112、『世界地図』
●【No.112】●
こちらはアリスノヴァイン王国の王都・城下町 "プリデミア" の王宮内にあるマイカたちの自室にて。
王様たちとの話し合いも終わり、私たちは自室に戻っていた。 最も今は宿泊させてもらっているだけなので、自室というよりも宿泊部屋といった表現がいいんだろうか…? この部屋には、私たち『ブラックファントム』の四人しかいない。 勿論だけど、この四人だけで、今後の事について話し合うつもりよ。 決して女子会ではないわ。 それと私は、よくミドリやアオとも打ち合わせしている。
「………」
「これからどうします?」
「もうあらかた行きましたよね?」
「そうですよね? もうこの大陸で行ける所はないですよね?」
「……」
「アリスノヴァイン王国以外に王国はないですし、それと『邪惚教都』や "バイオメドリグス" の国にも行きましたし―――」
「それにもうカラスクイーンアテナやポグルスもいませんし―――」
「あと『魔法の地図』も入手したし、船ももうじき手に入るから―――」
「ええ、その船で次の大陸へ出航するだけ―――」
「「…はい…」」
「いいえ、まだよ」
「「―――えっ!?」」
「?」
「まだ手に入れてないモノがあるわ」
「えっ、まだぁ!?」
「それは何ですか?」
「『世界地図』よ!」
「「「ッ!!?」」」
「そう、この大陸で『世界地図』を入手しておかないと、次に入手できる機会がいつになるか解らなくなるからね。」
「―――『世界地図』……」
「確かに、これから世界に出るなら『世界地図』は必要ですね?」
「しかし、どうやって入手します?」
「大丈夫よ。 アテはあるわ」
「マイカさんには何か考えがあるようですね?」
「ええ、あるわ」
「判りました」
「はい、判りましたわ。」
「入手しに行きましょう」
「その『世界地図』を―――」
「ええ、行くわよ」
私たちの次の目的、それは『世界地図』の入手である。 ここから先…次の大陸へ行くにも、もはや頼りになるのは…その『世界地図』のみ。 必ず入手しなければならない。 最重要アイテムなのである。 問題は何処に行けば入手できるのか? でも…それについては、私に考えがあるわ。
それからしばらくして、次に私たちが王宮内の某所にて、マトオたちと合流した。
「これからどうします?」
「私たちは『世界地図』を入手するわよ」
「……『世界地図』……?」
「そう、これから世界を旅しようという時に、あの『世界地図』は絶対に必要だからね?」
「あぁ、確かになるほど」
「あなたたちはいらないの?」
「いえ、ここだけの話。 俺たちに地図は必要ないんですよ」
「……」
「??」
「「…えっ!?」」
「マイカさんたちには言いますけど、このルシティークの特殊能力に『神の地図』というモノがあって、それで外でもダンジョン内でも何処でも光の道筋がわかるようになってるんですよ。」
「……」
ルシティークが軽く会釈する。
でも…『神の地図』って…一体何なの? まさか…彼女だけが持ってる特典能力とかなの? なかなかやるわね彼女も―――便利そうで―――
「……」
「「……『神の地図』……」」
「…はい…」
「………」
「だから俺たちに地図は必要ないんですよ」
「「「……」」」
「……羨ましいわね……」
「「「……」」」
「……」
私がポツリとした小声の発言に、ルシティークをはじめマトオやシャニルたちも思わず魅了して言葉を失う。 別にそんなつもりで言ったワケではないけど、思わず本心が口に出てしまったんだろうね。
「それで私たちは、これからある場所に行くつもりよ?」
「ある場所とは?」
「ナンナンチョウよ」
「……」
「??」
「ナンナンチョウ?」
「ええ、そうよ。 そのナンナンチョウへ行って、ある人物と待ち合わせするつもりよ」
「ある人物と?」
「……」
「もし良かったら、俺たちも一緒に行っていいですか?」
「ええ、別にいいわよ」
「ありがとうございます。」
「………」
マトオたちも同行するみたいね。 そのナンナンチョウとは、このアリスノヴァイン王国から南に行くとある街であり、そのナンナンチョウも漢字で書くと『南難町』となるそうね。 最もこの世界に漢字はないので、あの漢字の意味がわかる者でないと、ほとんど何も読めないわね。
そのナンナンチョウとは、あのアリスノヴァイン王国の南側を、徒歩・馬車で行っても半日もかからずに行くことができるようね。 これからすぐに行って、ある人物に会うつもりでいる。 この後で私たちが、それぞれ出掛ける準備をして、また例の某所にて、合流・集合した。 その間も私はミドリやアオと打ち合わせしていた。
「それじゃあ、行きましょうか」
「はい、判りました。」
そう言うと、私たち『ブラックファントム』の四人と、マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』の四人で王宮を出ていき、王都・城下町 "プリデミア" を出ていき、そのまま馬車に乗って南側へ向かい、次の目的地・ナンナンチョウを目指す。
半日もかからないとはいえ、あのナンナンチョウに到着した時には、もう既に夜だった。 実は夜に着くように時間を調整していた。 この街は夜でも自由に入れて馬車も所定の場所に停車できる。 私たちは早速、街の酒場の裏側にある某所へ向かう。
私を先頭に、他の者たちが後を追う。 私が一体誰と会うか、わかる人にはわかるけど、解らない人には解らない人物である。
そこに待っていたのは、ヴァグドゥルスとシジルスの二人だった。
「待たせたわね?」
「否、問題ない」
「「「……」」」
「「「??」」」
「例のヤツは?」
「手に入った」
他のみんなもヴァグドゥルスには会ってるけど、もう一人の彼とは初見である。 最も私も初見である。 ヴァグドゥルスの話だと、このシジルスが『世界地図』を調達してくれたらしい。 最も一体どうやって『世界地図』を入手できたのかは、さすがのヴァグドゥルスでも知らないらしいけど―――
「あなた誰?」
「我が名はシジルス。 ヴァグドゥルスの知人だ」
「「「……」」」
「へぇ~、そうなんだぁ~」
「…そうですか…」
「「……」」
「ビジネスの話をしましょう。」
「あぁ…例のブツは持ってきたぞ!」
「ありがとう。 それであなたの欲しいモノは、例のアレかしら?」
「あぁ… "30000EP" は頂こうか?」
「ええ、わかったわ」
「「「……」」」
「「「??」」」
そこでシジルスから『世界地図』を手渡され、私からは彼に30000EPを送った。 ちなみにEPとは、"エネルギー・ポイント" のことをいう。
いずれにしても、これで遂に―――
♪勇者マイカは『世界地図』を手に入れた♪