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2人の贖罪セカイ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者のタマゴォ】/燿霞乃夜
第1章

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1人の友人






 建物に入ると、ほのかに木の香りが鼻を通り抜ける。

 そこそこ古い建物らしいが、リフォームされたばかりなのか、中は年季を感じさせないくらい綺麗だ。


 講座とはいったが、ここは学校ではなく村の公民館のような多目的施設だ。

 そこの部屋を一部借りて、講義は行われている。


 今回で何回目の出席だったか。


 そんなことを考えながら、オレは目的の部屋へと向かう。


 建物の構造がまだ頭に入りきっていないので、横目でちらっと一つ一つ部屋の中を覗き、目当ての部屋であるかどうかを確かめながら歩みを進める。



 すると後ろからドンドンドンッと、せわしない足音が近づいてきた。




「おはっよーう!!!」

「おはよう、ドリオー」



 

 オレの背中を手の平でパンッと軽く叩きながら、元気よく挨拶してくれた青年は――ミリナ村での友人一号ことドリオーだった。


 向日葵色の短髪が特徴的な、日焼け肌のハツラツ系男子。

 話しかけらると、思わずこちらもテンションが上がる。


 何気ないことかもしれないが、こう元気よく挨拶し合うというのはなかなか気分の良いものだ。

 友人とあまり頻繁に挨拶を交わすことがない人生を送ってきたから、つい心の中でいちいち反応してしまう。



 あ、いや、断じて友達がいなかったわけではない。

 指で数えられる程度にはいたはずだ。

 しかし友人との挨拶ってどうしても『うい』とか『っす』みたいな、挨拶のなりそこないみたいな言葉になりやすい。だからこうや――




「おーーい!ア!イ!ト!」

「え?」

「なにボーっとしてんだよ」

「すまんすまん、ちょっと考え事してた」




 ただの挨拶に感動してた、なんて言いづらいので、ここは濁しておく。


 やれやれといった顔で、軽く頭をチョップされた。



「職探しのことか?まあお前の場合、俺らよりもいろいろ大変そうだもんなぁ。」

「ん...そんなとこ。

 てか、合流できてよかったわあ。ほんとこの建物広くてさ…」

「ん?あー。そりゃあ村で一番大きな建築物だしな。

 もしやまた迷ってたのか?」



 ニヤッと笑いながら聞いてくる。

 ちなみにこれまでの何度かの挑戦、今のところ最短距離で講義室に辿り着けたことはない。



「まだ迷ってはいなかった...!ギリセーフ!」

「いやぁ思い出しただけで笑えるわ。あんときのお前」



 げらげらと笑いだすドリオ―。


 オレは職探し初回の集まりの時の記憶を呼び起こす。

 散々な思い出だ。ほんとに。




 ◆◇◆


 初めてこの施設に足を踏み入れたあの日。

 急いでいたというのもあってか、入る部屋を間違えてしまった。


 扉を開けると、とてもこれから就職するとは思えない年齢層の人たちが集まっている。

 村の子供たちだった。

 各々絵を描いたり工作をしたりしている。

 教室には子供たちの保護者らしき大人もいて、一緒にものづくりイベント的なことをやっている最中だったっぽい。


 頭の中の『?』が増え続け立ち尽くすオレを、児童の一人が

 「おっきいお兄ちゃんも一緒にやるの?」と勧誘してきた。

 頭が真っ白だったせいか、オレもオレでなぜか二つ返事で承諾してしまい、一緒に絵を描くことに。


 それからおよそ十数分後、力作が出来上がった。

 可愛い猫のイラストだ。


 が、周囲のリアクションは期待していたものとは違った。

 「怖い!」「人間みたい...」「()()()()()()だ」「気持ち悪い」

 と悲惨な評価だった。

 なかでも歳のいかない子に対しては、周りの保護者が「あまり見ないように」と注意までする始末。

 妨害行為として、オレは大人たちに教室から追い出されてしまった。


 ◇◆◇

 



 と、そこまでの一部始終を廊下にいたドリオーに全て覗き見られていた。って感じだ。



「いやぁ、普通気づくだろ。なんですぐ教室出なかったんだよ」


 笑いの余韻をまとったまま話を続けるドリオー。


「来たの初めてだったし、いろいろ勝手がわかんなかったんだよ」

「だとしても一緒に参加はねぇだろ」

「い、いや前の授業が終わってなかった的なアレだったかもしれねぇじゃん...。

 時間潰ししよっかなーって...ね?」

「なーにいってんの」


 とりあえず適当に言い訳はしておいたが、納得はしてもらえてないっぽい。

 自分でも何を言っているのかよくわかんなくなってきた。


「てか見てたんなら助けてくれよ!」

「ははッ、わりぃわりぃ」


 片手をひらひらさせながら軽く謝罪される。

 このまま風化してくれたらありがたい。


 しかし散々な思い出とはいったが、悪いことばかりでもなかった。



「でもよかったんじゃね。

 あの出来事をきっかけに子供たちと仲良くなれたんだろ?」

「まあね」

「お前、話し相手俺らか食堂の店主しかいなかったしな。

 よそから来たんだし仕方ねーっちゃ仕方ねーけど」



 その通りだ。


 トルナおばさんとバルドおじさん。

 店に来た時に話しかけてくれて、そこから仲良くなったドリオーたち。

 彼らくらいしか交友関係がなかった。


 よそ者、というだけならそこまで珍しくはないが、それに加えて異色の格好。

 おまけに、オレが纏う話しかけづらいオーラが合わされば無理もない。

 望んで纏ってるわけではないが……。



「確かにあれ以来、関わる人が増えた感はある」

「変わった見た目のやつだ、ってみんな近寄りづらかったかもしれないけど、子供たちが懐いてるの見たらそれもマシになった。

 子供が集まるところは安全だ、みたいな雰囲気ってあるもんなー」



 きっかけこそ最悪だったが、あれでガキんちょたちの警戒心はだいぶほぐれたらしい。

 子供たちと仲良くなってからは、その保護者や周りの人たちともどんどん関わる機会が増えていった。


 あの出来事も意外と皆気にしてなく、ずっと輪の外にいたような人生だったオレも、やっと世界の一員になり始めたような気がして、少し嬉しかった。



「てか、なんでおまえはオレと仲良くなろうとしてくれたの?

 変な奴そうだなぁ、とかは思ってたんでしょ?」

「ん?そりゃあ変な奴だったとしても悪い奴だとは思えなかったからな。あんな健気に店の手伝いしてる姿見せられたらさ。

 それに歳も近そうだったし、友達が増えんのは楽しいじゃん?」



 まっすぐそう答えてくれるドリオー、


 なんだか少し照れくさい…。




「……せんきゅ」

「んだよいきなり」




 ――――あ、そういえばさっきの話で思い出した。



「ねえドリオー、そいやちょっと聞きたいことがあるんだけどさ…」

「着いたぜー」




 オレがちょうど質問をしようとしたタイミングで、目的の部屋に到着した。





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