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頼むから城から出してくれ!とお願いし続けた結果、文献の人が使っていたという家なら、としぶしぶ許可された。
街から少しだけ離れていて、城からも少し離れている。
お城に比べたらこじんまりとしているが、それでも私一人にしては十分広い。
掃除もどうやらお城の方がしてくれたようで、今すぐにでも住める状態になっている。
家具等一式も全部揃えてもらっていて、当面の資金として、とお金まで渡されてしまった。
お金返しますといっても異界の人にそんなことしていただくわけにはいきません!と頑として聞いてくれなかった。
私たちが異界のものを追い出したと思われたら困ります!ということらしい。なるほど。それなら仕方ないのかもしれない。
領主様が戻られたらお礼を言いたいから教えて欲しいと声をかけて、お城を後にした。
あれから文献の人のことを記載している本をいろいろ頼んで借りた結果、かなり頑張っていたことがわかった。と言っても読めないから読み聞かせてもらったのだけど。
どうやら食文化の発達や薬の貢献がすごかったようだが、文献の人が亡くなった後、急激に廃れたらしい。
確かにお城での食事はまずくはないがうまくもない、というものだった…。
その結果、あの文献に出てくる食事は伝説だったとか、薬に関しても同じようなことが書かれていた。
なぜだ?
とりあえず、当面の資金もあるので、買い物に出かける準備をする。
スミンさんが迎えに来てくれるというので、街まで迷子になる心配もない。
重いものを買っても少しぐらい持ってもらえるかもしれない。
「夕月」
「スミンさん、今日はありがとうございます」
「いや、俺でいいのか?獣人だぞ?」
「全然!案内お願いしますね?」
困惑した表情のまま街まで連れて行ってくれる。
本当に獣人っていうのがネックなんだろうなぁ。でも私より背も高いしかっこいいと思うのだけれど。
異界の者はわかりやすいと道中説明された。
あれ私わかりやすい?表情仕事しろ?と思ったがそうではないらしい。
黒髪に黒い目というのはこの世界で存在しないらしい。なのですぐにわかるのだと。
商売している人は獣人もいれば、人間もいる。商売人として客に対して無礼なことをいうような人は基本的にいないという。
そのようなことをすれば販売許可を取り下げられてしまうそうだ。
そして、街に差しかかったら、えらく注目されているのがわかった。
人が増えてきたなと思ったら、すぐだ。
ざわざわしてる。
あれこれ私のせいか?
スミンさんをみると、異界の者は珍しいからな、と話す。
あー、完全アウェイですね。
しかし気にしていても仕方がない。
「スミンさん、買いたいものリストです!買い物しますよ!」
そういっていざ!!と歩みを進めた。
美味しいものをつくるため、食い意地はってるとか言わないでね神様。