《プロレス界の『キラ星』にして見せます。》冴木晶
《彼女を必ずや、プロレス界の『キラ星』にして見せます。》
両手でマイクを握りしめて、冴木が力強く言い放つ。
「ブフワハハハハッハハハ!!!」
「アハハハハハハハ!!」
「ヒッッヒッヒィィィーー! く、苦しーー!」
「ハ、ハ、ハ、腹痛てーーッ!!」
「カァッハーハハハハッ! 楽シー! 死ヌー! 楽シ死ニシマスー!」
女子プロレス団体『戦場』の集合場。大型テレビの前には所属選手6人全員がそろっていた。
その日、『戦場』代表の冴木晶が、金メダリスト・天之川秀美の入団を発表する記者会見をした。
その様子がスポーツニュースでテレビ放映されている様子を全員で観覧する事となったのだった。
そして大爆笑。
「なんだなんだよ! お前ら笑い過ぎだろ! これでも一生懸命やったんだぞ!」
テレビの前では笑いすぎて悶絶している5人のレスラーと
猛烈に抗議する冴木晶の姿があった。
「ブファッハハハハ! いやいや大丈夫。冴木っちゃんが全力なことは判る。スッゲー簡単に判る。」
「全力と言うよりイッパイイッパイな感じだー!!」
「マイク両手で持ってますからね。端から見ても異様に緊張してますもん。冴木さんはホント戦闘以外は駄目ですね。」
「コラー! 宮原! 駄目とは何だ駄目とは!」
「出た! 冴木さんの『コラー!』」
「いや、駄目でしょう冴木さん。変な事口走ってるし。なんですか『キラ星』って、いつの時代ですか。少なくとも私が生きてきた時代にそんな言葉が流行った時はありませんでしたよ! 高度成長期の頃の言葉ですか。」
「いや、冴木さんの生きてきた時代にも『キラ星』なんて言葉流行ってないでしょ? 冴木さんまだ三十路前ですよね。」
「お母さんのお腹に居た頃からの記憶が残ってるんだよー! 『キラ星』ーッて!」
「いやいやそれでもまだ足りないよ。『キラ星』なんて誰も言ってないよ。」
「キット、オ爺チャンノチ○チ○ノ中ニイタ頃ノ記憶ガ残ッテマスネー! 一億匹ホド『キラ星』ノヨウニ出テ来タンデショウ。」
「Riccaさん!生々しいよ!」
「いやいやいや、でも良いじゃないですか『キラ星』! 私気に入りましたよ。判り易くていい感じ!」
秀美が突然立ち上がると左手を腰に添えて、右手で指を二本立ててVサインを作ると、右目に添えてポーズを決める。
「キラ星! シャキーン!! どう? いいでしょ。」
「アタシもやるー!」
「よーし! こい! 浅ポン!」
二人でポーズを決める。
「「キラ星!! シャキーン!!!!!」」
そしてドヤ顔。
「冴木さん! 『キラ星』キメきれば大丈夫!」
「冴木さん! 『キラ星』無理すれば大丈夫!」
「大丈夫。」
「大丈夫。」
「「大丈夫。大丈夫。」」
「コラー! お前ら馬鹿にするのも大概にしろー!」
冴木は顔を赤くして叱り飛ばす。実に素直な反応である。
「…可愛いよなあ。」
「可愛いですね。」
ギガントと宮原が、妙に癒された顔をしている。
「………。」
Riccaさんがボケッとしている。いつでもマイペースな人である。
ーー天之川秀美、レスリング引退! 女子プロレス団体『戦場』に正式入団決定!
このニュースは世間に大きな衝撃を与えた。
スポーツ誌どころか一般の新聞の一面になっていた。
その日から一週間は、事務所の電話は鳴りっぱなしだった。事務員のお姉さんがノイローゼになりかかっていた。
事務員のお姉さんは大抵ギガントか宮原がやっていたのだが。Riccaと浅川はサボッたりはしないのだが、何を言い出すか判らないので、きつくても二人が電話に出てしまう。こうゆう時は真面目な奴が損をするようだ。
中でも驚いたのが、その日のうちに秀美のCM出演依頼が3件も来た事だった。
「なんだ、いくらなんでも練習生のうちにテレビCMって無いだろ。練習の邪魔だ。」
冴木が断りの電話を掛けようとする。
「ちょーーーーーーっと待った! 冴木っちゃん! 何する気だい。まさかCMを断る気かい。」
ギガントが飛び出してくる。
「いや、当然だろ。練習の邪魔にな…」
「冴木さん、待ったーーーーーーーーーー!!」
秀美も飛び出して来た。
「冴木さん! そのCM依頼は受けますよ。私!」
「良く言った秀ミン! 冴木っちゃん,依頼受けよう!」
「何言ってんだ。練習生のうちは練習最優先に決まってるだろ。」
「とはいえCMだぞ! 全国放送されるんだぞ。ウチの選手が!」
「宣伝効果抜群ですよ、冴木さん!」
「練習生が気にする事じゃない、秀美!」
「いやいや、いろんな意味でこの依頼は良い事ずくめですよ!」
「ここで『戦場』の知名度を一気に上げるチャンスなんだぞ!」
「…いや、それは確かに…」
三人で大騒ぎしていると、宮原が電話を取った。
「…はい。ありがとうございます。喜んで引き受けさせていただきます。」
唖然とする三人。
「あ、あれ。宮原…」
宮原は電話を切るとひと呼吸入れて静かに口を開いた。
「秀ミン。練習量は落とさないよ。デビューも遅れさせないからね。」
「…ハイナー。」
「冴木さん。ギガントさん。これで良いですね。」
「「い、いあや。ちょっと…」」
「い・い・で・す・ね。」
宮原が睨みつける。凄く怖い。ほんと愛嬌がない。
「「…ハイ。」」
「後の2件も電話しておきますよ。」
気が変わる隙を与えない様に素早く電話をかける。
「宮ッチ。怖いッスね。」
「基本優等生なんだけどな。ほとんどヤンキーと紙一重だなありゃ。」
「貫禄ならもうメインイベンター級だ。」
若い者が頼もしくなるのは良い事である。
そしてそこには負け犬と化した惨めなオバさんたちが、怯えて身を寄せ合う姿があった。
(私、ホントに『最強のレスラー』なの?)
「………………………………………!」
「………………………………………!」
「………………………………………冴木っちゃん。」
「………………………………………ギガント。これ、ホント。」
冴木とギガントは『戦場』の事務所で向かい合っている。
二人の目の前には帳簿がある。ここにはその月の団体の利益が記録されていた。
「…すごい額だな。」
「団体の借金。返せるな。」
そこには、秀美の出演したCM三本分の収入が加わっていた。
「やったぜ冴木っちゃん。ポリシー曲げてCM許可した甲斐があったってもんだぜ!」
冴木が黙ってうなずく。
(…良かった。これで様々な不義理を清算出来る…。)
思わず目頭が熱くなる。
生真面目で責任感の強い冴木は、他人に借りを作っている事がどうにも我慢できない。
団体の借金はかなりの心労となっていた。
だからなのだろう。今は心の底から安堵した笑顔を浮かべている。
「さすがだぜメダリスト! 愛してる! 早くも経済効果抜群だぜ! 強引でも入れてよかった!冴木っちゃん! よくぞ仕留めてくれたよ。」
ギガントが浮かれまくっている。彼女も内心かなり気にしていたのだろう。
すると、事務所の玄関から音が聞こえて来た。
「秀美で~す。ただいま戻りました。なんか賑やかっスね。」
秀美がテレビの取材から帰って来たのだった。
プロ転向した途端、彼女にはテレビや雑誌の仕事が沢山来ていた。
知名度も好感度も高い彼女は一般受けが良かったのだろう。
今ではちょっとした『稼げる女』になっている。
文字通り『戦場』にも思わぬ副収入をもたらしてくれた。
「秀ミン! 愛してるぜ! これ見ろこれ。」
ギガントが秀美に突進して、思い切り抱きつく。
秀美の顔が胸に埋まっている。かまわず左右に激しく揺さぶる。
かなり苦しいと思うのだけと、秀美は笑っている。
「…ふへへへへへヘェェェエ…。」
なんか気持ち悪い。
阿修羅の様なギガントの歓声と、悪魔の様な秀美の笑いが事務所に響き渡る。
「なんなんですか、これ。」
宮原達が隣の道場からやって来た。不審に思ったのだろう。
「まあなんだ。目出たい事があったんだ。」
「ウチの目出たさは気色悪いですね。」
なかなか言ってくれる。若い者が頼もしくなるのは良い事である。
「秀ミンさぁ。バーベキューではさぁ、タマネギこと影の、いや真の主役だと思う訳よ。
このほのかな甘みがあってこそお肉も美味しくなるってもんなのよ。」
「しかし浅ポン。アタシはさらにジャガイモを加えて、コクに深みを加えてみます。」
「ジャア私ハトウモロコシ入レマスネ。メキシコ人ハトウモロコシ無シデハバーベキューハ語レマセン。」
「…なかなかやるわね。これは私も一本杯頂く必要があるわね。」
「コラー! お前ら、野菜ばっかり焼きやがって! 折角のバーベキューなんだから肉焼けよ! 今日は奮発したんだから。牛のカルビに鶏モモ、豚トロ、モツにタン塩まであるんだから。見ろこの山盛りの肉を。」
すると秀美が叫ぶ。
「…ギ、ギガントさーーーーん!!」
「なんと変わり果てた姿に…」
「ギガントサン。美味シソウニ捌カレチャッテ……。ウゥッ!」
「ギガントさん。残さず頂きます。この味は忘れません。」
皆も流れる様に続く。
「…あれ? アタシもしかして苛められてる? これってミート・ハラスメント?」
ギガント涙目。
「折角だからお祝いしましょう!目出たい時はバーベキューしましょ!」
秀美の一言で、この日の夕食は道場の庭でバーベキューをすることになった。
この日は心の重荷が無くなったからか、冴木も食が進む。
「冴木っちゃん。今日は飲むかい。」
「いいね。」
普段は余り飲まないお酒も進む。
「しかしあれだね秀ミン。テレビの仕事もあながち悪くはないね。」
ギガントが秀美に話しを振った。
「確かに今回のCMは良かったですけど、仕事ですから生半可では出来ませんよ。誠実に真剣に全力で取り組まないと、先方に失礼ですからね。」
「ん! 確かにそうだ。『戦場』では常にそうでないと。」
冴木が話に割って入る。
「冴木さんもそうですか!」
「もちろんだとも! どんな仕事も、常に誠実に真剣に全力だ。」
「いや、それ聞いて安心しました。いやー、どうやって冴木さんを説得しようか参ってたんですよ。」
「え?」
「え?」
冴木の周りには現役のアイドルや若い芸人達が沢山群がっている。
「えええええええええええええ!」
「冴木さん。なに今更驚いてんですか。TVの仕事なんだからアイドルだっていますよ。誠実に真剣に全力で行きますよ!」
「でもでもでも、みんな若くて可愛いぞ。ほとんど十代だぞ。三十路前なんて私だけだぞ。明らかに場違いだぞ!」
「そんな事無いですよ。可愛さなら冴木さん負けてないですよ。」
某TV番組が秀美と一緒に出演と言う事で、冴木に依頼を出して来たのだった。
記者会見で冴木さんが見せた面白真面目な雰囲気に目をつけたのだ。
「冴木さーん! 秀ミーン! もう皆集まってるよ! 早くこっちこっち。」
浅川が秀美達に向かって手を振っている。彼女はいつの間にかアイドルの中に混じっている。
本当に誰が相手でも物怖じしない奴だ。
番組内容は『イベントをこなしながら120分間追跡者から逃げ回る』。
様は『鬼ごっこ』である。
『鬼ごっこ』ならば『戦場』で最も俊足な浅川を入れたいと、
秀美が強引に番組参加させるよう打診したのだった。
案の定、明るく物怖じしない性格の彼女はあっと言う間にアイドル達と仲良くなってしまっている。
「…浅川ってもう19歳だったよな。アイドルの中だと結構年上じゃないか?」
「見た目幼いし、そんなにデカくないし、親しみ易いんでしょ。」
「レスラーとしてはどうなんだそれ。」
「アイドル的にも攻撃対象にならないんでしょうね。無乳ですし。」
「年上女性としてはどうなんだそれ。」
「いくぞ、イベントは全て参加した上での逃げ切りを目指すぞ! 『戦場』は絶対逃げない!」
「ハイナー!!」
「そうこなくっちゃー!」
「浅ポンは胸無い!」
「なんじゃそりゃー!」
「こらー! 秀美! 不当な毒吐くんじゃない!」
『鬼ごっこ』が始まると早速冴木が皆に檄を飛ばす。
やはり性格的には体育会系な冴木の事。なんだかんだ言っても始まってしまえば夢中になってしまう。
そんな姿をアイドル達が興味深げに観ている。
「ホントに『コラー!』ってゆうんですね。冴木さんって。」
「『最強のレスラー』なんて言われてるから、ちょっと怖い人かと思っていたんだけど…」
「りりしくて格好良いよね。」
「それにちょっと可愛い♥」
「冴木さん、頼れる雰囲気ありますね。一緒に逃げていいですか?」
「もちろんだ。共に生き残ろう。」
親指をたてる。
「冴木さん、イベント危ないですよ。捕まっちゃいます。」
「だからって、逃げるのは嫌なんだ。」
真っ直ぐ目を見詰め返して答える。
「冴木さん、私やりました! イベントクリアしました。」
「よく頑張ったな。えらいぞ。」
頭を撫でる。
いつの間にか夢中でゲームに没頭している三十路前の女、冴木晶。
その姿を秀美と浅川が微笑ましく見つめる。
「冴木さんって、ああゆう男前なセリフを素で言えるところがすごいよね。」
「なんとゆうか、永遠の少年って感じだよね。」
「いや浅ポン。アンタも少年っぽいよ。特に胸が。」
「なんじゃそりゃー!」
大声を上げる浅川。『鬼』が気が付いてやってくる。
「浅ポンのバカー!」
「ヤッハーーーッ!」
秀美捕まる。浅川逃亡。凄く楽しそう!
その姿は悪ガキ以外の何者でもない。
「おのれ浅ポン! アンタもはや小僧だよ。野郎だよ。胸は無いけどチ○コあるだろ。」
捕まった者が入る檻の中で秀美が叫ぶ。
「秀美さん。これゴールデンタイムの番組ですよ。」
先に捕まっていたアイドルにツッコまれる。
「あぁぁー! 捕まったぁー! くっそ! 追っかけてばっかりでないで掛かってこいよ!
決闘なら負けないぞ! いつでも相手になってやるのに! あああぁぁぁぁぁーーーー!」
とうとう冴木が捕まった。100分程たっていたので結構頑張った方である。
ペタンと内股で尻餅をついた『女の子座り』で悔しがっている。
腕を振り回してジタバタしている。
捕まっているアイドル達がざわつく。
「秀美さん。秀美さん。冴木さんっていつもあんな可愛いんですか?」
「も~う普段はあんなもんじゃないね。」
「あんなにカッコいいのに実は可愛いなんてずるいですよ。」
「おかげで毎日たのしいわぁ~。」
「ウワァァー! いいなぁー!」
そして檻の中に冴木が入ってくる。
「うぅぅ。ゲームとはいえ檻の中なんて嫌だなあ。」
「冴木さん!お疲れさまでした。」
さきほど冴木に頭を撫でてもらったアイドルが出迎えてくれる。
「はは、ありがとう。キミもお疲れさま。」
さも当然の様に頭を撫でる。
「エヘヘヘヘ」
嬉しそう。
「…冴木さん。冴木さんの事『アキラさん』って呼んでもいいですか。」
「あ、うん? いいけど。」
「エヘヘ。やったぁ!」
檻の中が騒ぎだす。
「ああっ! ずるい! 私も『アキラさん』って呼ぶ!」
「ってゆうか、私も撫でて下さい。」
「私もー!」
「私はむしろ撫でさせて下さい!」
檻の中は大騒ぎである。
そして番組では、なんと浅川が最後まで逃げ切り、賞金を手にしてみせた。
それ以上に全国放送で名を売ってみせた。
「イエーイ! キラ星! シャキーン!!」
「アタシもやるー!」
「よーし! こい! 秀ミン!」
二人でポーズを決める。
「「キラ星!! シャキーン!!!!!」」
そしてドヤ顔。
「冴木さん! 『キラ星』キメきれば大丈夫!」
「冴木さん! 『キラ星』無理すれば大丈夫!」
「大丈夫。」
「大丈夫。」
「「大丈夫。大丈夫。」」
「コラー! お前ら馬鹿にするのも大概にしろー!」
そしてアイドルたちが騒ぎだす。
「アキラさん。私たちもポーズ決めましょう!」
「アキラさんと一緒にやりたいです。」
「えええええええええええええ!」
「さすがはアイドル! いいリアクション! 冴木さんコッチコッチ!」
秀美が冴木をカメラの前に誘う。
「まてまてまてまて、無理無理無理無理。私は三十路前だぞ。無理があるって。見苦しいよ。」
「そんな事無いですよ。アキラさん全然いけてますよ。」
「ホラー、皆待ってますよ。誠実に真剣に全力で行きますよ!」
「むうぅぅぅ…。」
照れる冴木。癒される。
「じゃあいくよ!」
秀美が檄を飛ばす。
「「キラ星!! シャキーン!!!!!」」
皆でポーズを決める。
冴木も真っ赤になってポーズを決めていた。
端から見てもいっぱいいっぱいである。
このシーンは番組の最後のテロップで使われていた。
番組終了後。
「じゃあ今度チケット送るから、プロレス観に来てよ」
「うん、絶対行くね。浅ポン。」
「秀美さんもデビュー決まったら是非チケット送って下さい。」
「ハイナー!」
浅川はもうアイドルと仲良くなってメアド交換とかしている。
秀美も便乗している。
冴木の周りにもアイドル達が群がる。
「アキラさん! 今度観に行きます! 控え室に応援に行っていいですか?」
「ああ。いつでも良いぞ。待ってるから。」
頭をなでてやる。
番組プロデューサーが秀美に声をかける。
「イヤー秀美さん。お疲れさまです。良かったですよ。浅川さんは逃げ切るし、冴木さんはキャラ立ってるし、『戦場』快進撃ですよ。」
「こちらこそ良い宣伝にもなるし助かりますよ。有り難うございました。」
「特に冴木さんいいね。今回は完全に『アキラさんショー』だったから。またお願いしますよ。」
「ええもう是非! お願いします。」
本人不在のままで営業が行われて行くのであった。
帰りの車で秀美が冴木に話しかける。
「どうでした、番組。」
「うん? アイドルって結構凄いエネルギーあるな! ちょっと舐めてたよ。中にはスカウトしたいぐらい体力ある娘もいたし。ちょっと前までアイドルレスラーなんて馬鹿にしてたけど、考えを改めないと。アイドルは裾野が広いから、中にはレスラーが出来るぐらいの体力・素質がある者も出てくるんだろうな。すごく羨ましいな。」
予想以上にすごく真面目に答えてくる。
「…さすがは冴木さん。」
「ねえ、秀ミン。ボク達もこれからは『アキラさん』って呼ぼうか! その方が女子受け良いよ、きっと!」
「さすがは浅ポン! ナイスプラン! ちょっと宝塚っぽいし。」
「おいおい何変な相談してんだ。」
「私たちの事は『キラ星』と呼んでくれて良いですよ。」
「コラー! 秀美ィー!」
「ハイナー!『アキラさん』!」
「コラー!」
社内に冴木の声が轟く。