93、これで任務終了か?
●【No.093】●
翌朝の "バイオメドリグス" の国の "女尊男卑の町" の教会内にある礼拝堂にて。 勇者マイカたち『ブラックファントム』と勇者マトオたち『セックス・ハーレム・ナイトメア』の面々が起き始めて起床する。 相変わらず教会内部に争った形跡はない。 勿論、勇者マイカたち八人も無事である。 昨夜の戦闘の形跡も見当たらないけど、一体何故なんだ?
「………」
起きて早々、マイカが違和感に気づく。
昨夜また、この教会の礼拝堂で何かあったのか? しかし、それが一体何なのか、よく解らない。 周囲を見渡すけど、やっぱり何もない。
「………」
今度はマトオも違和感に気づく。
彼は昨夜の出来事をすっかり忘れている。
この教会の礼拝堂で何かあったのか、何も思い出せない。 金縛りにあったことすら忘れている。 アレは単なる夢だったのか? 彼も周囲を見渡すけれど、やっぱり何もない。
「どうされましたか? マイカさん」
「どうしたの? マトオ」
「いいえ、何でもないわ…」
「いや、何でもないよ…」
「「「「?」」」」
それを見て、不審に思ったシャニルやハーリルたちがマイカやマトオに質問するけど、そもそも違和感があるだけで、具体的な「何か」が解らない二人には、こう答える以外にないのだ。
それよりも―――
「これからどうされますか?」
「このまま街へ繰り出しますか?」
「ええ、そうね。
今日も聖女カロテラとカラスクイーンアテナについて情報収集するわよ。」
「はい、判りました。
今日は街の西側で情報収集ですね?」
「はい、そうですね。
今日で残り半分の情報収集ですね?」
「ええ、そうよ。
これで、この街での情報収集も終わりにしたいものよね?」
「はい、そうですね。」
「はい、判りました。」
「これで、あのカラスクイーンアテナについて、少しでも何かしらの情報が入手できればいいんだけどね?」
「はい、そうですよね?」
「何かいい情報が入手できればいいですけどね?」
「ええ、そうね。
とりあえずは聞くだけ聞いてみましょうか。」
「「「「はい」」」」
「………」
「さあ、今日も手分けして情報収集作業よ。
マトオは今日も教会に残って待っててね」
「はい、判りました。 マイカさん」
こうして今日もマトオだけ教会に残して、あとのマイカたち七人が街に出て、手分けして住人たちに聖女カロテラとカラスクイーンアテナのことについて、何かいい情報があるか聞き出す。
私たちが街に出て、住人たちから色んな話が聞けた。
もっとも、そのほとんどが聖女カロテラとカラスクイーンアテナの称賛と敬意の言葉だった。 その中でも興味深い話も聞けた。 実はカラスクイーンアテナが一体何者なのか、ほとんどの住人は知らなかった。 自分たちの主たる彼女の事をほとんどの人が何も知らされていない形になる。 次に聖女カロテラの名前は聞いたことはあるけれど、実はほとんどの人が聖女の姿を見たことがないらしい。 また夜はほとんど外出しないので、あの聖女カロテラと上位魔族トウが深夜交戦しているところも、ほとんどの住人が見たことないらしい。 それから街の西側でも、こんな話が聞けた。 ここでもカラスクイーンアテナは、実は "人間ではないんじゃないか?" と。 これはかなり貴重でツッコんだ発言だったわね。 まあ…私も同意するけどね。 いずれにしても私が知りたい情報が入手できたわね。
夕方頃になると、私たちはまた教会へ戻った。
教会では、マトオが静かに待っていた。
そこで、みんなが集めた話を総合すると、
ほとんどの住人が何も知らない聖女カロテラとカラスクイーンアテナを称賛・尊敬していたことになる。 しかも、彼女たちがこの国で一体何をしたのか、どれほどの功績・貢献度があったのか、よく解らないみたい。 まあ…判っていたけどね。 もしかしたら…もう既に―――
「―――ってなワケよ…」
「なるほど、そうでしたか。
よく判りました。」
「結局、同じでしたね?」
「残念でしたけど、有意義でしたね?」
「ええ、この街では、この情報は大変貴重よ。
街の住人は、あの二人のことは知っているけど、詳細は何も知らない。 ただ知ってるだけ。 それだけわかれば十分よ」
「なるほど、確かにそうですね。」
「「「……」」」
「今回はこんなもんね」
今日一日で、この街の残り半分の住人に聞き出すことはできたわね。 昨日は街の東側、今日は街の西側ってところね? さて、これで…この街での情報収集は終わりね。
そこで…みんなに聞いてみた。
「今日も街の西側を聞いてみたけれど、今夜には森の宿屋に戻ろうかしら?」
「はい、そうですね」
「はい、判りました。」
「一度、森の宿屋に戻りましょう。
そろそろふかふかのベッドで眠りたいです」
「俺もそう思います。」
「それじゃあ、決まりね。
森の宿屋の受付、あのポグルスを呼びましょうか。」
「はい、判りました。 マイカさん」
「「「「はい!」」」」
こうして私たちは二日間、聖女カロテラとカラスクイーンアテナのことについて、この街での聞き込みを終了した。 今夜にでも森の宿屋に戻るため、またポグルスを呼び寄せることにした。 それにしても神父もシスターもいない。 誰も教会を訪れない……この教会は異常だったわね。
その日の深夜のこと。
マイカから呼び出しを喰らった俺が、急いで "森の宿屋" から "女尊男卑の町" にある教会まで素早く向かっていた。 またいつものように教会の前まで到着すると、その教会の扉の前で、彼女たち八人が寝ずに立って待っていた。
「来たわね。 ポグルス」
「待たせたね、マイカ。
この街での用事は終えたのかい?」
「ええ、とりあえず終了よ。
また森の宿屋に宿泊させてもらうわ。 どうもこの教会、薄気味悪くてね」
「「「……」」」
「実は俺もそう感じてました。」
「そうかい、それじゃあ戻ろうか」
「ヨロシクお願いね」
こうして俺の案内のもと、彼女たちは深夜のうちに、この街の出口から出て、また森を通り抜けていき、この街の入口を通過して、そのまま夜道を走って森の宿屋へ戻った。