18、早く勇者を集めろ!
●【No.018】●
遂に "アリスノヴァイン王国" の王都・城下町に到着した。 その名も "プリデミア" と言う巨大な街である。
その街の入口には、多くの門番・衛兵が出入りする大きな門を守っている。
つまり、この街は全ての人間が入れるわけではないようだ。 だけど、この街が王都・城下町ならば、それも仕方ないことである。
色々とあるのだろう。 治安・警備の問題や入場手続きの問題など。
これから "プリデミア" の中に入るのに、沢山の人達による長蛇の列で並んでおり、まだ後方の人達が門の中はおろか、門の前にも来れていない。
当然だけど、遅れてやって来た勇者マイカたち一行も、その長蛇の列の最後尾に並ばなくてはならない。
「あらら~ 結構並んでるわねぇ~~♪」
「はい、今度は王都・城下町なんで警備や手続きなんかで、かなり入場が遅れてるようですね。」
「さて、どうします? マイカさん」
「どうするも何も後ろで並ぶしかないんじゃない?」
「ですよね? こんなところで問題を起こせば、街の中に入れないかもしれませんからね。」
「はい、判りました。 マイカさん」
そこで私たちも長蛇の列の最後尾におとなしく並ぶことにした。
「あ~~あ、ヒマだなぁ~~」
「なかなか進みませんね?」
「かなり時間がかかるみたいですよ」
「しばらく待つみたいですか?」
「………」
その言葉通りにしばらく……かなり時間がかかるみたいで、まだまだ街の中には入れない。
私は腕組みして目を閉じて静かに待っていた。
確かに少しずつは進んでるけど、それでもまだまだ街の出入口である大きな門には近づいていない。
またしばらく時間が過ぎてゆき、私の後ろの方ではシャニルたちがなにやら談笑していた。
「はぁ~ 王都に入るのって大変だねぇ~」
「……?」
私の左肩に乗ってるミドリがため息をつきながら、まるで一人言のようにポツリと呟いていた。
「まぁ~ねぇ、でも私たちはそんなに待たないんじゃないかな?」
「……へ? それってどういう意味―――」
ミドリが私の意味深長な言葉に疑問に思い質問するけど、そこに―――
「すみませーん! この中に勇者様はいらっしゃいますかぁーー?」
前方から衛兵・門番たちが歩きながら、大声で長蛇の列に並ぶ人達に問いかけていた。
私は無言で右手を挙げて挙手した。 それに気づいた衛兵・門番たちが、私たちの方に歩いて近づいてきた。
「おおっ、勇者様ですか?」
「ええ、一応……」
「それでは身分証明カードなどがあれば、ご提示お願いします。」
「は~い、これでいい?」
私は自分の "漆黒のカード" を衛兵・門番たちに手渡すと、彼らがすぐ後ろを振り向いて、なにやら話し合っていた。 少しだけ時間が経過して、彼らから「おおっ、間違いない!」と声がすると、また私たちの方を向き、私に "漆黒のカード" を返してきた。
「では勇者マイカ一行様。 どうぞこちらへ」
「うん、わかった」
そこで私たち四人は、衛兵・門番たちの案内により、長蛇の列から外れて、また別の人だかりができてる場所へ向かって歩く。 そこはまだ大きな門の中に入る手前で、大勢の人が集まってる場所である。
「ふーん、見た目は冒険者みたいね。」
「はい、一体何の集まりなんでしょうか?」
「はい、一体何でしょうね?」
大勢の人の人だかりの為か、周囲がざわざわと騒いでいて、ここでもまた少し待たされるようだ。
「ねぇねぇ、マイカ。 この人達って勇者の冒険者たちじゃない?」
「ええ、おそらくね。 ここの王様が本当に勇者を集めてるようね。」
「でも一体何の為に集まってるんだろうね?」
「さぁね? なんだろうね?」
私とミドリがこの集まりに対して、ひそひそ話をしている。
そうなのである。
この大勢の人の人だかりの正体は、勇者とその仲間たちが集まった状態なのである。
つまり私と同じように、あの "漆黒のカード" を所持する、勇者と認定された者たちなのである。
もしかしたら、この中にも私たちと同じように、『異世界転生者』がいるかもしれないね?
でも怪しい人がいても、私はあえて声をかけずにシカトしてる。
私が見た感じ、約20組くらいの勇者一行はいるんじゃないかな?
やがて、再び衛兵・門番たちが私たちの方に声をかけてきた。
「えー、ひとまずこれだけの勇者様が集まったので、一旦このまま "ギルド冒険商" まで行きましょうか。」
そう言うと、すぐそこにある大きな門とは違う、別の出入口である小さな扉を門番たちが開けて、そのまま衛兵たちの案内で勇者専用の "ギルド冒険商" まで歩いて向かう、私たち勇者一行。
そして、ほとんど一本道の先にある勇者専用の "ギルド冒険商" に到着して、その中に入ると、ここでも沢山の人がいた。
「ふーん、ここもいっぱいいるわね。 ここの人達もみんな勇者一行なのかしらね?」
「うん、たぶんね」
などと、私とミドリがまたひそひそ話をしてると、この部屋の中央に、純白の鎧兜とマントを身につけて、純白の剣を帯刀している「王護聖騎士」が三人くらい立って現れた。
この人達がおそらく、勇者専用の "ギルド冒険商" の主人だと思われる。
勇者マイカ、遂に王都・城下町に到着。
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