07、最初の街で早速騒動ありC
●【No.007】●
その後も街の中に入り込んできた鎧だけの魔族を、勇者マイカが一人ずつ丁寧にじっくりと倒していった。
その灰色の鋼鉄の鎧兜を着用した長身の謎の男性を、次々と倒していき、やがて街中・街の出入口・街の外壁などに群がる鎧だけの魔族を全て倒してしまった。
なんと驚くべきは、その討伐時間が約10分くらいであり、なかなかの速さの戦闘である。
そこで勇者マイカが呆れた様子で―――
「なに、この程度の実力で魔族なの!? あんまり強くないんだけど!?」
「いや、マイカの方が凄いんだよ。 普通は人間が魔族に勝てるわけないよ。」
「えへへ、そうなの? まいったなぁ~~♪」
いやぁ、私って…そんなに強いのぉ~~♪ なんだか照れるなぁ~~♪
「……」
私の不気味な態度に、ミドリが無言で呆れ顔になっていた。
んん? な~~に、やってるのかなぁ~~? アレ……?
私がある方向であるモノを見ている。
そこに街の人々や冒険者たちが、そこら辺に転がっている、その灰色の鋼鉄の鎧兜を拾い集めて、何処かに持ち去っていった。
魔族の鎧なので、意外とそれなりに高価で売れたり、他に優れた武器・防具を造る為の材料になったりするからである。
勿論、そもそも魔族の鎧なので、普通の人間や冒険者などでは装備することなどできないが、何故…高価で売れたり、他の武器・防具に造り変えたりできるのかは…全くもって不明。
なんだか…呪われそうな気もするけど……?
その後も街の皆が喜んだり、騒ぎ出したりして、ちょっとしたお祭り騒ぎになってる中で、私だけが密かに静かに自分が宿泊している宿屋まで戻っていった。
自分の部屋に戻った私は、早速旅支度をしてから、買い込んでいた昼食を適当に済ませていて、必要な荷物だけを持って、その部屋を出ていった。 (必要ない物は既に売却済)
私がこの宿屋を出ると、その足で "ギルド冒険商" の方に向かって歩いていった。 おそらく、この街では最後になるだろうね。
この街の "ギルド冒険商" に到着すると、早速だけど建物の中に入り、すぐに主人である少女アリナに話しかけた。
現在は "アリスノヴァイン王国" の街のひとつで『アリステレストの町』にいる。
「は~~い、アリナ。 また来たわよぉ~~♪」
「あっ、マイカさん。 お疲れ様でした。 まさか、あの強そうな鎧だけの魔族を、あんなに簡単に倒すなんて、さすがに凄いですね。」
「あらぁ~~ そんなに凄かった? 私には普通にやったつもりなんだけどねぇ~~♪」
「ところで、ご用件は一体何ですか?」
「これから私はこの街を発つわ。 そこで王都に行く一番の近道を教えてほしいんだけど、わかる?」
「はい、この街からさらに北に行くと、王都に近い街で『カグラツカサの町』があります。 まずはそこに行ってみてはいかがでしょうか?」
「…『カグラツカサの町』…? なんだか人名みたいな町の名前ね?」
「はい、実際にその街を作った人の名前からとったと、以前聞いたことがあります。」
「ふーん、"カグラツカサ" ねぇ~~ まぁ、いいわ。 今度はその街に行くわね。」
「はい、一度行ってみたらいいと思います。 いずれにしても王都に行くには、その街も通らないといけないと思いますから。」
その後も私と主人の少女アリナが他愛もない雑談を続けていだが、やがてアリナが―――
「たった今、決算が終了しました。」
「ありがとね♪」
勇者マイカがあらかじめ、自分の勇者専用の "漆黒のカード" をアリナに手渡しており、ピピーーッという音とともに、今回の鎧だけの魔族討伐の報酬受け取り決算が無事に終了、その後でアリナが勇者マイカに、その "漆黒のカード" を返していた。
「これで今回もタンマリですね。 マイカさん」
「あら、もしかして私、お金持ち?」
「実際に、ああいう魔族討伐の報酬は、結構高額ですから、本当に凄いことになってますよ。 それにマイカさんは、この街を救ってくれた救世主ですしね。」
「ふーん、そうなのね。 まあいいわ。」
「マイカさん、本当にありがとうございました。 どうか、お元気で!」
「ええ、あなたも元気でね。 アリナ」
「はい、マイカさんのこれからの活躍・ご武運をお祈りします。」
「……」
ここで私が無言で、踵を返して後ろに振り返り、このまま右手を上げて左右に振りながら、そのまま "ギルド冒険商" を出ていった。 どう、カッコ良かった?
「さあ、次の街へ行くわよ。 ミドリ」
「うん、了解。 マイカ」
こうして、私たちは『アリステレストの町』を出ていき、次の目的地である『カグラツカサの町』の方に向かって、北へ歩いていった。
勇者マイカ、最初の街を出て、再び旅立つ。
ここから、勇者マイカの伝説が始まる。