○どんより・・・○もりそ○・・・
・・・
ミチオは 午前中のプレゼンを なんとか 無事になしとげ
課長と一緒に 昼食を とるため 会社のエントランスから 外へ出た
「ミチオくん。 お疲れ様だったね。 なかなかの 出来だったよ。」
「ありがとうございます。課長。」
一週間 必死でまとめたプレゼンが 高評価を 受けることができて
ミチオの こころは 晴れ晴れとした気分であったが
自動扉から 社外へ 一歩出て ノビをしながら 空を見上げると
残念ながら 青空ではなかった。
「今日は どんよりとした 曇り空 ですね。」
内心で (残念)と 付け加え そこで 思いのほか 空腹感が 強いことに
気が付いた。 やはり プレゼンでの 緊張で 体力を消耗したのであろう。
「よし。君の お望みのものを 私が 御馳走してあげよう。」
「マジッスカ! やったぁ!」
ミチオは めずらしく太っ腹な 課長に 心から感謝して 課長の後を追った。
めずらしく太っ腹・・・といったが
(課長の肉体的な意味での腹は、常に太っ腹だな)
などと おごって貰うくせに 失礼なことを 考えながら
(さて 何を おごって貰うかな?) と ミチオは ウキウキした 気分だった。
しばらく 行ったところで 課長は 急に 狭い路地へと 入った
「ここ。ここ。 なかなか 分かりにくい ところに 店があるけどね。」
「はぁ・・・」
課長は ずんずんと その店に 入っていく。
ミチオは ステーキか 何かを 御馳走になろうと 期待していたので
小汚い 和風な店構えの のれんを 少し ガッカリして くぐり
課長の 後を 追いかけて 店内に 入っていった。
席に着くと 冷たく冷えた 麦茶を もって 女将が 注文を 聴きに来た。
ミチオは プレゼンで カラカラになった 喉を 取りあえず 潤すために
麦茶を 一気に あおって 飲んだ。
(美味いなぁ。 ビールじゃないのが残念だけど・・・午後も仕事はあるしね。)
そんな ことを 考えながら
(さて ステーキは 無理そうだけど 好きなモノを 御馳走してくれるらしいから・・・)
と メニューを 手にとろうとしたが・・・
それよりも 一瞬早く 課長が 女将に こう言った。
「盛りそば 2つね。」
・・・
(えっ・・・???????)
話が違うじゃないか!と ミチオは がっかりした。
しかし おごってくれるという 課長に 文句を言うわけにも いかず・・・
「課長・・・あの、ぼく、蕎麦苦手なんで ざるうどん に してもらっていいですか?」
と 恐縮をよそおって あいそわらいを 浮かべながら 女将に たのみなおした。
すると 課長は 不思議そうな顔で こういった・・・
「? なんだ? 君が 会社の前で
うどんより もりそば ですね
って 言うから この店に つれてきたのに?
ワシの 聞き間違いだったか?」
「え?」
「まぁ いい。 しかし 君も 奥ゆかしいね
若いんだから ステーキでも なんでも
今日なら 多少 高くったって 御馳走したのに」
「えぇぇぇぇぇ!?????」
・・・
ざるうどん を 食べながら
盛りそばを すする 課長を 見つめて
ミチオは 会社の 前での 会話を 思い出していた・・・
・・・
○ きょうは どんよりした くもりぞら ですね
× きょうは うどんより・・か・・もりそば ですね
・・・
(課長って・・・耳が 遠かったんですね・・・およよよよよ)
ミチオの こころのなかは
さっきまでの 晴れ晴れとした気持ちから
どんよりした くもりぞら へと かわってしまった・・・とかなんとか?