第8話〜ミーハー女〜
今回、性的用語がかなり含まれてます・・・(汗)
「勉強は順調に進んでるか?神楽。」
それは、梅雨が明けた頃・・・大輝は、担任の富岡と定期的に行っている対談に出かけた。
富岡は男教師。いつもジャージに笛をぶらさげている・・・という、妻子持ちの体育会系男。
ちなみにかなりの美形で、妻子持ち関係ナシに女生徒にかなりモテているとの噂。
「はい。分かんないところは美・・・いや、妹に教えてもらってんで。」
『美輝』と呼ぶのは、さすがの大輝も躊躇ったのであろう。
妹ではなく、二従兄妹と言う方が正しいのだが・・・あまりもの血縁が薄く、変な誤解を招いてしまう。
そんなことを充分熟知していた彼は・・・その誤解の世界に美輝を巻き込みたくなかったのだろう。
「ほぅ。妹・・・神楽に妹がいたのか?」
富岡は、疑惑を抱いたように眉を顰めた。
相変わらず勘のいい富岡の様子に、大輝は内心後退ったが・・・
「・・・いえ、正しく言えば幼馴染・・・ですかね?近所に住んでる・・・アハハ・・・」
「ふ〜ん。なるほど。」
納得したようにその熱血教師は眉間の皺を伸ばし、微笑む。
俗に言う、王子スマイル・・・というものか。
「ソイツ、1歳ぐらい年下なんですけど、スンゲェ頭脳明晰で・・・もう大学のセンター試験軽々通る的な・・・」
無論、美輝は大学のセンター試験軽々通るようなスーパー頭脳明晰ではない。
バカでも、天才でもない・・・普通の頭脳の持ち主。
美輝より、大輝の方が頭脳は劣る。
・・・そういうことは、美輝も充分知っている。
だけど、決して大輝をばかにしたりはしない。(大輝は完璧にばかにしているが)
そんなところも、大輝が惚れている最大の要因でもあるだろう。
「ほぉ。凄いな。・・・神楽、その幼馴染のこと凄く好きなんだな。」
富岡が言ったその語尾は、ゴニョゴニョと空気に紛れ込んでしまった。
「・・・は?何て言いました?」
聴力が悪い大輝には、勿論その言葉は聞こえていない。
「いや、なんでもない・・・」
富岡がそう言うと、いきなり大輝の肩をばかにデカい手で掴んだ。
60をゆうに超す握力に、大輝は一瞬顔を歪めさせた。
「神楽。通信教育でいくら暇だといえ・・・非行に走ったらダメだぞ?お前も大人びているとはいえ、健全な高校生だ。どうしても“ヤりたい”というなら、避妊はちゃんとしろよ?ちゃんとしないと、神楽にもその幼馴染にも負担がかか・・・」
富岡は、「ヤりたい」の部分を強調して熱烈と語る。
流石の大輝も、だんだん富岡がウザったく感じてきた。
「何故そんなシビアな世界な入るんですか?大体、何をヤるんですか?」
大輝は、根本的な疑問を富岡に問い質した。
「おぉっ!これこそ健全な男子高校生の答え!よしっ!神楽なら安心できるぞっ!最近、ウチのクラスでもドウテイ卒業したヤツ多くてなぁ〜!困ってるんだよ!ハッハッハッ!」
―――道程卒業したヤツ多くて、何故困る!?そりゃあ、道程を卒業したら将来的に困るけど・・・
・・・という、文字の思い違いが故に阿呆な疑問を抱く大輝。
彼の阿呆疑問お構いなしにバンバン彼の肩を叩く富岡。
これこそまさに、磁石。プラスマイナス。つまりは正反対だ。
「は、はぁ・・・」
「よし!今日は終わりだっ!いつまでも健全にいろよっ!」
そう言い残し、富岡は職員用出口の付近まで行った。
だが、踵を返して
「もしするとしたら・・・本気でゴムつけろよ?」
「だから何をするんですか・・・」
大体なんだ、ゴムって。女子が髪をまとめるために使うあれか?
またもや、こんな阿呆な疑問を抱く大輝。
・・・やはり、女性経験が無の健全な男子高校生には、性行為用語は伝わらないらしい。
性行為に纏わるキーワードはただひとつ。ラブホテルだけ。
何故知ったかというと・・・中学の時の修学旅行時、バスがラブホの横を通り過ぎた際、男子生徒が大輝に無理矢理ラブホの原理を強いれさせたためだ。
嫌でも覚えさせられた・・・という大輝本人が呟く証言から、その男子生徒の強烈さが分かるだろう。
「よしよし。神楽は健全。完璧にな。じゃっ」
完全に、富岡の姿が消えた頃。
大輝は首を少し傾げて、生徒用出口に足を進めた。
渦めくのは、ゴム。輪ゴムと、ヘアゴムと、ゴム手袋。
―――やっぱり謎だ。富岡先生。
謎めいている人物は富岡ではなく、自分自身であることにも気づかず、大輝は散々富岡を変人扱いした。
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大輝は、運動場へ出た。
休日だからか、それとも梅雨明けでまだ地面が湿っているのか・・・部活動はどこもしていない。
茶色い土が、視界いっぱいに広がるだけだった。
「・・・あ。」
そんな運動場の片隅に、ポツンと小さく丸まっているボール。
サッカーボールだ。
大輝は、条件反射的にサッカーボールのところへ駆け寄る。
「・・・リフティング・・・」
そう呟き、彼は膝にボールを乗せて、リズミカルにボールを上げた。
ボールは、一定の音を立てて大輝の膝の上で跳ねる。
しばらく、それを繰り返していると・・・
「・・・大輝様・・・?」
高く細い、女の声がした。
振り返ると・・・美輝と肩を並べるくらいの美少女が佇んでいた。
「・・・誰?」
大輝は、眉を顰めてその女を見る。
「相楽美久ですぅ〜同中だったぁ〜」
ぶりっ子口調でそう言いながら、相楽美久と名乗った少女はじりじりと大輝に近づく。
ああ、美輝に名字名前似ているミーハー女がいたっけ・・・と、大輝は1人、思い出していた。
「大輝様とお逢いできるなんてぇ〜美久カンゲキィ〜」
美久は、大輝の耳に唇を当てて甘い声でそう囁く。
大輝は美久の声にウザそうに顔を歪めながら、ボールをその場に落とした。
きっと彼は、中学の時の超多忙な日々を思い起こしたのだろう。
「別に。お前に会いに来たわけじゃない。じゃ。」
大輝はそう冷たく言い放つと、その場を去ろうとした。
が・・・
「待ってぇ〜大輝様ぁ〜」
その肩を、美久が掴んだ。
「再会の記念にぃ〜私と付き合いませんかぁ〜?」
そして、あまりもの大胆な発言を漏らす。
大輝は一瞬顔を顰めさせたが
「冗談じゃない。お前なんかと付き合うんだったら、雌豚と付き合う方が全然マシだ。」
侮辱に近い発言をし、肩にかかる手をどける。
「・・・まぁヒド〜い・・・そんなことしていいのぉ〜?」
「ウゼェからだろ。」
とどめの一言を下し、大輝は再度去ろうとした・・・が。
次の一言で、彼の足は自然と止まった。
「・・・神楽美輝・・・」
彼女は、今までにない低い声でその名を呟く。
「・・・え?」
彼は素っ頓狂な声をあげて、振り返る。
「私と付き合わないと・・・“同棲”してるってこと、バラすよぉ〜?」
「お前、なんでそのこと・・・」
「神楽大輝ファンクラブの代表だものぉ〜そんなこと知るのは常識だよぉ〜」
クスッと笑う美久の表情に・・・大輝の身の毛がよだつ。
「さぁ、どうする?私と付き合うか、同棲のことバラして神楽美輝を悲しませるか・・・」
「・・・同棲じゃない。同居だ。」
「どっちも同じじゃない。さぁ、どうする・・・?」
・・・運動場のど真ん中・・・
大輝は、2つの選択肢に、迷った。
美輝を悲しませるか、自分を犠牲にするか・・・
自分の、日数を増すごとに気持ちが大きく膨れてゆく比例のグラフ。
美輝の、日数を増すごとに大輝の想いから遠ざかる(ような気がする)反比例のグラフ。
どっちを取るか・・・すぐには、決着がつかない。
『比例×反比例』裏コント〜リフティングギネス〜
作者「さて、今日は前回に引き続き大輝君にお越しいただきました!」
大輝「さっさとトーク終わらせろ。ダリィし。」
作者「・・・(このダル男め。)ずばり!リフティングの最高記録は!?」
大輝「千回以上。数えるのダルくなったからそれ以降は数えてねぇけど。」
作者「・・・へ〜え。」
大輝「んだよ、その薄い反応。」
作者「だってギネスには18003回らしいもん。あんまスゴいって思えな・・・」
大輝「黙れ。」
・・・ということで、リフティングのギネス記録は18003回らしいです。
凄いですねぇ・・・私なんか、1回しただけでも膝から滑り落ちる・・・(大のサッカー音痴な私^^;)




