斎原の本性
そして放課後
「はぁ〜………」
ようやく学校が終わり帰れるというのに盛大にタメ息をはくやつがいた
まあ当然はいたやつは進である
なぜこんなに憂鬱な気分になっているかというと……まあ簡単に言えば前に女装して助けた女の子が女装した進を探しているのだ
探している人が進とわかりなおかつ女装したらあんな変貌を遂げるなんて知ったら中学の二の舞だ
そのために助けた女の子である斎原 有紗に協力し、いもしないメイドさん(女装した進)を探しているふりをしてうまく気を誘導する作戦なのだが
はぁ……
二度目のタメ息
やはり自分の秘密がかかってるといっても放課後にほとんど知らない人といないといけないことを考えるとタメ息が二度三度でるのは当たり前だろう
ああ斎原さんあのときのこと忘れてくれないかなぁ
放課後の生徒達がまばらになり始めた教室で進が超妄想的希望図を願っているとその願いをはなから打ち破る声が聞こえてくる
「早乙女くん さああなたのいとこ様をさがしにいきましょ」
斎原さんは進の席を通りすぎ先にいく
それに続くために進はいすから重い腰をあげた
今回は本当にほんとに不本意だが進から誘った形になっている
昼休みの誘いを逃げる形で返事を返してしまったのでこっちから誘うしかなかったからだ
まあ大抵の男子なら女子と一緒に放課後を過ごすというだけで二つ返事で行くのかもしれないが、自分の秘密がかかっているとなると気はすすまないものだ
でもいつまでも起こったことにくよくよしても始まらない秘密を守るため頑張るか
進は覚悟を決めて斎原と一緒に学校を後にした
「早乙女くんどこにいけばあなたのいとこ様には会えるのですか?」
校門を過ぎたあたりで斎原がふりかえり進に尋ねる
正直どこに行ってもあえないしある意味今あっている
さあどうしようかな
「あっあいつはさ結構どこにでもいるからなぁ あははあはは」
「あ い つですって?」
急に斎原のトーンが重くなった
その変化にあっけにとられる進に
「そういえばあなたのいとこ様は名前はなんなの?」
っく名前なんてあるはずがないどうする
「えっと なんだったかなぁ~~」
名前を考えるために時間稼ぎをする
「あなたまさか名前を忘れたなんて言わないでしょ もしそうだとしたらもうあなたには頼らないわ その程度のかかわりしか持たない人が役に立つとは思えないし」
っな いよいよやばいな ここで名前を出さなければこれからの作戦がなにもかもぱぁだ
名前名前名前名前
「さ…おと……め……………い…の…り」
「あの方の名前はいのりというのね」
斎原は名前を聞けたのことで呼びやすくなり、いのり様いのり様と小声でいいながら先に歩いていく
その後ろで進は下を向き落ち込んでいた
あーー娘の名前にでもしようとあっためておいた名前だったのに
問い詰められた進はやむなくすぐ出た女性の名前をいってしまった
あまり女性に興味がない進が出てくる名前は少なく、前大輔と一緒に子供ができたときにつけようとお互いに言い合った名前しか出なかったのだ
そんな風に落ち込んでいる進のことなどどこ吹く風とばかりに通常通りに動く斎原
「早く行くわよ 早乙女」
ん?あれ斎原ってもっとおとなしめの話し方じゃなかったっけ?
疑問に思った進は
「なんか扱いかわった?」
「正直に言うわ 私今まで猫かぶってたの」
振り向きながら彼女はぶっちゃけ始めた
「あんなに下手に出てしゃべっていたというのにあなたときたら屑でカスでいのり様のことも名前が即座に出ないほどの接点しかないなんて期待外れもいいとこよ 今までは一様いのり様の関係者だから下手に出てあげてもいいかなぁと思ってやってたけどあんまり接点がないみたいだからもう素で行くわ」
今までたまっていたものが一気に吐き出すように進の悪口をいう
さすがに今日あったばかり(元の状態で)なのにこのいわれようにはカチンときた進は
「今日会ったばかりで斎原が探してるから付き合っているってのになんなんだよその言いぐさは」
「は?頼んでないわ それに探すのに貢献できたことといえば名前を提示できたくらいじゃない」
「っなら……」
あやうく勢いで探すのを投げ出し帰るといいそうだったが進はなんとか踏みとどまった
「ならなによ」
中途半端になった言葉の先を聞きたいみたいだがそれを言ってしまうと斎原が俺の知らないところで俺(女装した進)の調査をするはずだそれでは俺の秘密が見つかりやすくなってしまう
ここは我慢だ
「なんでもないよ それより探しに行くんだろさっさと行こうぜ」
今までの感情を振り払うかのように進は斎原の先を走り出した
「ちょっちょっと待ちなさいよ」
急に走り出した進にあわててついてくる斎原
このやたら頭にくる女をうまく誘導することなんてできるのだろうか 一緒に話をしているだけで気が狂いそうだ
だけどここであきらめるわけには
高校生活は始まったばかりこんなところで俺の秘密を知られるわけにはいかない
「まてっていってるでしょうがああああああ」
斎原はそう叫ぶと追いかけるスピードをさらに上げ進にもうすぐ追いつくというところでジャンプそして華麗にドロップキックを決めた
地面に倒れる進は思う
誘導なんてあきらめてもうこいつとはかかわりたくないな
でも有効な方法はほかにない
「待てって言ってるんだから止まりなさいよね」
倒れている進の隣まで来て進を見下ろしながら斎原が自分の言い分を主張する
現在進は地面に倒れている
そして斎原はスカートをはいている
その斎原が倒れている進に近づいたら
「パンツ見えてるぞ」
ストレートすぎたのかもしれないでもそんな後悔は遅すぎた
もう目の前には靴の裏がひろがっていたのだから
進は斎原の行為を今後作戦が完了するまで我慢できるかが 今一番の不安だった