」と読むのかな?」
「えっ、それって……一体どういう意味なの?」
「……っ! そうか! わかったぞ! そういう意味なのか!」
「「「??」」」
そのルシティークとエミリアスの二人の言葉に、俺は全ての謎が解明して全ての意味を納得した。 まだハーリルとルシティークとエミリアスの三人は、全く理解しておらず、未だに不思議そうな顔をしてるけど、俺は全て理解した。
俺は早速、行動に移した。
「みんな、あの黒い鉄板を今から俺の言う通りに、順番に並べてくれ。」
「……? ああ、わかったよ」
「……? ええ、わかったわ」
「……? あっ、はい、判りました」
ここに俺たち四人が力を合わせて協力していき、俺の指示通りに、8個の黒い鉄板を動かしていき、順番通りに並べていく。 さすがに鉄板だけあって、多少は重いけど、それでも引きずりながら動かしてく。
「よし、これで完成だ!」
「「「!!」」」
ここで8個の黒い鉄板が、俺の指示通りに、横一列に並ばれている。
それが―――
━「ヒ」・「ョ」・「ウ」・「を」・「た」・「お」・「す」・「わ」━
━「ヒョウをたおすわ」━
━「ヒョウを倒すわ」━
これは勇者マイカが後に来る者の為に、何か謎のメッセージを残していた。 この「ヒョウを倒すわ」に、一体どんな意味があるのか、俺にはまだ解らないけど、とにかくかなりヤバイ事になるのは、まず違いないと思う。 それでもここまで来たら、もう後には引き返せない。 このまま行くしかないのだ。
下の連中……つまり、8階にいる他の勇者たちがまだ王様のお姉様である『ヤナイ姫』の救出だけに集中しているなら、俺たちだけで行くしかない。
「それじゃあ、みんなも黒い鉄板の上に乗るんだ。」
「ああ、わかったよ」
「ええ、わかったわ」
「はい、判りました」
そこで俺たち四人が、それぞれ黒い鉄板の上に乗ると、やっぱり予想通りに、俺たちの身体が光り始めて、その姿が消え始めた。
ピッカァーーン、シュゥゥゥ―――
ちなみに、1個の黒い鉄板の上に乗れるのが、一人だけなら、8個の黒い鉄板の上に乗れるのは、一度に八人だけである。
「みんな行くぞ! これで最後かもしれないけど、ここは俺たちも行くぞ!」
「ああ、わかってるって、マトオ」
「ええ、今からドキドキするわね? マトオ」
「はい、そうですね。 ここまで来たら、もう行くしかありませんからね。 マトオ」
「よーし、今度こそ、勇者マイカたちに会うぞ!」
こうして俺たち四人の身体は、光と共に完全に身体も消えてしまい、その光が消えた時には、もう誰もいなくなっていた。
果たして、これから俺たちは一体何処に行ってしまうのか? 今はまだ誰も知るよしもなかった。
『一応、念の為に』
今年もどうもありがとうございました。
来年もどうぞ宜しくお願いします。
それでは、良いお年を!




