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絶望老人が異世界転生をしたら、もう既に最強無双になっている?  作者: 賭博士郎C賢厳
B.バイオメドリグスの国編
102/120

95、《冬麗大作戦》

  ●【No.095】●



 ここは "バイオメドリグス" の国の "森の宿屋" にて。


 その "森の宿屋" の外の裏側に、受付の男ポグルスとカラスクイーンアテナ&ゲル=パンサード・オレンジと協力者ヴァグドゥルスがいる。 勇者マイカたちに夜襲を仕掛けるカラスクイーンアテナに対し、受付の男(ポグルス)協力者(ヴァグドゥルス)の二人が彼女の前後を挟み込む形で待ち伏せする。 彼女は特に驚いた様子は見せないけれど、かなり不機嫌な顔をする。 実際に(きょ)()かれた形になるからだ。


 そんな彼女もある疑問が生じた。


「なんで…私が()()に来ることを知っていた?」

「ああ、()()()()()()()教えてもらったからさ」

「?」


 すると(ポグルス)の左肩から、()()魔物(モンスター)がヒョコと現れた。


「お、お前は…ブルームスライムッ!?」

「やあ!」

「そうだ、あのブルームスライムだ。

 どうやらコイツ()()は…なんともなかったようだな。 俺のことも覚えていたみたいだぞ。」

「まさか…そんなバカなぁ…っ!?」

「このブルームスライムには、ある特殊な能力があるらしく、アンタの術にはかからなかったようだ。 俺も最初は疑ったけど、(あるじ)が夜襲をかけるのに、ワザワザ知らせる必要がないからな。 ()()()の能力を知ればわかるはずだ。」

「くっ、そんなことがぁ…っ!?」

「へっへっ、そういうことだよ」


 ブルームスライムも会話に交ざると、すぐに彼女が詰め寄る。


「何故、私を裏切った?」

「えぇーーっ、何言ってんの?

 いつアンタの手下になったと思ったの?

 ボクはそもそも精神なんてモンはないんだ。 恩を受けた人のことは絶対に忘れないよ。 他のモンスターと違ってね」

「……らしいな…」

「ちっ、やっぱりスライムに私の術は通用しないのか? それで騙された()()をして、私の夜襲をコイツらに知らせたのか?」

「へっへぇ~、そういうことだよぉ~♪」

「なるほど、確かに凄いな」


 得意気(とくいげ)なブルームスライムがドヤ顔になる。 スライムに精神がないというのも初耳だが、そもそも精神がなければ洗脳もされないということか? ()()()()()()凄いことだ。 つまり、ブルームスライム()()は彼女の洗脳が通用しなかったことになる。


 今度は協力者が会話に入り、ある疑問を彼女にぶつける。


「それにしてもよくもまあ、単身で攻めてきたな?」

「………」

「それはコイツの部下が勇者マイカたちに倒されて、今は再起不能だからだよ。 つまり、今の状態でマトモに動けるのは、()()()()()…」

「へっへぇ~、残念だったねぇ~♪」

「へぇ~、それはまた残念なことで…」

「だからと言って単身で夜襲とは……相当焦っているみたいだな。」

「………」

「まったくだ。

 ここまで来ると自殺行為だな」

「ふん、私には……もう時間がない……」

「えっ!?」


「……時間がない……?」

「ッ!?」


 森の奥からまた謎の声が聞こえて、彼女が驚いて声のした方向を見ると、そこにいたのは、なんと熟睡しているはずの勇者マイカだった。 その彼女の左肩には、ナビゲーション・スライムのミドリが乗っている。


「やあ、ミドリィ~♪」

「やあ、アオォ~♪」


 ミドリとブルームスライムは同族ということもあって説得されて、すぐに打ち解けた。 それはミドリのお陰で、スライム()()は勇者マイカを裏切らないということか? ちなみに「アオ」とは、ブルームスライムの名前。 マイカが名付け親。 もともとブルースライムが進化した姿なので、[ブルー=(アオ)]となる。


 彼女(マイカ)の姿を見て、カラスクイーンアテナが驚く。


「な…何故……っ!?」


 [何故…勇者マイカが、()()()()()?]―――と言葉にできない程の驚愕ぶり。


「ふふふ、驚いているようね。

 ()()()()()()()()()()


 すると(ポグルス)の左肩に乗っていたブルームスライムが、今度はマイカの右肩に飛び移った。 なんと彼女(マイカ)の右肩にブルームスライム。 左肩にナビゲーション・スライムが、それぞれ心地良さそうに乗っている。


「ま……まさか……っ!?」

「そう…そのまさかよ。 ()()()()私のスライムなのよ。 ()()()()()、ポグルスと出会う以前からの知り合いなのよ。」

「ッ!!?」

「ふふふ、正直…俺も驚いている。

 俺とは、とある大魔王の居城に近い塔のダンジョンで知り合ったけど、()()()()()()、そのスライムは勇者マイカと知り合っていた()()()。 でも…考えてみれば、()()()()…って話さ」

「確かに……な」

「なんだとっ!?」

「俺たちは()()()()()()()()にやって来た。

 勇者マイカは()()()()()()()100年以上前の存在。 まさに伝説の勇者…。 そのブルームスライムがどのぐらいの寿命があったのか、または分裂して子孫を遺していたのか、俺には解らないけど、()()()は勇者マイカのことは記憶していた。 俺たちと―――アンタと出会う以前から会っていたからだ。 だから…そのスライムは、アンタの術にはかからなかったんだよ。」

「ッ!!」

「………」

「それは一体どういうことだ? ポグルスよ」

「カラスクイーンアテナはブルームスライムと俺との関係()()知らない。 ()()()()()勇者マイカとブルームスライムが出会っていても、()()()()()()()を知るすべはない。」

「あっ、そうか!」

「ッ!!」

「そうだ、カラスクイーンアテナよ。

 アンタもまた……俺たちと同じ……()()()()()()存在なのだからな!」

「くっ!」

「なるほど、ようやく()けたぜ」

「なるほど、そういうことね」


[※基本、魔物(モンスター)はテイムされない限り、誰のモノでもない]


 なんとポグルスやヴァグドゥルスだけでなく、あのカラスクイーンアテナも実はこの時代の存在ではなく、未来から来たという事実を知る。 さすがはポグルスだ。 ある程度の情報は入手していたようだ。


 ここでいうカラスクイーンアテナが仕掛けた術とは、ポグルスと仲間モンスターとの絆を引き裂いて離反させることにある。 ブルームスライムやゲル=パンサード・オレンジたちも()()()で出会っていて、カラスクイーンアテナも()()()は知っていた。 しかし、それ以前にもし勇者マイカと出会っていたなら、それはカラスクイーンアテナにも知らない事実。 そしてブルームスライム()()彼女(マイカ)と、ポグルスやカラスクイーンアテナも知らないはるか昔に出会っていた。 だから…カラスクイーンアテナの術は、彼女(マイカ)には通用しなかったのだ。


 そこで(ポグルス)が一計を案じた。

 たとえ自分のことを忘れて裏切ったとしても、あのブルームスライム()()はマイカと出会っているならば、()()()()()()、彼女の方に()()()はず。 あのカラスクイーンアテナの術さえ遠く及ばないはるか昔に出会った…あの頃の関係に賭けたのだ。


 それこそが、ポグルスの奥の手の秘策《冬麗大作戦》なのだ。


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