21、扉型モンスターとの戦い
●【No.021】●
あの勇者マイカたち一行が王様・アリスノヴァイン六世の謁見を受けて、某所にある隠し通路から突き当たりにある祠へ、その祠の中にある『ワープ』の中に入った勇者マイカたち一行が目の前に見える "SMエロスの塔" の所まで来ていた。
だけど塔の扉の前で、なんだが人だかりが出来ていた。
そこで勇者マイカたち一行が歩いて近づいてみると、なにやら見覚えのある人達が大きな扉の前で集まっていた。
あらあら、あの人達は……もしかして、私たちの前に王様に会ってた他の勇者たちでは……?
勇者マイカの前に王様の謁見を終えて、既にあの "SMエロスの塔" までやって来たはずの他の勇者たちが、まだ塔の中に入っていない様子である。
あの "SMエロスの塔" の出入口と思われる頑丈そうな大きな扉の目の前で困惑した状態で立ち往生している他の勇者たち。
「マイカさん、あの人達は何故、塔の中に入らないのでしょうか?」
「もしかして、扉に鍵がかかって入れないのでしょうか?」
「……?」
「マイカさん、何か様子がおかしいですよ?」
私たち『ブラックファントム』がだんだん "SMエロスの塔" の頑丈そうな大きな扉まで歩いて近づいてみると、なんと―――
―――戦ってる……?
どういうわけか。
他の勇者たちやその仲間たちが剣や槍や杖などの武器を構えて、それぞれ臨戦態勢をとっていて、扉に向かって戦ってる感じである。
「―――扉と戦ってる……?」
「もしかして、扉型モンスターなの?」
「えぇっ!? 嘘でしょっ!? それでは中に入れないでしょう!?」
「……なるほどね」
なんということなのか。
あの "SMエロスの塔" の出入口でもある、あの頑丈そうな大きな扉が、扉型モンスター《ビッグ・マッドネス・ドアレス》と言う名前の魔物であり、彼らの行く手を遮っている。
なるほどね。
もう扉自体がモンスターである為に、倒さない限り、塔の中には入れないのね。
しかも、あれほど勇者がいっぱいいるのに、まだ中に入れないということは、あの扉型モンスターが予想以上に強いということなのね。
まぁ……確かに見た目頑丈そうだし、普通の武器では倒せないのかな……?
これは……かなり凄いことになってるようね。
まさか塔に入る前から、既に戦闘が開始されていたとは……。
しかも、塔というダンジョンの出入口の扉が、既に強力なモンスターとなっていて、他の勇者たち相手に戦いを挑もうとしている。
あらあら、あの扉と戦ってるわねぇ~ 他の勇者たちが剣や槍などで扉を叩いているみたいだけど、なかなか効いてないようねぇ~ やっぱり普通の武器や通常攻撃では、ほとんど歯が立たないようねぇ~。
ようやく私たちも扉の所までやって来たけど、そこから少し離れた所から、後方支援にまわることにした。
《ビッグ・マッドネス・ドアレス》
扉なので移動できない。
大きな目や口はあるけど、手足はない。
レベル:55
他の勇者たちが剣や槍などで《ビッグ・マッドネス・ドアレス》を斬ったり叩いたり突いたりしてるけど、《ビッグ・マッドネス・ドアレス》は無表情で全く効いていない様子である。
傍から見ると、他の勇者たちが扉をただ斬ったり叩いたり突いたりしてるようにしか見えない。
一方の《ビッグ・マッドネス・ドアレス》は攻撃も回避も防御も何もしてこないで、ただじぃっとしているだけ。
だけど、確かにコイツを倒さないと、先には進めないようね。
「くそ、なんて頑丈なんだ!」
「おい、びくともしないぞ!」
「このっ、一体どうすれば……っ!?」
このあまりの頑丈さに動揺・困惑・戸惑う他の勇者たち。 正直いって、この程度の扉さえ破壊できない、この国の他の勇者たちの実力もたいしたことはなさそうね。
そこで戦士のラグレテスが私の前に出てきて、私に話しかけてきた。
「ここは私にお任せ下さい。」
「あら、あなたならなんとか出来るの?」
「はい、私ならたぶんなんとか出来ると思います。」
「なら、あなたに任せるわ」
「はい、判りました」
そう言うと、ラグレテスがさらに前へ歩いていき、扉の目の前で、扉と戦ってる他の勇者たちの少し後ろで立ち止まった。
そこでラグレテスが漆黒の剣を両手で持って構えて、それを天高く上に振り上げてから、そのまままっすぐ素早く振り下ろした。
「おりゃぁあぁーーっ!!」
ブゥン、ズジャァン、ズドォン、ドザァン!
灰色の突風・衝撃が発生した瞬間、灰色のエネルギーの光刃が素早く《ビッグ・マッドネス・ドアレス》の中央部に激突・直撃して、そのまま扉が後方に倒れた。
【ストリンガー・デスティネーション・ソーサリー】
このまま《ビッグ・マッドネス・ドアレス》は戦闘不能? となり、戦士ラグレテスが勝利した。
オオォーーッ!!
ここで憔悴していた他の勇者たちから歓声が上がる。
遂に頑丈そうな大きな扉がなくなり、出入口がぽっかり口を開けて待っていた。
先程まで憔悴していた他の勇者たちも我先に急ぎ、障害のなくなった "SMエロスの塔" の中にどんどん入っていった。
再びラグレテスが私たちの所まで戻ってきた。
「お疲れ様、ラグレテス」
「はい、どうもありがとうございます。」
「お見事でした。 今の技は……?」
「いいえ、アロトリスさん。 今のは技と言うより、一種の能力みたいに見えましたけど……?」
ここで彼女が見せた【ストリンガー・デスティネーション・ソーサリー】はモモネが使用したモノと同系統のモノである。
「まぁまぁ、それは後でいいから、ほら、みんなもう中に入っていったわよぉ。」
気がつくと、もうとっくに他の勇者たちが全員 "SMエロスの塔" の中に入っていったようね。
私たち『ブラックファントム』もさっさと "SMエロスの塔" の中に入っていった。
ようやく塔のダンジョンの中へ、
勇者マイカのパーティー『ブラックファントム』の出陣です!
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