94、待ち伏せ
●【No.094】●
ここは "バイオメドリグス" の国にある "森の宿屋" にて。 勇者マイカが呼んだ受付の男・ポグルスの案内のお陰で、無事に "森の宿屋" へ到着した。 深夜とはいえ、この宿屋はまだまだ予約可能であり、勇者マイカたち『ブラックファントム』の四人と、勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』の四人が、それぞれ一部屋ずつ宿泊することになった。 彼女たち八人は、それぞれの宿泊部屋にて、もう既に就寝している。
それと受付の男・ポグルスが森の宿屋の外の裏側に立っていた。
「………」
まるで彼が「何か」を待つように静かに立っていた。 もしかしたら奴が来るのを待っているのか?
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やがて暗い森の奥から一匹の獣が姿を現し、ポグルスの方に向かってくる。 それは彼にとっても、見覚えのある橙色の宝石の身体を持つ豹の形をした獣モンスターだった。
「そうか、やっぱり来たか…。
ゲル=パンサード・オレンジよ。」
「ガルル…」
今までの一連の流れで、あのゲル=パンサード・オレンジも彼の所に来ることは、容易に予想がついた。 だけど、そのゲル=パンサード・オレンジの横に、あのカラスクイーンアテナも一緒に来ていたことも、容易に想像がつく。 これまで散々自分の計画を邪魔してきた憎き男に会いに…。
「そうか、やっぱり現れたか…。
カラスクイーンアテナよ。」
「……」
ここで遂にポグルスとカラスクイーンアテナが対面・対峙する。 場所は森の宿屋の外の裏側の薄暗い森の中。 今夜は月も雲に隠れて、暗さが増している。 暗いながらも少しは見えてるようで、しばらく双方が無言で睨み合う形となる。
まさに「因縁」と言わざるを得ないだろう。
「何故、私の邪魔をする?」
ゲル=パンサード・オレンジの頭を撫でながら、彼に静かに質問を投げかける。
「ふっ、それは俺がお前を倒すために、この世界に転生・派遣されたからだ。」
「ならば、今ここで私がお前を殺せば、もう誰も邪魔が入らないことになるな。」
「それはお前が俺を殺せたらの話だ。」
「ガルルルゥゥ~」
「不死身のポグルス……女神によって与えられた任務を果たさぬうちは、何度でも黄泉還る不屈の魂の持ち主…」
「さすがに俺のこともよく知ってるようだな。
だがしかし、俺は常に一人。 仲間など、持った試しがない。 手段・方法は選ばず、最終的に敵を倒せば、それでいいのだ。」
「何故、そこまでする?」
「ふっ、それはまだ消滅したくないんでね…」
「もう充分なはずだ」
「いいや、まだだね。
もしかして、お前は俺を消滅させたいのか?」
「私の邪魔をする者は、この世に必要ない」
「なるほど、凄い偏見だな。
だが…深夜とはいえ、こんな所で戦闘をしたら、当然…マイカたちやこの国の住人たちも起きて見に来るぞ。」
「………」
「それで、これからどうするつもりなのか?」
「……」
「ガルルルゥゥ~」
「俺はお前と戦うつもりはない」
「何故…?」
「俺はお前と戦う大義名分がないからだ。
あとは他力本願で生きてきた。 ほとんどの事は他人の力で解決し、強敵を撃ち破ってきたからだ。」
「……」
「今回も勇者マイカにお前を倒してもらう。
今まで、そうやって任務をこなしてきたからな。」
「自分で殺らないのか?」
「ふふふ、お前に言われたくないな。
お前も他人のこと言えないよ。 重労働は部下にやらせたり、聖女にやらせたり、俺のかつての仲間にやらせたり、自分で何かやった覚えがあるのか?」
「……」
「ガルル…」
痛いところを突かれたからか、そこでまた彼女が黙ってしまう。 ゲル=パンサード・オレンジもかつての仲間に痛いところを突かれて、思わず下を向いてしまう。
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すると、そこからあの男も会話に参加する。
「あははは、確かにポグルスの言う通りだな」
「ッ!?」
あのカラスクイーンアテナの背後から、突如として謎の男の声がして、そこで彼女が後ろを振り向いてみると、なんとヴァグドーに顔がそっくりの謎の男が、彼女の背後にある木に寄り掛かって、いつの間にか現れてた。 彼もまた森の宿屋の従業員である。
「……あなたは……?」
「俺の名前はヴァグドゥルス。
いずれ国王になる男だ」
「……国王……?」
「確かに今は……しがない…ただの冒険者……。
だが…必ずのしあがって、一国の主になってみせるさ。」
「他人の国を奪って…か?」
「それもいいけど、やっぱり一から国作りをしてみたいと思わないかい? 可能なら誰にも頼らずにだ」
「……」
「相変わらずだな…ヴァグドゥルスよ。」
「ガルルルゥゥ~」
「いやいや、それほどでもないぜ。」
位置的には、ポグルスが森の宿屋の外の裏側に立ってる。 正面の少し離れた場所に、カラスクイーンアテナと横にゲル=パンサード・オレンジが立ってる。 その背後の少し離れた木に寄り掛かって、ヴァグドゥルスが立ってる状態。
ここで遂に協力者が登場しており、また話しかける。 (※協力者の今現在の詳細な情報については、またおいおい説明するつもりだ)
「それで……一体何しに来た?」
「おそらく勇者マイカたちの寝込みを襲うつもりなのだろう? 教会の時は、二回も失敗したからな。 しかも、今度は本人直々がこの宿屋にやって来る始末。」
「ガルル…」
「なるほど、そういうことか。
それにしてもご苦労なことだな」
「……」
「それで協力者を呼んだところだよ。 俺一人だけでは対処できないんでな。 ちなみに彼も俺と同じ境遇の持ち主だよ」
「ヨロシク」
「くっ!」
「ふふふ、それで一体どうするつもりだ?」
「今ここで俺たちを倒して、勇者マイカたちにとどめを刺すつもりか?」
「うっ!」
「ガルルルゥゥ~」
「あははは、俺たちは別に今ここであんたを倒すつもりはないぜ。」
「まぁな、三回目の失敗になるけどな」
「ちっ!」
遂にカラスクイーンアテナが直々に勇者マイカたちに来襲しに来た。 だがしかし、事前にポグルスが森の宿屋の外で待ち構えており、応援に来た協力者も背後から待ち伏せしていた。 この後、本当にカラスクイーンアテナは、一体どうするつもりなんだ?
なんと大の男二人がカラスクイーンアテナのことをあおり続けてる。
これも何かの作戦か?