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絶望老人が異世界転生をしたら、もう既に最強無双になっている?  作者: 賭博士郎C賢厳
B.バイオメドリグスの国編
113/120

106、好都合

  ●【No.106】●



 ここ "バイオメドリグス" の国の "森の宿屋" にて。


 もうそろそろ夜も明けてきても、私たちや上位魔族トウは宿泊部屋の一室を借りて、なんか知ってそうなヴァグドゥルスと話を続ける。 結局のところ、あの《巨紅龍(きょこうりゅう)》には逃げられたし、事の顛末・真実を知るまでは帰れないからね。


「それでポグルスはどうなるの? 復活できるの?」

「奴は死ぬと、一度女神ベルダルディアの所へ戻る。 再び復活できるか吟味・審議するだろうけど、今回の事は不可抗力だ。 また戻ってこれるだろう」

「へぇ~、そうなのねぇ~」

「それは良かったです。」

「ただし、いつ何処(どこ)で戻ってこれるかは、この俺にも解らない。」

「あら、意外に不便ですね?」

「あら、そうなのですか?」

「それでカラスクイーンアテナはどうするつもりだ?」

「あぁ…彼女は一旦保留。 相手がもし仮に大魔王イザベリュータだったら、今は下手に刺激しない方がいいわね。 ()()()はまだ()()()()()()手は()さないわ」

「なるほど、そうか…」

「…ふ~~ん…」


 そうか、まだ放っておくつもりなのか? まぁ…カラスクイーンアテナ討伐の任務は、あくまでポグルス個人の業務だ。 俺には関係ない。 ポグルスには悪いけど、好都合だ。 それにポグルスが再び復活するまでに討伐されていれば、それでいいしな。


 そうかい、勇者マイカはまだカラスクイーンアテナを助けるつもりはないのかい? それならそれで好都合。 まぁ…あたしとしては、邪魔者がいなくなってせいせいするよ。 これでようやく『聖女』カロテラと心行くまで決着がつけられる…ってなモンさ。


 ヴァグドゥルスと上位魔族トウの二人は、それぞれ自分の都合で動く主義の者たちなので、あの宿敵カラスクイーンアテナに関しても、それほど興味がある訳ではないようね。 実のところ、内心はポグルスのカラスクイーンアテナ討伐任務がなければ、無視していたと思われる。 意外に勝手な連中ね。


「でも、そうなってくると結構厳しいですよね? なにせ、この国の主がいなくなったんですから?」

「その辺は心配無用。 もともとあの女はあってないようなモノ。 あの女や幹部連中がいなくなったところで、街や市民は平常通りに動き出す。 それに摂政もあるみたいだし、政治・経済には困らんらしい。」

「へぇ~、意外にちゃんとしてるのねぇ~」

「なるほど、そういう仕組みでしたかぁ…」

「じゃあ、あのドラゴンを食い止めた功績は大きいですね? 被害・損害さえでなければ、この国はまだまだ持つということですから…」

「あぁ…確かに……」

「そういうことになるな。 これから国を作る者にとっては、いい参考になるしな」

「そうですわね」

「「「……」」」

「…ふーん、まぁ…あた……私には関係ないよ」


 ヴァグドゥルスもアロトリスもゆくゆくは王国を持つ間柄、何かしらの共感を得る。 けれど…そもそも国作りに、全く興味を示さない魔族のトウが軽く受け流す。 一方の他の私たちは無言を貫く。


「それで…これからどうするつもりなのか?」

「私たちはまたアリスノヴァイン王国に戻るわ。 今回の事も王様に報告しないといけないしね。」

「なるほど、そうか…」

「へぇ~、まぁ…別に構わないけどね」

「あなたたちはどうするの?」

「俺はこの "森の宿屋" に残るつもりだ。 あの女がいなくなった…っていうなら、前よりもずっとやりやすくなるしな。」

「あぁ…まさにその通りだよ。 あの女がいなくなったお陰で、これで…あの『聖女』と心行くまで戦えるからね。 せいせいしたよ」

「あら、そうなのね? まぁ…せいぜい頑張りな」

「互角だから、一生勝負つかないんじゃないですか?」

「まぁ…それでもいいんじゃないんですか?」

「懲りないわね?」

「…ふん、余計なお世話だよ…」


 どうやらヴァグドゥルスと上位魔族トウは、このまま "バイオメドリグス" の国に残るつもりらしい。 まだこの国に用でもあるみたいね。 一方の私たちはこのまままたアリスノヴァイン王国に戻るわ。 夜中に抜け出してきたからね。 みんなが心配してるといけないわね。 ―――いや、まだ眠ってるかな?


「わかったわ。 だいたい事情は把握できたわ。 とりあえずはポグルスとカラスクイーンアテナの件は、一時棚上げということでいいかしら?」

「ああ、わかった」

「うん、わかったよ」

「「はい、判りました」」

「……」


 ……カラスクイーンアテナはともかく、ポグルスは存外な扱われ方だな。 まぁ…あたしには関係ないけどね…。


 こうして、ポグルスとカラスクイーンアテナの件はうやむやのまま、別れることになった。 私たちはドラゴン討伐ができないまま、朝になる前にアリスノヴァイン王国に戻ることにした。 またヴァグドゥルスは、そのまま "森の宿屋" に(とど)まり、あの上位魔族トウの方もまた、この国の何処(どこ)かに潜むことにした。


「さぁ…急いで帰るわよ!」

「「「はい!」」」


 私たちは、またアロトリスのドラゴンの背中の上に乗って、アリスノヴァイン王国へとんぼ返りである。 ドラゴンが瞬く間に飛翔して、そのまま一気にアリスノヴァイン王国へ一直線ね。 その後ろを巨大カマキリモンスター【デスキラー・シャ】も同じく飛翔して、あとをついていく。




   ━・ー●ー・━




 ここは某所にあったカラスクイーンアテナが隠れていた場所。


 とはいっても、もう既にカラスクイーンアテナはいない。 この場所に『聖女』カロテラが戻ってきた。 そのカロテラが周囲を見渡す。


「ちっ、やっぱりいない……」


 一応は捜してみたけど、やっぱり何処(どこ)にもいなかった。


「……うっ!?」


 すると…カロテラが突然頭を(かか)えて、少し苦しそうにしゃがみこむ。 しばらくしゃがみこんだまま、ピクリとも動かない。


 ……………

 ・・・・・・・・・


 そして、また何事もなかったように無言で立ち上がる。


「……そうか、あの女の呪縛・洗脳から…一時的に解除・解放されたのか……? 何故(なぜ)…あの女が私から…あまり離れなかったのか……そういうことだったのか……」


 まるで正気を取り戻したような顔つき、鋭い眼光で前方を(にら)みつける。


「この能力には……射程距離があったんだ。 あまりに本体と対象物(ターゲット)が離れすぎると、能力の効果が弱まるとみた……」


 そこでカロテラがニヤリと笑う。


「……ふふふ、散々…私を利用してきた報いを受けるといい。 あの女……カラスクイーンアテナめ……っ! ふふふ」


 やっぱり、マイカの予想していた通りに、カラスクイーンアテナの洗脳能力は、徐々に薄れていたようだ。 今のカロテラなら自由に動けるみたいだ。




 それは…まさに好都合だった。

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