転生しても三角関係は成立するか?
わたしの最初の記憶、それは一目惚れでもあった。
隣の家のおにいちゃんが泣いてる姿。
当時2歳のわたしからすれば、17歳の大きな子供という不思議な存在だったおにいちゃん。
普通わたし達みたく泣かないし暴れたりなんかしない半分大人。
だからそんな存在が泣いているなんて、子供心に怖くもあった。
今ならわかる、お母さんが亡くなって悲しかったんだと。
でも記憶に残る姿の印象は、儚くて強い姿、悲しい光景。
前を向き、零れ落ちる涙をそのまま無視する強い眼差し。
以来涙なんて見てない。
高校から帰るのが遅くなった最寄り駅でおにいちゃんと出会う。
一目惚れのおにいちゃんはもう32歳になっていた。
イケメンだと思うし家事もこなすしでモテそうなんだけどなぁ、まだ独身。
でも以前恋人がいたのは知っている…割と嫉妬して困らせたりしたのは、忘れたい黒歴史だ。
「遅い帰りだな」
何気ない一言、でも直接的に心配してるんだよーって感じの声や口調じゃないけど、ホッとする声。
なんでだろ?慣れ親しんでるからかな?とにかくわたしを心配してるんだなって感じるしオレがいるから安心だとか色々な思惑が込められていそうな程イイ声だ。そう聞こえちゃうんだよね。
それにココだけの話だけどね ちょっと耳に残るカンジがくすぐったい。
「おにいちゃんの声ってエロイね」
吹き出された。
「おまっ!何言ってんだ?」
「えーと褒めた?」
「知らん人が聞いたら、オレが変態痴漢みたいじゃないか。やめろよな」
素直な感想だったんだけどなぁ、面白半分だけど。それに暗い夜道におにいちゃんがいるのは安心できて嬉しいんだよ。
可愛げだけなんて見せない、こうなっちゃったけど。
というか男性って微妙に意識しちゃうお年頃なんです、いっそ反抗期なんです。
「おっさんが護衛してやるから帰るぞ」
一瞬肩に手を回され、促されるようなカタチで歩き始める。
照れてなんかやらない。
こういうの気になり始めた、おにいちゃんが男みたいに感じ始めた。
それにみんながおにいちゃんはイイオトコって言うから、益々困っちゃうんだ、特に最近。前は誇らしかっただけなのに、なんか生々しくてヘン。
やーだなーもぉ。
でもTVのとある人気グループと然程年齢変わらないしアリなのかな?
大人になったら年齢より見た目で、というかみんな同じ男で…いわゆる恋愛対象みたいになっちゃうのかな。
高校っていう同い年しかいない狭い世界しか知らないと、不思議。
歳の差婚とかたまに聞くし、世の中に出たら変わるのかな?
わたしも女に、恋愛対象に。
そういえばあの時の…一目惚れしたおにいちゃんの年齢になっちゃったんだなわたし。
でも自称一目惚れ、これが初恋かなんてわからない、これ本音。でも気にはなる。
それでも大好きなおにいちゃん。
というかおにいちゃんは偉い人だ。いつも頑張っててでもなんでもできるスゴイ人。
頭もイイんだよね、イイ大学を出てヨサゲでオシャレな会社に行ってる。
それに父、弟の3人暮らしだけど、いつも家の事優先で色々頑張ってきてる。料理も上手い。
…同じように出来るかなぁ?無理っぽい。
「おにいちゃん女子力高いね」
「こ、今度は何をイキナリ」
「豚の角煮食べたいな。今度のお休みの時作ってよ」
「あーまぁ料理なんて慣れだぞ。女子力なんて必要に迫られれば身につくぞ頑張れ」
「頑張ってるもん、上手いかどうかは別にしてだけど」
「じゃあ、おまえの手料理食わせてくれよ」
おおお、ドキッとするね。乙女ゲーに出てくるイケメンのセリフみたいだ?
「じゃあわたし茹で卵作るから、おにいちゃんは豚の角煮とトンカツをお願いします」
「なんかズルくね?」
笑いながら頭を撫でられた。
「やー、もう崩れる」
恥ずかしいから、嫌がる素振り。
「隣家の女の子ももう17歳ですよ、訴えるよ、お金とるよ」
女なら簡単にこんなことしないよね、妹分だから?拗ねて脅迫。
「それは困るな。兄の愛だよ」
笑う顔は可愛いいけど、ストレートに妹と言われると悲しくなる。
もう17歳だよ?女になってきてるんだよ。
だけどそれもしょうがないか、赤ちゃんの頃から知られてるもん。
兄妹みたいに接してきた、違う家の住人て感じのしないお隣さん。それになにしろ同い年の弟いるしで一緒くた。
兄か…。
なんだかんだ考えたりしちゃうけど、本気でおにいちゃんの事を異性としてみてるのか…実はよくわからない。
なにしろ一目惚れったって2歳で、それに15歳差。
小さい頃からベッタリ甘えてきたし、彼女さんには嫉妬したりもしたけど、隣りにいるのが当たり前過ぎてピンとこない。
だから…一目惚れはしたことあるけど、初恋はまだな状態なのです?
一応モテたコトはある、でも交際はない。その他もないよ。
第一、おにいちゃんを基準にしてたら同級生男子って子供なんだもの。
そりゃ30歳の大人と一緒にしちゃ駄目だけどさ、一緒にいて楽しい時はあってもですねコレジャナイ感があるとです。
それに引き換え顔良し性格も尊敬できるし、たまに振る舞い方とかスマートだなぁってドキドキしちゃうし、職業も良いトコにお勤め…なぜ彼女がいないか不思議物件。
「今流行りの瑕疵物件?」
「なにがだよ?」
適当に会話をしていたのだが、考えてることが突然声に出てしまった。
ちなみに現在の会話は、角煮からはじまり美味しい居酒屋メニューってどんなのあるかをしていた。
「確かにそういうとこに出店してる店もあるんだろうなぁ」
それでもキチンと答えてくれるとはイイ人だ。
そこに第三者の声が入る。
「んでいつオレ達を連れてってくれるの?」
「未成年じゃなくなったらな」
「あれ?弟いたの?」
「おい、妹。ひどくねぇーか」
どうやらいつのまにかおにいちゃんの弟も合流していたらしい。
まぁいいか。
「オレも部活終わりで帰宅中なんだけどな、扱い酷くない?チャリ通だから追いついたんだよ」
弟は水泳部だった、割と大会に出たりと頑張ってる。
わたしは帰宅部ね、今日は色々あって遅くなったのだ。
それにしてもこの3人で歩いて帰るなんて久しぶりだ。
弟も家事とか手伝ってる…けど実質わたしがしてるから普段は下校時間合わないんだよね。
実を言うと弟の代わりに家事を買って出てる、というのも弟は部活に興味ありそうだったし期待というか勧誘されてたから。
最初は帰宅が遅くなるからと渋ってたんだけど、協力したんだよね。なにしろわたし部活興味なかったし。
その貢献もあり、弟は今や大会常連のモテ男になりやがりました。
そのせいで結構色々あって迷惑もかけられた、とんだ災難なこともあったねぇ。
そういや2人の顔は似ててイケメンだ、両手に花だね。地味に生きてるからちょっとウフフ状態。
たまに他人の視線を感じるから優越感出ちゃう。
「今度の大会日曜だから応援に来てよ」
ん?何の話だ?会話からトリップしてた。
「おまえが応援してくれたら勝てる気がする、いや勝つ。おまえにオレが優勝するトコロを見せたい」
「いいよ、がんばれ」
そりゃ姉弟同然の幼なじみなんだから応援くらいするさー。
ん?なんか空気が重い。
おにいちゃんは笑いを堪えてる顔?弟はちょっと怒ってる?
「とにかく来いよ!」
そういうと弟はチャリで先に帰っていった。
「せっかくだから一緒に帰ればいいのに」
「アイツも年頃なのさ」
「なにが?ああ!部活帰りだしお腹空いたのかな?」
「…日曜は会場まで連れて行こうか?」
side弟
アイツははぐらかす。オレのせいで迷惑かけられたから関わりたくないんだろう。
オレがフッタ女のせいでイジメられとはいかないまでも、相当嫌な目に遭わせちまったコトがある。
それ以来オレも家で会えるから、学校とか外では極力接しないようにしてる。
でも今回はいい加減アイツと付き合いたいから、公衆の面前で告ろうと思って大会に誘ったんだ。
ズルイけど勝算はある、フッたらオレが可哀想だからとフラないハズだ。
それに最近しつこく言い寄る野郎に困っているのを知ってるから、カモフラージュでいいからオレと付き合えと言ったら断らないはずだ。
…情けないけどしょうがないじゃん、だってずっと一緒に育った魅力的な女の子なんだぜ?逃したくないし他の奴にとられたくない。
オレだってモテる、けどアイツ以外はいらない。
アイツだってモテる、でもみんな断ってきてる。
脈あるよな?アイツが男というか恋愛に興味がないのは知ってる。強いて言えば兄貴がライバルだけどもう三十路越えたオッサンだぜ?オレを選ぶだろ、選んで欲しい。
正直この関係が変わるかもって考えると躊躇だってある、でも欲しいんだ。
顔かわいいし、オッパイ大きい…たまたま見ちまったんだよ。隣人幼なじみハプニングでオレの思春期がドキドキだよ。
それはともかく言い寄る連中を見る度に殴りたくなる、もちろん普段から牽制はしてるんだけどさ。
ここんとこオレは大会よりもソッチにソワソワしてた。
でも本番はオレ優勝したら告白するんだと頑張った。
side神
災難だね。
弟と妹分を庇って死んだ兄。
結局二人共死んじゃうんだけどねぇ。
僕は君達を選ぶよ。
sideわたし
気が付いたら何もない空間で走馬灯を見せられていた、何周も。
何周もしてたら飽きるというか苦痛になってきたので、乙女ゲー的視点とかしてたんだけど。
兄も弟も選び難い?
上から〜でごめんよ、いいじゃんもう死んだんだし遊んでもいいよね。
誰かにというわけでもないけど謝る。
好きって難しいね。
おにいちゃん…考える回数でいったらダントツだ…夜家でね。
大きな手で撫でられたこと思い出すとドキドキする、手を抱きしめたくなる。手と腕だけでいいんで絡むように抱きしめたい。
でもおにいちゃんには憧れもあるのかなぁ?しょせん大人と子供だもん恋って出来たのかな?
ビジョンが浮かばない。
弟はリアルに同級生だ、身近だ。
でも最近よくわからない、だって男に成長したってカンジ?それもあってカッコよいからモテる、そのせいで嫉妬もしちゃうけどさ。
自分の彼氏でもないのに嫉妬ってヤダなって思って、遠ざかってた。でもたまに学校で視界に入るとホンワカする。
わたしどっちが好きだったんだろう?
弟に告白されて付き合う流れに持ってかれた時、思い浮かんだのは兄のことだった。
弟と付き合ってもいいけど、兄にはバレたくないとか知られたくないとか。
というかそもそも兄に恋愛対象で見られてるわけ無いか、アッハッハ。
はぁ。
順当なのかなぁ。
そんな考えの自分が嫌だけど、これで死んだのはある意味よかった?いいやよくない!
恋愛だけが人生じゃないし、色々したかったなぁ。
「それなら異世界転生しときます?」
「え!」
突然の声にビックリしたけど、嬉しさ満載。というか実際にあるんだこんなの。
「あなたは…神ですか?」
「そうですよ〜わたし達の実験に付き合い異世界に行ってみませんか?」
「実験?」
神様の消失した世界があり、そこに4人の別の神様が転生者を送り実験をするのだという。
そしてこの神様は縁の強い複数人を送り、どう生きるのかを見届けたいとのことだった。
「わたしに縁の強いということは…おにいちゃんと弟ですか?」
「そう。3人を転生させて出会ってもらおっかなぁと。条件としては君がどちらかを選び伴侶とすること」
「結局選ぶの?」
悩ましい。
「嫌かい?そもそもどちらからも選ばれないかもよ?」
「あ…」
「両方選んでもいいけど」
「あー!それはいいかも??いいの?」
「神が許す」
爆笑。
この後、神は条件を果たせなかった時や期限を過ぎたら、どうなるかを話し忘れました。
side兄
「二人共死んでしまったのか。結局守れなかったのか…」
「そう落胆しなくても立派でしたよ。それにアレはしょうがない状況でした。おにいさんらしく振る舞えただけでも弟さんや妹さんへの絆は強まったと思います」
「ありがとうございます、神様にそう言って頂けたら成仏できます」
「いえいえ成仏しなくても、次の人生で絆を深めたらいいじゃないですか?」
この後、兄は人間として生まれるも、呪いで人外になる。
side弟
「また会える?」
「ええ、ただし敵国のお姫様として。おにいさんとも他人同士ですけどね」
「な!?」
「前世にこだわらず生きてもいいんですよ?恵まれた立場にお生まれになるのですから」
「オレはアイツに会えるからとッ!」
「頑張ればいいだけのことですよ。いってらっしゃい」
この神の実験テーマ、絆はどの程度有効か?なのです。
さてこいつらの記憶はどうしよう?
あった方がいいでしょうけど、最初からあるとおもしろくないでしょうしねぇ。あはは。
読んでくださりありがとうございました。
同じ世界観で連載してます。
「異世界憑依者は異世界転生者を護れるか」
http://ncode.syosetu.com/n0602ed/
いつかこの人達も出てくることでしょう。
よろしければご覧ください
現実世界を舞台にした話を書くのは意図的に避けたかったので、端折りまくったので中途半端な短編で申し訳ない気分。
自分PC環境で3ページ内5千字以内でまとめてみたかったんですよ。