13、比較的楽な出会い方
ここで遂にあの女性が登場する?
●【No.013】●
勇者マイカと大魔女シャニルの二人は、既にカグラツカサの町を出て、次の目的地である "マロニューウナの町" の方に向かって歩いている。
その移動手段とは徒歩であり、馬や馬車などといった乗り物はまだない。
その為、勇者マイカたちは歩いて、次の街に行くしかない。
私はピクニック感覚で歩いていて、隣で大魔女シャニルが、神妙な面持ちで歩いているみたいね。
その事に疑問に思った緑色のスライムのミドリが、大魔女シャニルに質問してきた。
「……どうしたの? シャニル」
「はい、私たちの背後の方から誰かがつけてる感覚がありますよね?」
「……えっ、たまたま向かってる場所が同じだからじゃないの?」
「はい、だといいのですけど……」
「ふーーん、後ろねぇ~~」
そこでミドリが私の左肩の上から、ぴょんぴょん飛び跳ねながら後ろの方を向いていた。
「………」
だがしかし、ヒョイと後ろを振り向いてみても、特に誰もいないようである。
「あら、誰もいないじゃない?」
「ホントだ。 誰もいないよね?」
「はい、今のところは……ですけど……」
「……??」
などと話しているけど、大魔女シャニルは考え込んだり、後ろを気にする素振りを見せたりしている。
―――何かあるのだろうか……?
私の方はこのまま構わずに、まっすぐ前を向いて歩く。 最も、その後ろの奴らが、仮に悪質ストーカーだったら瞬殺するだけだけどね。
だいぶ進んできただろうか? まぁ…約2キロなんて、やっぱり私たちには、たいしたことなかったみたいだね。
相変わらず、何もなくシンプルに舗装された道だけしかなく、少し離れた左右に林が並んであるだけである。
だいたい1.7キロくらいを歩いていたところで、突如として、あり得ない "無理ゲー" が発生していた。
なんと勇者マイカたちが向かっている先の道の真ん中に、巨大な龍がふわふわ浮いている。
いかにも強そうな巨大な龍で身体も紫色の鱗に覆われており、まるで勇者マイカたちを待ち構えているかのように、目の前にいた。
勇者マイカにとっては、この異世界で最初のドラゴンである。
「ぎゃぁあああああぁーーーっ!!?」
それを見たミドリがまず凄く驚いた。
「どどどどドラゴンッ!!? なんでドラゴンがここにっ!!? なんでドラゴンがここにっ!!?」
当然の反応と台詞である。 気持ちはわかる。
「ひぃぃぃぃぃ………っ!!?」
だがしかし、ミドリが絶望的に驚愕しているにもかかわらず、勇者マイカと大魔女シャニルは無言の無表情のとても冷静・冷淡な反応をしている。
ここで私が左肩の上で目玉を大きくして凄く驚く(笑)ミドリをよそに、そのドラゴンさんに質問してみた。
「……あなた…どちら様……?」
このドラゴンさんには、闘志も殺気もないことはわかってたわ。 じゃなければ、もうとっくに私たちに襲ってきてるはず…よね?
そう、さっきからずぅーとおとなしいままなの。
「ふふふ、さすがですね。 勇者マイカさん……」
この美しい女性の声は、その巨大な龍の首の後ろの方から聞こえてきた。
「…やっぱりね。 まぁ…わかってたけど…ね。」
そこで巨大な龍の首の後ろから、とても美しい女性の綺麗なお顔がひょっこりと出てきていて、勇者マイカたちに話しかけてきた。
「はじめまして、私の名前は『アロトリス』と言います。」
「ふーーん、アロトリス……あなたももしかして、『転生者』なのかしら?」
「はい、やっぱりわかりますか? さすがですね。」
「ええ、まぁね。 "類は友を呼ぶ" 的なヤツ?」
「…は…ははは、なるほど……」
「ところで私に一体何か用かしら?」
「はい、ぶしつけ、もしお邪魔じゃなかったら、私も仲間に加えてください。」
「いいわよ♪」
勿論、即答よ。
「……えっ、本当にいいんですか?」
「勿論、あなたのような美人は大歓迎よ♪ なかなか綺麗な顔立ちだしね♪ 同じ転生者だしね♪」
「そんな基準で仲間にしているのですか?」
ここでシャニルがツッコミを入れてきた。
「まぁまぁ…別にいいじゃないの♪ 気楽にいきましょ…気楽に…ね♪」
「そそそそそのドラゴンも一緒に仲間にするの? マイカ」
確かにこの巨大な龍は、仲間として旅をするには、少し大きすぎるようだが―――
するとそこでアロトリスが―――
「ご心配には及びません。 こうすれば大丈夫です。」
アロトリスが巨大な龍の首から降りて、右手の掌を広げた。
するとみるみると、その巨大な龍の身体が小さくなっていき、アロトリスの右手の掌にちょこーんと乗った。
本当に可愛いサイズのお人形さんみたいな巨大な龍になっていた。
「あら、かなり便利ね♪」
「そのコ、名前があるのですか?」
「はい、ムラサキと言います。」
「また身体の色で名前を決めてるのぉーーーっ!?」
ふふふ、なかなか良いリアクションとツッコミだわ♪ ミドリ♪
彼女の名前は『アロトリス』よ。 私と出会った頃のアロトリスは異世界に来たばかりで、まだ未婚で娘さんもいないわ。 現在は神官をしていて、同じ『転生者』でもある私たちと一緒にいた方が色々と都合が良いのかもね。
♪神官アロトリスが仲間になった♪
するとそこでアロトリスがまた―――
「あのぉ~ 後ろの方々は一体……っ!?」
「私たちは知らないわよ。 もしかして、悪質ストーカーかもね。」
「……えっ、そうなんですかっ!?」
「あなたも大変なところで、私たちの仲間になりましたね?」
「だ…大丈夫です。 ムラサキもいますし!」
「心配ないわ♪ みんな私がやっつけてやるわ♪」
「そ…そうですか…。 では…宜しくお願いします。」
「はい、宜しくお願いします。 アロトリスさん」
「ヨロシクねぇ~~ アロトリス」
そこで自己紹介もそこそこに勇者マイカたちは、そのまままっすぐ次の "マロニューウナの町" に向かって歩いていった。
その後ろの方で謎の黒い人影が、複数人まだ勇者マイカたちのあとをつけてるようだが―――
●とあるパーティー
勇者マイカ(女性)
大魔女シャニル(女性)
神官アロトリス(女性)
だんだんと役者が揃ってきたみたいだが―――




