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2人の贖罪セカイ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者のタマゴォ】/燿霞乃夜
第1章

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講義前談話




「おはっよーー!」



 扉を開け、ドリオーが元気よく挨拶をする。

 その挨拶の向かう先は、窓側の席で話している2人だ。



「あ、やっほー」

「おはようございます」



 オレも抑えた声で「おはよう」と軽く手をあげて挨拶を返しつつ、ドリオーと2人の元へ向かう。



「アイトくんっ、今日はちゃんと起きてる?」

「ばっちり。なんなら冴えてるくらい」

「それはよかった」



 甘い微笑みを浮かべながら、名前を呼んで話しかけてくれる愛嬌のある少女――エレナだ。

 綺麗な茶髪を肩近くまで伸ばしていて、年齢は俺と変わらないくらい。


 周りからは村一番の美しい娘、と評判の子だ。

 もう一つ付け加えるなら、オレの異世界ストーリーのヒロイン枠。


 別にまだ付き合ってるとかではないけども。



「てか、むしろエレナの方がまぶた重そうじゃない?」

「そうかも。ちょっと昨日夜更かししちゃって......。

 今日は私の方がやばいかも」



 クスっと、冗談っぽくエレナが笑う。

 前回はオレが講義の途中に寝落ちしてしまったが、今回は彼女の番になりそうだな。


 そんなヒロイン候補の子と他愛もない言葉を交わし、ほんのり心地よさが胸を撫でるのを感じる。



「今日はドリオーくんと一緒だったんだね」

「ああ、廊下で偶然会った」

「俺がいねぇと迷子になっちゃうからなあ、アイトは」

「おい」



 軽くツッコミを入れて、オレもドリオーにチョップをお見舞いする。



「お前らも一緒に来たのかあ?」

「はい」

「10分前くらいにねー」



 ――――。



「つーか、まだエレナとレンだけか?もうそろ時間なのに2人来てないのか?」

「リセならあそこにいますよ」

「ほんとだ」

「前回出された宿題、終わってないんだって~」

「ははッ、なるほどな!

 大丈夫かー?リセ―!間に合いそうかー?」



 ドリオーが声を少し張り上げ、少し離れた席に居た薄桃色の長髪の少女――リセに声をかける。



「今ちょうど終わった...!」



 そう言って一枚の紙を胸元に持ちながら、「ごめんごめん...」とリセも談笑に加わる。



「結局なんて書いたんだよ」

「お菓子屋さん、とかかな...それがダメでもご飯を作るお仕事がしたい...って考えてる...。

 その下は料理が得意なこと...食材の知識に自信があること...あとは、場の空気を読んで動くことができる、って書いてみた......」

「おー、リセらしくていいじゃん!」

「料理の仕事がしたいって言ってましたもんね」

「お菓子屋さんとか可愛い~!」

「すごいな」

「そ、そうかな...?」



 前回出された宿題、それは就活でいうところの『自己分析』的なワークだった。

 もっとも、オレは就活をやったことがないのであくまでイメージの話だが。


 紙の上部には、興味のある仕事、職業などを記入するスペース。

 その下には自分の得意なことやアピールできる知識、性格的な強みなどを書くスペースが設けられている。

 具体的なところまで決まっている人はそれを書けばいいし、そうでない人は部分的、ざっくりした内容でも構わないとのこと。


 今回はこれを記入した状態で持ってくるようにとの指示だった。



「みんなはなんて書いたの?」



 

 あー、まずい。

 これ順番に公開していく流れだ。




 誰からいくのか、一瞬4人で顔を見合わせてから――。



「じゃあ私から!」



 整えられた茶髪を揺らしながら、少女が軽く手を上げた。



「私は、劇人、行商人、あとはざっくりと接客の仕事って書いたよ

 下の欄は人と話すこと、みたいなことを書いたかな。  

 とりあえずって感じだけどね~」

「……意外。っていうか、もっとなんか“お花屋さん”とかかと思ってたぜ」

「ドリオーくんの目に私はどんな風に映ってるの?」



 口元に手を添え、「フフ」と笑いながらそう返すエレナ。



「どれも全然違う仕事っぽいけど…。どうしてそれらにしたの?」

「全部方向性がバラバラ...だよね...?」

「そうかな…?私はそんなにやりたい!て思うものがなかったからさ。

 自分が得意なことって視点から考えてみたんだよね~」

「得意なこと、か」

「それで劇人、商人、接客かぁ。よくわかんねぇけどすげぇな」



 オレもよく分からなかったが、きっと彼女にしか分からない考えがあるのだろう。



「レンは知ってたのかあ?」

「少し前に聞きました。エレナらしいとは思いますよ」



 ――――。



「へ~。で、そういうレンはなんて書いたんだ?」

「僕は政治公職です。他に選択肢はありませんね」

「うげぇー。やっぱエリートは違うなぁ」

「す...すごいね...」

「レンくん優秀だもんね」

「そんなことはありませんよ。両親の意向も汲んでのことです」

「ドリオーはどうなんだ?」

「お、俺か!?俺のも聞きたいか!?

 そうだな~、しょうがないな~、教えてやるかぁ~!」



 待っていた!と言わんばかりの表情で、記入済みの用紙をオレたちに披露してくれる。

 その紙の上部には大きな文字で一つだけ職業名が書かれている。



「俺は親父の大工仕事を継ぐ!!!」



「まあそうだよな」

「え?」

「予想通りって感じだね」

「だと思いましたよ」

「いちばん...分かりやすいかも...」

「え、え?」



 オレたちがもっと良いリアクションをすると予想していたのか、ドリオーはきょとんと呆けた面をする。



「な、なんだよみんなして!もっと驚いたりとかしてくれよ!」

「いつも家の仕事手伝ってるもんね、ドリオーくん。」

「村から出るつもりもなさそうだったし。そのくらいしか思いつかないな」

「ははッ、流石にバレバレだったか」

「隠してるつもりだったの?」

「いや全然」

「なんだよ」



 ドリオーのいつも通りのふざけた調子に、笑い声が広がった。

 これでオレ以外の全員は一通り発表を終えた。


 みんなちゃんと将来像を描けていてすごいな。


 心の中でそう感想を呟いていると、自然と視線はこちらに集まる。

 とうとうオレの番か・・・



「じゃあ最後はアイトだな」

「聞きたい聞きたい!」

「オレは――」



 オレが喋ろうとした瞬間、ガシャン!と声が別の音にかき消された。

 誰かが勢いよくドアを開けた音だ。



「ハーーッハッハッハ!待たせてすまないな、咲きを夢見る蕾たちよッ!」

「あ」

「来た...」

「来たな」

「来ましたね」



 そろそろ講座が始まるギリギリの時間。

 オレがこの村でよくつるむメンバー、その最後の一人の登場だ。



「遅いぞー!タイゼン」

「ハッハッハ!

 ヒーローは遅れてやってくる、だったか?それだ!」

「んだよそれ」

 


 厳密にはまだ遅刻の時間ではないので“遅れてやってきた”に入るのかは分からないが、そこに突っ込むのは野暮だろう。


 それよりグッドなタイミングで来てくれた。

 本当にヒーローのようだったぞ、タイゼン。



「フッ、そんなに我に会いたかったのか?仕方のない奴らだなッ!」



 一言放つごとに決めポーズをしている。やかましい男だ。



「騒がしくなったな」

「そうだね~」

「その喋り方いつまでするつもりなんだ」

「…何のことだか、さっぱりだッ!」



 初めて会った時から彼はこんな調子だ。

 きっと何かに影響を受け、深刻な病を患ってしまったのだろうな。

 オレも気持ちはわからなくはない。



「温かい目で見てやろう。悪気はないと思うんだ」

「なっ…!そ、その憐れんだ表情はやめろ!

 貴様が一番恐ろしいぞ、アイト!」

「そーいや、アイトはタイゼンのこの喋り方の元ネタ、知らないんだよな?」

「…ッ!そんなものはない!」

「ああ、多分知らない。そんな有名なの?」



 みんなは知っていたのか。

 アニメやゲームの文化はさすがになさそうだし、現実の人物ってところだろうけど…。



「有名も有名、超有名だぞ」

「そう、なの?」

「知らない人がいるなんて思わなかった~」

「伝説...とか言われてるよね...」



 随分と壮大だな。

 『伝説』なんて肩書き、重すぎて可哀そうなくらいだ。



「まあタイゼンくんのその口調はちょっと大げさな気もするけど…」

 誇張したものまねって感じ?」

「実際会ったことねぇから分かんねぇ、どうなんだろうな」

「わたしも...」



 会ったことは誰もないのか。


 それもそうか、簡単に会えたら伝説っぽくないか。



「我も見たことはない!だが、王者のごとく威厳ある話し方だとは聞いたことがある。

 だからこんな感じかと思ってだな…」

「やっぱり意識してんじゃねぇか」

「... ッ!いやッ!」

「ものまねのクオリティは一旦置いとくとして、伝説って具体的にどういう意味で伝説なんだ?強いとかか?」

「そんな単純な話ではない!強さなど前提にすぎぬよ!」



 強さだけでなくそのうえで何か別の要素もあるということか



「別に俺も詳しいわけじゃねぇけど、伝説って呼ばれてる理由は彼にまつわる様々な逸話からだって話だな。

 例えば… “かの伝説が生まれた瞬間、圧倒的なオーラを見てその場に居た全員が思わず跪き、頭を下げた”とかか?」

「 “彼が足を踏み入れた土地は100年豊作”...とも言われていたりするね...」

「ただの英雄とは訳が違うのだ!」



 なるほど。


 要は、悪者を成敗!的なものに限らず、いろんな角度からのエピソードがあるってことらしい。

 にわかには信じがたいが、これはオレがこの世界の人間じゃないからだろう。



「私たちとは生き物としての格が違いすぎる存在。

 平和があるのは彼の存在のおかげ、っていう主張する人もいるくらい」

「へー」



 珍しくエレナも真剣な顔つきで話している。



「我々が名前を出すのすら恐れ多いッ!」



 ここまで誰も名前を言わなかったのはそういうことだったのか。

 それともタイゼンの冗談に付き合ってあげてるだけなのか...?


 この世界の事情に疎いオレには掴み切れない話だな。



「一回くらい会ってみたいな」

「なにッ!?いくらアイトといえど伝説を愚弄する言動は見過ごせないぞッ!」

「え?」



 タイゼンはこちらを威嚇するように構え、「アチョォ!」と虚空を殴り始める。

 会いたいと口にすることさえ、無礼に当たるらしい。



「あははッ、タイゼンは信者だからなぁ!怒らせちゃったなぁ」

「おぅ...なんかごめん」

「分かればいいさ、伝説は慈悲深いのだからッ!」



 伝説伝説くどいな。というのは流石に心に留めておこう。



「皆さん、戯れはその辺にしておきましょう。

 そろそろ始まりますよ」



 そう声がかけられるのと同時に、複数の大人が講義室に入ってくる。




 いよいよ講義の開始だ――。







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