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絶望老人が異世界転生をしたら、もう既に最強無双になっている?  作者: 賭博士郎C賢厳
B.バイオメドリグスの国編
103/120

96、顔を洗って出直してきなさい!

  ●【No.096】●



 ここは "バイオメドリグス" の国の "森の宿屋" にて。


 その "森の宿屋" の外の裏側の森に、受付の男ポグルスとカラスクイーンアテナ&ゲル=パンサード・オレンジと協力者ヴァグドゥルスがいる。 さらに勇者マイカも起きてきて、カラスクイーンアテナを待ち伏せしていた。 完全なる(きょ)()かれた形になる。 この予想外の出来事に、さすがのカラスクイーンアテナも相当焦っており、どんどん追い詰められてる。 そんな彼女が複雑そうな顔をする。


 ちなみにブルームスライム「アオ」は、仲間のポグルスと別れて、新たに勇者マイカの仲間になったようだ。


「くっ!」

「……」

「ガルルル…」


 タッタッタッ!


「っ!?」


 するとゲル=パンサード・オレンジがカラスクイーンアテナを見捨てて、そのまま森の奥へと走り出した。 ()()を見た彼女が驚愕する。 どうやらゲル=パンサード・オレンジは勇者マイカを見た途端に戦意喪失。 もはやカラスクイーンアテナと一緒にいても勝機はないと見たようだ。 あのマイカと戦うくらいなら、思いきって逃げ出した方がマシだと―――本能で察知した。


「ガァウウウゥ…」

「あっ!?」

「あらあら、遂に豹にも見捨てられたわね?」

「どうやら本当にアンタ一人になったようだな。 カラスクイーンアテナよ」

「これはこれはお気の毒に……」

「くっ!」


 カラスクイーンアテナ最大の屈辱。

 そんな彼女が苦しそうに顔を歪める。

 自慢の部下たちも洗脳した聖女も味方につけたモンスターたちも、誰もマイカを倒すことはできなかった。 最後の手段として、夜襲を仕掛けたのに、そこで待ち伏せされて孤立無援。 まさに四面楚歌の状態。 その上、スライムには裏切られて、豹には逃げられてしまう始末。 完全なる失敗・敗北である。 だけど、この後一体どうするつもりなのか?


「くっ、こんな……!」

「……」

「……」

「……あなたも退()きなさい……」

「えっ!?」

「今回も見逃してあげるわ。

 顔を洗って出直してきなさい!」

「な…何ぃっ!?」

「「……」」


 この緊迫した状況でマイカが言い放つ。

 さすがのカラスクイーンアテナも、この言葉に驚愕する。 同じ相手に二度も撤退するなど、カラスクイーンアテナにとっては初めての経験だ。 本来なら、あってはならないこと。 しかも、二回目は夜襲を仕掛けているのに……だ。 でも相手は…()()マイカである。 だから…ポグルスやヴァグドゥルスも冷静にいて、反論もせずに黙って聞いてる。


「私に退()け…だとっ!?」

「ええ、そうよ」

「そんな…バカなぁ……」

「あなた……こんな状況でまた勝機があると思っているの? あなたの能力は既に()()スライムたちから聞いているのよ。 残念だけど、あなたに勝ち目はないわよ」

「そ…そんなこと、やってみないと解らないわ!」

「なら、やってみる?」

「……」

「言っておくけど、もう手加減しないわよ。

 今…退()かないと……本気(マジ)で殺すわよ!」

「……ひぃっ!」(ゾクッ!

「「……」」


 思わず背筋が凍りつく。

 そんな彼女が顔を青ざめる。

 決して彼女(マイカ)が甘い訳ではない。

 そして、やると言ったら本気(ガチ)でやるタイプの勇者であることは、このカラスクイーンアテナでもよく認識していることだ。 この女……怒らすのは、非常に危険だと。 だからポグルスやヴァグドゥルスも余計なことには口を挟まず、ずっと静観しているのだ。 彼女(マイカ)の真の恐ろしさを理解しているだけに―――


「くっ、後で後悔するなよ!」

「ふふふ、()()()

「「……」」


 フッ!


 そう言って、顔を歪めながらカラスクイーンアテナも、その場から姿を()した。 まるで逃げるようにして―――。 そして…今回もまた、何もできずに退散した形となる。


 あのカラスクイーンアテナがいなくなると、すぐにポグルスとヴァグドゥルスがマイカに話しかける。


「いいのかい? 見逃して……」

「ええ、今回はあくまで情報収集のみよ。

 無益な争いはするつもりはないわ。」

「そうかい」

「しかし、それだとこれからも執拗にアンタのことを狙い続けるかもしれないぞ?」

「ええ、そうかもね。 でも…今はアリスノヴァイン王国に、この入手した情報を報告する方が先決よ。」

「そうかい」

「……」

「明日にはアリスノヴァイン王国に戻るつもりよ。 あなたたちはどうするつもりなの?」

「俺たちはここに残る」

「ああ、そうだな。 我々はここにいる」

「そう、わかったわ」


 そう言って、眠そうな顔をするマイカも "森の宿屋" に戻った。

 そのままシャニルたちが寝ている宿泊部屋まで戻って、またしても就寝する。 一方のポグルスとヴァグドゥルスの二人は、まだ宿屋の外の裏側にある森の中にいた。 二人共にまた新手の夜襲や賊の襲撃に備えて、しっかり見回りしているようだ。


 そんなポグルスとヴァグドゥルスが小声で静かに話す。


「どうやらここでカラスクイーンアテナを倒すことはしないようだな。」

「ああ、そうだな。 だが…あのカラスクイーンアテナはこれからもマイカをつけ狙うだろう。」

「ああ、そうだな。 だが…彼女も()()は理解しているはずだ。 むしろ、その覚悟があるのだろうな」

「なるほど、マイカとしてもカラスクイーンアテナが自分をつけ狙うなら、いつでも返り討ちにできるということか?」

「そういうことだ。 我々はこれまで通り、マイカのサポートに回るとするか?」

「ああ、わかったぜ。

 なにせ、あのカラスクイーンアテナを倒せるのは、今のところ勇者マイカ()()いないからな」

「ああ、その通りだな」


 そう言って、ポグルスとヴァグドゥルスの二人も、もうしばらく宿屋の周囲を見回りしてから、また "森の宿屋" へ戻った。 特に異常なしだった。 今回もなんとか強敵を撃退できた。 しかも、その強敵に精神的ダメージを与えるオマケつきで……だ。 なかなか抜け目ないチームプレイだった。



 こうして、この後も特に何事も起こらず、また夜が明けた。


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