2
あれから早くも数日経過しました。
寝たきりだった体はリハビリをしたおかげで歩けるようになりました。
ドヤ顔医者には奇跡じゃ!!と叫ばれていましたが、リハビリしたら動けるようになるわ!
この世界ではリハビリという概念がどうにも低いようで、起き上がったり何かしようとしたら安静に!!と何度も止められるという。
このままでは本当に寝たきりになる!?という危機感から、こっそりリハビリを行っていたわけです。
そのあいだもスミンさんは見舞いとして顔をだしてくれました。
あのあとも全力否定を続けたので、しぶしぶ引いてくれたようです。
私も頑固やな、うん。
今は軽く散歩したいという要望を、これまたしぶしぶ了承したドヤ顔医者がスミンさんと一緒で中庭ならと許可いただきました。
そして気がついた。
ここはお城じゃないですか、ね?
「この場所って」
「あぁ、異界の者だからな。宿屋にいれるわけにもいくまい。領主様の城をお借りしている。」
やっぱりそうですか。
でも肝心の領主様はいらっしゃらないとか。なんでも他に城があるらしく、そちらにいるという。
理由が、獣人が来るならわたしはここにいたくない。という馬鹿げたことでした。
所詮異界の者である私には獣人がなぜ嫌われているか理解できないので仕方ないけど。
中庭でぐーっと背筋を伸ばす。ぱきぱき音がなるぐらいには凝っていたことを自覚する。
まぁね?広めのお部屋ですけど、なんかこう落ち着かないよね。
中世ヨーロッパ的な感じは非常に落ち着かない。畳が欲しいです。
一応護衛としてついてきたスミンさん。
そして遠巻きにたくさんいらっしゃる獣人の方々。
きっとスミンさんの部隊の方でしょうかね?
「スミンさん、あの方々って」
「…うむ」
稽古をしていろといったはずだがな…。と低くぼそりと呟いた声は、どうやら遠くの部隊の方にも聞こえたようです。
さすが、聴力よいですね。ぴゃっと走って逃げていった様子にため息をついている。
「ていうか、すみません。私のせいでお仕事できていいないんじゃないですか?」
「かまわん。基本的に警備がメインだからな。なにか大きな事件がない限り早急に動くこともないさ。基本的に稽古が多いしな」
その稽古ができていないんじゃ申し訳なさすぎますが。
というかいつまで私ここにいるのかしら。いい加減お世話になるのも申し訳ないし、どうにかして生活できるようになりたいのだけど。
「異界の者よ!」
このドヤ顔医者は名前で呼ぶことがない。
散歩終わり?短くない?と不満を言おうとしたら手に持っていた本を手渡された。
「本?」
「以前の異界の者が記したものじゃ。わしらは読めんが、もしかしたらとおもっての」
生活できるヒントになるかも?と素直にお礼を伝える。
そのままスミンさんに、部屋に戻って本を読むことを伝え、仕事に戻ってもらうことにした。
すまない、といってすごい速さで走っていったスミンさん。さすがっす。
本は普通に日本語で記載されていた。
てことは前に来たのも日本人かーと思う。でも一千年前のことなのに私が読める文献ておかしいな?と違和感を感じる。ほら、達筆すぎて読めない!てなるかと思ったのに。
冷静に考えて、私が読めるはずがない。
けど、一番後ろのページに書いていた日付に驚く。
「2000年12月24日にこの世界に落ちる」
え、何この人クリスマスイブに落ちたの?同じように落ちたのなら、さっむい季節に水たまりに落ちたの?つらすぎない?
いやそこじゃない、2000年って、最近といえば最近だ。この人は2000年から落ちてこの世界の一千年前にきた。
ということはあの魔力をためる泉でタイムスリップでもしたの?
頭の上にはてながいっぱい浮かぶが、本の内容は日記のようなものだった。
言葉が通じないという不安が主に書かれている。
そりゃそうだ。わけわからんままに異世界ですから。不安だし恐怖だわ。
でも徐々に理解できるようになってきて、この世界で食べ物を作ることにしたと書いてあった。
それからはレシピ集だ。
この世界のあらゆるもので試行錯誤したらしいものが記載されている。
ご飯のおかずからケーキ、最後の方は薬の処方までしていたという。
なんてパワフル。すごい人だ。男の人のようだけれど、料理が趣味だったのかしら?
でもこれがあれば私も作れるかもしれない。
今度スミンさんにお願いして街での買い物に付き合ってもらおうと決めた。
なんとか希望が見えてきた気がします、神様。