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第15話〜相違からの・・・〜

―――相違からの、言葉だった。

―――相違からの、衝動だった。


2人が同時にそう思った時、唇が離れた。


「・・・え?」


10秒前後あったが、一瞬の出来事としか捉えようがなく、美輝は間抜けた言葉を出す。

・・・いや、正確には間抜けた「フリ」をした言葉。

自分をじっと捉えている大輝の目。逸らすにも・・・逸らし様がない。逸らせれない。


その目が・・・何かを、訴えているかのように見えたから。

その訴えを、何とかして感じ取りたかったから。


数秒見つめあった後、大輝は美輝の背中に腕を回し、その小さい体を折れるかと思うほどの力で抱き締める。

その力は・・・あの、梅雨の日の出来事。それを再現したような、もしくはそれよりも大きい力。


「・・・ワリィ。俺、どーかしてる・・・」


抱き締めたまま、自嘲を含めたような言葉を発する大輝。


そう。


『彼女を傷つけたくない。』

『傷つかせても、自分を見て欲しい。』


相違する、ふたつの心の叫びが入り混じった声。


相違からの、何かを訴えかけるかのようなキス。


相違からの衝動。


ただ単に、自分と美久が“そうなっている”と疑われているのが嫌だ、という、誰にだって向けられる感情も、彼の中にあった。

だけど・・・それ以上に、美輝が・・・どこかで、悲しい表情をしているのかと思った。


それが、思い込みであろうと、なかろうと・・・衝動に勝ることは、なくて。


―――勝れない俺が・・・ダサい。


だけど、それが本意だった。そのふたつの心の叫びが。

ダサかろうと、どうだろうと・・・自分に嘘は、つけない。


「ゴメン、私も・・・めっちゃ思ってないことばっか言ったし・・・」


抱き締められて、上手く発声ができないのか・・・くぐもった声で、一生懸命声を出す美輝。


『嫉妬』と『羞恥心』


2つを隠す為の・・・言葉。


類似からの言葉。


『彼の幸せなら、彼と美久を羨んであげたい。』

『彼の幸せであろうと、やはり美久が恨めしい。』


相違する、“羨”と“恨”。


相違からの、強がり言葉。


相違からの言葉。


改めてよく見たら、この人は大輝とお似合いだと思う。

でも・・・そのことを聞いている大輝は・・・どこか、悲しそうな顔をしていた。


―――そんなことすら気付けれなかった私が・・・情けない。


気づけなかった。“美久を消したい”というどす黒い衝動を抑えるため、精一杯だった。

精一杯だった・・・はずなのに。


今、この現状に、素直に心臓は反応している。

つまりは・・・彼女の心臓は、鼓動を、どんどん増している。


増しすぎて・・・誰よりも今、近くにいる大輝の想いにさえ、気づけなかった。


数秒の沈黙を経て、大輝が大きな溜息をしたのが美輝にも分かった。


「ほんっと、餓鬼ガキだな、俺・・・」


そう言いながら、そっと美輝の体を離す。

美輝はおずおずと大輝を上目遣いで見た。

そんな彼女の目を見つめ、彼は再び自嘲を含めた笑みを浮かべた。


「ゴメンな、いきなりあんなことして―――気色悪かったろ?」


『キショクワルカッタロ?』


すんなりと、何食わぬ声で言ったこの彼の言葉が・・・美輝の頭の中を、黒い渦を巻いて澱み合う。

言葉が、渦に飲み込まれる寸前に・・・その言葉が、叫んでた。


『二従兄妹』っていう、現実を。変え難い、現実を。受け止めならなきゃならない、現実を。


そうだった・・・大輝は、二従兄妹なのだ。身内でもなければ、全くの赤の他人でもない。そんな、曖昧な位置にいる。

いや、曖昧な位置にいたから・・・“だからこそ”なのか・・・届きそうでトドカナイ、そんな彼にいつしか恋をしていたのだ。


それも、現実。


もう、融通利かない・・・制御が利かない。


利かないからこそ・・・今、溢れようとしている。


「・・・そんな訳、ないよ・・・」


美輝は、そんな否定の言葉を、目を逸らしながら呟いた。


「・・・なんで?」


同様、彼も目を逸らしながら・・・でもしっかりと問い質す。

口調は冷静であっても・・・心臓は、今にも破裂しそうだった。


彼女の一言が、彼女自身の、“自分自身”の気持ちを全てを物語っていたようだったから。


物語ってしまえば・・・結論は、2人次第。


「だって、私・・・」


・・・美輝は、そこで口を噤んでしまった。


言ったら・・・どうなる?

元の関係は・・・どうなる?


『不安』『想い』


渦を巻きながら、交差する。


「・・・やっぱ言えない。」


伏せ目がちになりながら、結局口にすることを中断してしまった。

そんな美輝の頭を、大輝はふっと笑みを浮かべながら軽く叩いた。


「美輝らしい。」


大輝の言葉に、美輝は疑問符ばかりを頭に反映させながら顔を上げた。

大輝は今でも、優しい笑みを浮かべている。


―――本当、コイツらしいな。


そんなことを、思い浮かべながら。


「だって、言ったら最後・・・二従兄妹としては、見れなくなる・・・」


それは、いつの間にか・・・大輝を、二従兄妹として見ないようとしてきた“努力”の表れなのか・・・


「二従兄妹っていう、ちょっと薄いけど・・・確かに、どこかで繋がってる証・・・失いたくない・・・」


なんだかんだ言っても、ゆくゆくは「離れたくない」っていうエゴ。

「なんでもいいから、繋がってたい」という、いい加減な要望。

「一緒にいたい」っていう・・・ネガイ。


糸先に見えた愛しいと想う“愛”は・・・それらを、全部丸ごと包み込んだ罪深き言葉。


それを一瞬でも思い浮かべたところで、襲ってくるのは膨大な“罪悪感”。


愛情を持ってしまった・・・罪悪感。


・・・そんなこと、分かってるのに・・・


“それ”を滅ぼす術は、1つしか見当たらなかった。



「―――そばにいてほしいから・・・ずっと一緒にいたいから・・・」



“伝えること”


想っていた言葉を、口に出して、声に出して、言葉にして伝えること。


思い浮かんだ・・・唯一の、罪滅ぼし。


―――ああ、離間はもう・・・益々離れてしまうんだろうな。


悲しさを覚えながら・・・静かに、美輝は目を伏せた。

『比例×反比例』裏コント〜最終回もうすぐ〜

作者「・・・ということで、ますますKYになりつつある裏コント、開幕でございます・・・」

恵美「てか私最近、出番少ないよっ!」

作者「あ〜、ゴメンゴメン。憶えてますか?みなさん。恵夢の姉の、恵美さんです。」

恵美「どもども〜・・・って、あんま嬉しくない・・・」

作者「まぁさて置き。最終回が近づいて参りました。多分、登場キャラ約10人ぐらいの未来を描いた後、終わる・・・かな?」

恵美「うわぁ。なんかありきたり・・・」

作者「まぁ待てメグさん。そんな作者がいちばん気にしてることを言わないでください・・・(涙)」

恵美「まぁそゆことなんで、最終回まで見届けてやってくださいね〜!」

作者「うわぁ、なんかスンゲェ上から目線・・・」

・・・ということで、最終回までどうぞ、宜しくです!

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