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探索という名の買い物

今進と斎原は近所のデパートにきていた


「はい これ」


先ほど購入したであろう品を進に預けにくる


プレゼントなどではないすべて斎原のものだ


そして進は当然のように荷物持ちをまかされている


まかされているというか強引にもたされているんだけどな


「じゃ 次行くわよ」


荷物を進に渡すとまた違う店にいこうとする斎原


すでに進の手には手の指でぎりぎり数えられるかぐらいの数がある


そして相当重い さすがの進もこれ以上無尽蔵に買われては困るので


「もうやめにしないか いくらなんでも買いすぎだろ」


斎原が振り向きながらすごく冷たい目を進に向け


「あんたがしたいことあるかって聞いたんでしょ?」


「それにしても限度ってもんがあるだろ お前は買って俺に預けるだけかもしれないけどこれ以上増えるとさすがにきついわ」


「だらしがない それでも男なの? はぁ~これだから貧弱男子は使えない」


言いたい放題の斎原だったが進はもう相手にしたほうがめんどくさいと判断したため悪口は聞き流すことにした


「すこしベンチにでもすわっていいか?」


何個も荷物を持った手をあげベンチのほうに向ける


「そうね 私も疲れたわ休みましょ」


内心ではお前は俺に荷物持たせて歩いてただけだろと思っていたがいうとめんどいのでやめた


ほかの客の邪魔にならないように荷物を置きベンチに座る


はぁ~こんなことならあんなこと言わなきゃよかったな




時間は進が斎原に踏まれて少し経ったころまでさかのぼる



「で! どうやっていのり様を探すの?」


「そうだなぁ」


どうせどこに行ってもあえないからな聞き込みとかされないならどこでもいいんだけど


「斎原はやりたいことないのか?」


「急に何よ 今はいのり様探すほうが先でしょ」


「いや俺だってどこにいるかまではさすがにわからないしあいつはし……」


「あいつじゃなくていのり様でしょ」


斎原が鋭い眼光で進をにらむ


「めんどくせえやつだなぁ  いのり様は神出鬼没なので斎原に用事とかやりたいことがあるならそれをしながら探すって感じでいいんじゃないか?」


「それって会える可能性限りなく低くない?」


「推理したりして探したほうが迷って時間の無駄になるかもしれねえだろ それなら何かしながらのほうが無駄にならないじゃん」


斎原は少しうなって考えたのち


「それでいいわ」


賛成してくれた


「よし じゃあ斎原行きたいところとかあるか?」


顎あたりに手を寄せ斎原が考える


少し間が開いたのち


「買い物」




というわけで今現在デパートで斎原の買物兼いのり様探索をすることになったのだが

ベンチから置いた荷物を見る


こんなことになるとはなぁ


せいぜいバックだけとか服何着かとかと思ってたんだけどなぁ


甘かったか


進が今の反省みたいなことを繰り広げていると


「ねえ あれ買ってきて」


その斎原の声で我に返る


「ん?」


斎原の指差したほうをみる その先にはソフトクリーム屋の看板があった


[ここを右に50m]


「自分で買ってこいよ」


結構疲れていたので立ち上がりたくない進は断る


「あんたの分おごってあげるからいってきて」


そういいながら財布から野口さんを進に渡す


「俺いらねえから買ってこいよ」


めんどくせえと手を振ってシッシとやると


「かってきて!!」


すなまじく不機嫌な顔になり、野口さんを顔に押し付けてくる


これでは何を言っても聞いてくれないなと思い進が折れて買いにいく



斎原が頼んだソフトクリーム屋はなかなか評判のようでかなりの行列ができていた


それを見て気が滅入りそうだったが並ぶのがめんどくさいからなどと言ったらもっとめんどくさいことになるのは火を見るより明らかなのであきらめて並ぶことにする



たっぷり20分待ってひとり分のソフトクリームを買う


「はぁ…結局休みなしかよ」


疲れに愚痴をもらしながら斎原がまっているベンチへと向かう


ああどうせもっていっても「おそい!」とかいって責められるんだろうなあいつあの行列見てないしだるいなぁ

そんなことを考えながら角を曲がると斎原の周りに何人かの人だかりができていた


ん?なんだなんだ 昔の友達にでもあったのか?


どうやら高校生のようだ

だんだん近づいていくと話し声が聞こえてきた


「おめえ 友達いねえくせになんでこんなに買ってんの? ばかなの」


「そうよ ひとりで買い物なんてかわいそうですわね」


「俺たちも荷物持ち手伝ってやりてえけどさ これから俺ら用事あるから無理なわけよ」


まわり囲んでいるすべてのひとが斎原を笑い・バカにし・まるでいじめられているようだった

そして斎原はさっきまで俺につっかかってくるような勢いもなくうつむいていた


いやこれはいじめだろ


そう思うと胸の奥が熱くなり、怒りで頭いっぱいになりそうになる


だけどここでおれが殴りに行ってもこの場をよくすることはできないだろう


あいつらがバカにしている要素は聞いたところによるとひとりで買い物に来ているということらしい


ならおれがいくだけで解散させれるはずだ


「斎原 頼まれてたソフトクリーム買ってきたぞ~ めっちゃ並んでて時間かかっちまった」


斎原を含めた全員が俺のほうを向く

唖然とした取り巻きなど進はみもせず


「さっさと買い物行こうぜ 休憩は終わりでいいだろ」


斎原にソフトクリームを渡し、荷物のほうへと向かう


「なんだなんだなんだ かっこいい王子様気取りかよ」


「なにクールぶってんのキモいっつうの」


状況を把握したのか周りの取り巻きが俺に攻撃先を変え、どんどんいってくる


さすがに無視していくのはめんどくさいし逃げるみたいでいやだったので


「俺さ こいつの買物に付き合ってて忙しいのよ だから斎原の友達かなんか知らないけど話すことねえから」


荷物をすべて持ち立ち去ろうとする


「おい まてよ なにいいたいことだけいって帰ろうとしてんだよ ちょっとは相手してくれっよ」


取り巻きの一人が話しながら殴りかかってくる


おいおいまじかよこんな大通りで殴り掛かってくんのかよ


そんなこと思う余裕は進にはあった


進は女装するのがいやだしなるだけしたくない 

だから女装しなくても大丈夫なようにこれまで鍛えてある


こんなチンピラなどに負ける気などさらさらなかった


持っていた荷物をすべておろし、最初の一撃をすれすれのところでかわす


あたると思っていたチンピラはバランスをくずす


そこへ進は振りかぶっていたこぶしをみぞおちあたりに決めてやった


「っう」と声を上げ地べたにうずくまる


仲間のうずくまる姿を見てほかの取り巻きは「うわー」とかっこ悪い声を上げ一目散に逃げていく


そして進が倒したチンピラが残った


「仲間ぐらいたすけていけっての はぁ……」


気を失っているチンピラをベンチに寝かせ


「いくか」


斎原に声をかけ荷物を持つ


斎原はうつむきながらうなずく


斎原に聞くとどうやら買い物は終わりのようだ まああんなことがあってからじゃ楽しい買い物ってわけにはいかないだろう


進と斎原は近くにあった喫茶店に入って少し話すことにした


「あれ中学の時の同級か?」


そう進が切り出すと


チンピラに会う前のような元気はなく、うなずくだけだった


「お前よくいじめられてたのか?」


「いじめという段階になったのは多分中学3年の夏ごろからだったわ 私3年に上がった時に転校してきた転校生だったのよ だから友達もいなくて孤独だったわ でも最初の頃は珍しいものでも見るように人が群がってきて、ある程度の友好関係はあったと思うわ けど私があなたにやっているように素で一度話をしてしまったの」


思い出したくないのかうつむいて小さく震えながら語る斎原は苦しそうだった


「それから周りの態度ががらりと変わってあっという間にさっきみたいな感じになったわ」


「お前さそれで懲りたんじゃなかったの? なんで俺に素を見せたの?」


そう聞くと斎原なんだか頬を赤くしてもじもじする


「素で話していい友達がほしかったの」


かすれそうなか細い声だったがはっきり言った


その答えに進は不謹慎とわかっていたが笑ってしまう


「なんで笑うのよ」


斎原がうつむいてもじもじしている顔をやっとあげる


「だってさ俺にドロップキックまで決めるやつがこんな純情なこと考えてたなんて思うとさ はははは やべっ つぼった」


「なによなによ 悪い あんたにはわからないのよ 国分寺だっけ?あんなに仲のいい友達がいるから」


ぷいっとそっぽむく


「ああ太輔か? 確かにあいつとは親友の仲だけど俺らまだあってから五か月もたってないんだぜ!」


「うそ」


斎原が心底驚いた顔をし、進を見る


「だからお前も作ろうと思えばすぐに友達作れるさ」


笑顔で進が励ますとなぜかまた斎原は赤くなり


「どっどうやって友達になったの?」


とまたもじもじしながら斎原は問うてくる


「色々あったっちゃあったが まあ簡潔にいうと秘密を共有したからかな」


「秘密?秘密って何よ」


うわ やべ墓穴掘ったか ここは何としてもやり過ごさねば


「ひ 秘密は秘密だよ 人にたやすく言えないことだから秘密なんだろ」


おどおどしまくりながらなんとか答える


「まあそうよね 今日あったばかりの私に言えるような秘密は秘密と言わないわね」


斎原はどこか悲しそうに進から眼をそらし、暗くなる


「まあ友達がほしいならさ」


腰かけていた椅子から立ち上がながら


「大輔にでも言えばすぐ友達になってくれるぜ」


親指を立て、にっこり笑う


「あんたとはなれないの?」


斎原が独り言のように小さな声で何か言ったようだが進にはよく聞こえなかった


「ん?なんか言った?」


「なんでもないわよ 次行くわよ」


斎原も椅子から立ち上がり、づかづかとどこか怒ったような足取りで会計に向かう


「おいおいまだ買うつもりかよ」


買い物を続けるようなこと言われ、まだまだつみあがるかもしれない荷物を想像し、なえる進だった


喫茶店をでて


「で どこにいくんだ?」


「どういしようかなぁ」


進の問いに思案顔になりながら答える


「決めてなかったのかよ はぁ……」


本当はもうお開きにしてこの重い荷物を手放したいところだったが、そんなこと許してくれるはずもないので自分の気持ちを押し殺す


「お兄ちゃん!」


通路の真ん中で斎原と進が二人で次どこにいくか決めていると、その会話を遮断するような声が進の後ろで響く


振り向くと呼び名で予想はついていたが、やはりそこにいたのは進の妹・早乙女さおとめ 麻奈まなだった


「今日は国分寺さんと遊ぶから遅くなるって言ったのに、なんで隣に女がいるの?」


麻奈はいままで見たこともないような冷たい形相で進を見ており、しかもどこかニッコリしていて余計に怖かった


「ああ これはだな」


麻奈に隠すようなやつではないのだが、もし万が一斎原がいのり(基俺の女装)のことを麻奈に聞くことなんかがあれば ものすごい面倒なことになる もうここは怪しまれるが


「麻奈ごめん 帰ったらちゃんと話すから」


そういうと進は斎原の手を握り、麻奈とは反対方向に走り出す


「もうなんなのよ なんで逃げないといけないわけ?」


突然のことに何が起こったかわからないという風に抗議してくる


「こんなとこで話しするのはシチュエーション的に問題ありだ」


うっかり麻奈にいのりのことを話されたら困るからな


「っえ まあ そうかもしれないわね」


斎原は何を勘違いしたのか知らないが納得してくれたようだ 

斎原の顔が赤いようだけど速く走りすぎかなけど追いつかれたら、今も麻奈は追ってきてる


「待てーーーーお兄ちゃーーーーん  その人との関係を洗いざらい掃出しなさーーーーい」


猛スピードで麻奈が追っかけてくる


追いつかれると思ったその時 前にエレベータを発見する


しかも運よくドアが目の前で開き


「うがあああ」


とうなり声を麻奈が上げるがエレベータのドアは間一髪のところで閉まった


ここは四階なので一気に一階まで行けば少しは撒けるだろう


「さっ斎原 はぁはぁ 今日はこれくらいにしよう」


全力で走ったことに加え片手で全荷物を持ったことで、進の体力は限界だった


「っえ ああ うん」


斎原は下のほうを向き、心ここに非ずという感じだった


進は斎原の目線の先が気になり追ってみるとそこには俺たちの手があった。正確にはつないだ手があった


「あ ごめん 夢中でさ 悪かった」


急いでつないでいた手を放す


「いや別に」


斎原はいちごのようにあかくなり、さっきまでつないでいた手をさすっていた


微妙な空気になりかけていたが、エレベータの開く合図でなんとか空気は悪くならずに済んだ


そして一階で待っていたタクシーを捕まえ、持っていた荷物を積む


「はぁ やっと軽くなったぜ」


「いい 明日こそいのり様を見つけるんだからしっかり働きなさいよね」


タクシーの後部座先にちょこんと座りながら明日も探索をすることを告げる


「へいへい」


軽い返事で返しながらタクシーのドアを閉める


「じゃあな」


「それじゃあね」


タクシーの運転手さんがエンジンを入れる


「早乙女」


意をけしったように斎原は進を呼ぶ


「ん?なんだ?」


聞き返すと頬を赤く染め上げた斎原が


「今日はあり…が……とう」


斎原覚悟を決めていったのかもしれないが残念ながら進には肝心な部分が聞こえておらず


「今日はなんだって?」


その言葉に斎原さらに顔を真っ赤にし


「今日はだめだめだったっていったのよ」


そういうとタクシーは出発した


「結構今日大変だったんだぞ はぁ……帰るか」


疲れた体を早く癒すために家に帰ることにする


その時


「お兄ちゃん」


不気味な声が後ろから呪いのように進に絡みつく


振り返ると最初にあった時よりさらにブラックになった麻奈だった


ガシ


撤退態勢になった進をそうはさせないといわんばかりに麻奈が首根っこをつかむ


「今日は寝かせないからねお兄ちゃん」


どうやら疲れた体を癒すことは今日はできないようだ


とほほと縮こまりながら麻奈とともに家に帰るのだった

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