27、SMエロス伯爵・リン
まだ勇者マイカたちは戦わないようだ。
●【No.027】●
◎【五階】
この階のフロアの中央部にいる《SMエロス伯爵・リン》は、今まだ生き残ってる別の勇者たちと戦闘の真っ最中である。
この中ボスみたいなヤツの実力が、まだまだ未知数なんだけど、私が疑問に思ったのは、他の勇者たちのやられ方なのよ。
なんで他の勇者たちや、その仲間の人達の鎧や衣服などが、ズタズタに引き裂かれて、破られてボロボロになっているのか?
つまり、あのガイコツの戦い方に何か問題があるのかな?
そこで再びフロア中央部にいる《SMエロス伯爵・リン》の方を見た。
現在は別の勇者パーティーで、勇者(男性)・戦士(男性)・僧侶(女性)・魔法使い(女性)の男女四人組が、中ボスのガイコツと戦っていた。
ここで私たちは、その戦闘の様子を眺めながら、あの中ボスのガイコツの攻撃方法を見極めることにした。
キィン、キィン、キィン!
勇者と戦士の二人が、それぞれ剣で中ボスのガイコツに斬りかかるけど、そのガイコツが銀製の中世のサーベルみたいな剣で、巧みに素早く防御していく。
かの勇者も戦士も、それなりに強くレベルも高いはずなのだが、このガイコツは銀色のサーベルで、彼らの剣の斬撃を軽くいなしていく。
なおも、続けて勇者と戦士が自分たちの剣で、そのガイコツにどんどん斬りかかるけど、ガイコツの方は銀色のサーベルで巧みに素早く防御していく。
キィン、キィン、キィン!
まったく中ボスのガイコツにダメージを与えられずに苦労している、この別の勇者パーティーの男女四人組が、なにやら泣き言を言い始めてきた。
「くそっ、こいつ強いぞっ!?」
「一体どうなってるんだっ!? こいつ、ただのガイコツではないぞっ!?」
「ねぇ、なんだかヤバイよ、こいつぅ!? 一旦退いた方がいいよっ!!」
「そうよ、私たちの今の実力じゃぁ勝てないわよぉ!? 一時退却しようよぉ!!」
「おい、何言ってんだよお前たちっ!? 逃げられる訳ないだろうがぁ!!」
「そうだぞっ!! 一度戦ったら勝つか負けるかしない限り、この戦闘は終了しないんだぞぉ!!」
「……うっ!!?」
「……そ、そんなぁ……」
そうである。 一度ボス戦が始まると、当然なのだが、もう逃げることが出来ずに、このまま戦い続けなければならない。
またひとつの別の勇者パーティーがボスと戦ってる間は、他の勇者パーティーが参戦することが出来ず、勇者マイカたち『ブラックファントム』も少なくとも、今戦ってるあの別の勇者パーティーが敗北しない限り、あの中ボスのガイコツと戦うことができないのだ。
残念だけど、つまり私たちは彼らに助太刀することが出来ないってことね。
それにしても、あのサーベルによる斬撃攻撃しか、今のところしてこないわね?
それしか攻撃方法がないのかしら?
ボォウ、ブゥン!
「それなら、これでも喰らいなさい!」
ここで今度は魔法使いの女性が、魔法で大きな火の玉を作り、それを中ボスのガイコツモンスターにぶつけてやろうと、思いきり投げ飛ばした。
サァッ!
「………」
するとここで《SMエロス伯爵・リン》が銀製のサーベルの剣先を前面に突き出すように構えた。
「……んっ!!?」
ドドォーーン!
一瞬、瞬間的に「ヤバイ」と感じた私は、ラグレテスたちの前に出て、例の妖しく禍々しく邪悪な漆黒の闘気を全身に放出させて、その闘気を利用して、大きな盾壁を作り出して、これで私たちを守る。
「……ハッ!」
ズドォーーン!
そこで《SMエロス伯爵・リン》の銀製のサーベルの剣先から、強力な爆発衝撃波が放出されており、それが目の前まで来ていた大きな火の玉を一瞬にして消し去り、その後ろにいた別の勇者パーティーの男女四人組に襲いかかり、さらに後ろにいた私たちにも襲いかかってきた。
ビリビリ、ビリビリ、ポロリ!
「うわぁーーーっ!!」
「ぐあぁーーーっ!!」
「きゃあああぁっ!!」
「ぎゃぁーーーっ!!」
その爆発衝撃波が、別の勇者パーティーの男女四人組の鎧や衣服などを引き裂いて、ボロボロに破けながら、後方にある壁まで吹っ飛んでいった。
ズドドドォーーン!
「「うがっ!!?」」
「「きゃん!!?」」
なんということなのか!
先程まで、あの中ボスのガイコツと戦っていた別の勇者パーティーの男女四人組が、背中を壁に激突させて、鎧や衣服などを無くしながら、うつ伏せの状態で倒れて気絶した。
ドサササッ!
これで彼らは戦闘不能となった。
一方の私たち『ブラックファントム』は、私の機転のお陰で、なんとかダメージを受けることもなく、衣服なども無事である。
だがしかし、これで最後に残った私たちが、これからあの《SMエロス伯爵・リン》と戦うことを余儀なくされた。
なるほどね。ああいう攻撃方法もあるのね。
「なかなか強そうですね。あのガイコツ、最悪!」
「あの攻撃、ヤバそうですね。衣服がボロボロになるんですね。 最悪!」
「ん~、良くて下着姿、最悪!全裸の状態ってところですかね?」
「やっぱり、あのガイコツとの戦闘は避けられないわね。」
そこで私たちが、あの中ボスのガイコツに対して、ここから勝利する為に戦闘準備を開始した。
とにかく、みんなが「最悪」って言ってるように、女性にとっては「最悪な強敵」である。




