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急募 ガチムチ婚約者 *但し45歳以上に限る【連載版】  作者: 甘寧


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 ──婚約適齢期。


 それは貴族の令嬢ならば誰しもが通る道。


 大抵の者は、人生で一番盛れている10代の内に婚約相手を見つけて婚約を結んでいる。

 学園に通えば出会いなど指の数以上にあるし、高貴な方々ともお近付きになれる。

 ちゃっかり婚約を結んで卒業していくのがお決まりとなっていたが、シュツェル伯爵家の娘である私、ミーリアム・シュツェルは適齢期を過ぎてもなお、婚約には至っていない。


 それは何故か?


 理由は簡単。どの令息も私の好みじゃない。


 学生時代には度々声を掛けられることはあったが、どいつもこいつも早く相手を確保したいと言う思考がダダ漏れ。そもそも、そんな簡単に釣れるような容姿も身分も肩書きも持っていないだろうに……


 まあ、その様なことをバカ正直に伝えると「ブス」だの「譲歩してやってんだ」だの「ママが言えって」などのクズ発言。


「中身まで悪いなんて致命傷よねぇ」


 言われっぱなしは性にあわないし、他の子がコイツらの毒牙にかからないようにと、注(・)意(・)はしておいた。


 他の子の戸籍は守れたのかもしれないが、このままではお父様に無理やり婚約を結ばれて、私の戸籍が汚れそうな所まで来てしまった。


 そこで、私は強硬手段に出た。




 それは──……




「ミーリ!!ミーリアム!!これはどういう事!?」

「あら、お姉様」


 物凄い勢いで部屋に飛び込んできたのは二つ上の姉、アネット・シュツェル。

 私と違って誰に対しても気立てが良く、面倒見のいい姉は幼馴染であった侯爵家の令息と早々に婚約してしまった。

 正直、この姉なら王太子でも落とせたと思う。手近で済ませるには勿体ないが、令息と一緒にいるお姉様は完全に恋する乙女の顔をしていた。


 まあ、お姉様が幸せならなんでもいいが、その姉がこれまで見た事ないほどの形相で部屋に入ってきた。


「「あら」じゃないわよ!!何なのこれは!!」


 バンッ!!と叩きつけるように机に置かれたのは、私が数日前に発行した告知文。


 その内容は──



『急募


 シュツェル伯爵家の令嬢ミーリアムの婚約相手を募集します。


 筋肉質で大きな体格をお持ちの方、肉体に自信のある方、この機会にお待ちしております。


 家柄、学歴、年収不問。

 私を愛してくれるお方だとなお可。


 ※但し、年齢45歳以上に限る。


  ミーリアム・シュツェル』




 これを街のあらゆる掲示板へ張り出した。


「見ての通り、婚約相手の募集ですが?」


 キョトンとしながら首を傾げると、姉の顔が見る見る赤く染っていく。


「なに呑気に言ってるの!貴方、貴族の令嬢なのよ!?婚約相手を募集するってどういう了見なの!」


 これほどまでに怒られるのは生まれて初めてのこと。だが、怯む素振りは一切ない。


「仕方ないじゃないですか、私のお眼鏡にかなう相手がいないんですもの」


 この募集を見て分かるように、私の好みはガチムチ体型の4(・)5(・)歳(・)以(・)上(・)のおじ様だ。


 幼い頃から私の好意と興味はガチムチのおじ様以外に向けられた事はない。

 周りの令嬢達が王太子殿下を目で追っている中、私は後ろで控えている中年の騎士に目が奪われた。


 品のある笑い方じゃなく、豪快に笑う姿がかっこよくて、笑った時に出来る目尻の皺はもはや芸術。


 そんな私の初恋は鍛冶屋のおじさん。

 汗だくで熱された鉄を打つ姿に一目惚れし足繁く通ったが、お姉様にバレてしまい暫く屋敷に軟禁された。

 その軟禁中におじさんは結婚相手を見つけて、いつの間にか既婚者になっていた。


 全てはお姉様の差し金。お姉様は私の好みを中々理解してはくれない。


 酸いも甘いも熟知したおじ様こそ最高の伴侶。何故それが解らないのか、理解出来ない。


「ミーリ、いい加減目を覚ましなさい」

「お姉様こそ、おじ様の素晴らしさを理解した方がいいわ」


 諭すように真剣な表情で言われたので、こちらも負けじと真剣な表情を崩さない。


「いい事、おじさんと一緒になったっていい事ないのよ?体臭は臭いし…」

「体臭はフェロモンです。香水臭いそこら辺の殿方より余っ程素敵な匂いです」

「息も臭いのよ!?」

「口臭など、食べ物を食べている限り臭うのは当たり前です」

「いちいち説教くさいし」

「私の事をちゃんと見てくださってる証拠じゃないですか」


 必死に悪い部分を切り取り上げていくが、その都度冷静に論破を繰り返した。


 いい加減おじ様批判の集中砲火を止めないと、中年の使用人達がダメージを受けて、苦しみながら床に倒れ込んでしまって仕事がままならない。


「お姉様…その辺で止めておかないと、この屋敷の生活水準が大幅に下落しますよ?」


 床に倒れる使用人達を指さすと、グッと言葉を飲み込んだのがわかった。


「あぁ~~~もう!分かったわよ!そんなに言うなら、私を納得できるおじさんを連れてきなさい!」

「別にお姉様に納得して頂かなくとも……」

「黙らっしゃい!お父様とお母様はこの募集を見た途端、泡を吹いて倒れちゃったのよ!?貴方の婚約者はわたくしがしっかり品定めさせていただきます!」


 それだけ言うとお姉様は部屋を出て行った。

 お父様とお母様には悪い事をしたと思っているが、何も倒れることはなかったんじゃないだろうか。

 私は幼い頃から散々おじ様と結婚すると断言していたし。


「しかしまあ、自分で掲示しといてなんだけど、こんな紙切れ一枚で集まるとも思いませんけどね」


 募集の紙をヒラヒラしながら呟いた。

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