本編3.5話兼、別編1 兄と新しい兄
私はベッドの中で今日有ったことを振り返る。
兄を失い、新しい兄を知ったことだ。
私の兄は物凄く正義感の強い人だった。自分に厳しく人に優しい物凄く立派な兄だった。
超能力はあまり強くなかったが、家で黙々とトレーニングを繰り返した成果により、自衛隊の特殊部隊に居る両親にも認められるほどには能力がついていた。
私が普段通りに道場で空手の稽古をしていたある日に、その兄は超能力を使った銀行強盗事件に巻き込まれたらしい。正義感が強い兄は人質を助ける為に犯人らに立ち向かい、犯人らから人質を助けることに成功はした。
だが、そこからは相手はプロだ。兄は必死になって戦いはしたが、特殊部隊の人間が来るまではなんとか耐え抜いたが、兄は満身創痍の状態になっていた。犯人ら半数近くは意識を刈り取ることに成功していたが、自分の体は中までぐちゃぐちゃになっていた。
その後犯人は捕まり兄はニュースや新聞で称えられたが、兄は意識不明で入院中なので、私は全然喜ぶことは出来なかった。
両親は、兄の意思でしたことだから例え死んでも悲しんでやるなと私にずっと言い聞かせてきていたが、自分達の任務もあり1人の時間が日々増えて塞ぎ込んでいたある日、兄は急に意識を取り戻したと病院から一報が入った。
兄の入院している病院は遠く駆けつけることが出来なかったが、もうすぐに退院出来ると医者から聞かされた時は泣いて喜んだ。
それから3日後、いつも通り道場から家に帰ると兄がトレーニングをしていた。退院後すぐなのでゆっくり休むように言うつもりであったが、兄の動きを見ると本調子以上(理由は後で知る)なので咎めることはしなかった。
兄のトレーニングが一段落したのを確認し、私は家に近づいた。
兄の様子が以前と何か違うような気がするが、私は気にしないことにした。
そして、兄から組み手の相手をお願いされた。退院した日に組み手をするのは無茶苦茶だと言うつもりでいたが、兄の調子はいつも以上に良さそうだし、兄から組み手の相手をお願いされることは今までなかったことなので直ぐに了承した。
その後、組み手をして私が勝ちはしたが、兄の強さが私以上になっていることに気付いた。何故かやっていなかったはずの空手の技まで使うのだ。
組み手が終わると急に頭痛がして、目の前の人が以前の兄ではないと気付いた。その後、新しい兄(その人)から理由を聞き、状況を飲み込むことができた。
実は意識不明になっていた兄は死に、代わりに新しい兄(その人)がこの世界に横入りしたことが分かった。
その様なことがあれば腹立たしいはずなのに、1人で居た寂しさからか、新しい兄(その人)の人柄かは分からないが、そんな感情は全然出てこなかった。
新しい兄(その人)は組み手が終わり、シャワーを浴びた後に私の大好物のふわふわのオムライスを作ってくれた。(ちなみにオムライスをお代わりした)とても美味しく愛情を感じられた。
このオムライスを食べてやっぱり兄は死んだんだと納得出来た。
悲しい気持ちが溢れてくるが、新しい兄(その人)の優しい眼を見ていると何故か気分が少しましになった。
その後新しい兄から色々な話を聞き、新しい兄(その人)から無理に妹として接しなくて良いと言われ、新しい兄が(その人)私の中でその人ではなく、新しい兄として認めた感覚がした。
今日は色々有ったなぁ、明日から新しい兄とどんな生活が待っているのだろう?そんなことを考えているうちに私はいつの間にか眠っていたのであった。
妹視点を1話挟みました。
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