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2人の贖罪-世界+ ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者のタマゴォ】/燿霞乃夜
第1章 非日常を求めて

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合格者再通知






 人の気配を失った村を進む。


 

 半ば壊れ、半ば残った家々の向こうに、ぽつりと数台の馬車が停められていた。






「――では、馬車の手配をしてくる。ここで少し待っていてくれ」






 そう言い残し、ヴィクトリーノは馬車の方へ歩いていく。



 手持ち無沙汰になってそれを見ていたオレに、不意に横から声がかかった。




「ちょっといいか?」


「……?はい」




 話しかけてきたのは、ここまで隣で歩いていた銀髪の男だ。



 たしか名前は…トラノさん、だったか。




「今はまだ、気持ちの整理はついてないと思う。

 これからのことを考える余裕はないかもしれないが、一応一声かけておきたくてな」

「は……はぁ」




 どう答えたらいいのかわからず、曖昧に頷く。



「セントラディアについてから、もし行き場に困ったりやること見つからなかったりしたら――“総学院”に来るといい」

「総学院……?」

「ああ。魔法はもちろんだが、それ以外にも幅広く知識や技術、人は揃ってる。

 まだ何をするか決めかねている人間が足を運ぶ場所としては、悪くないはずだ」



 それは、勧誘というより提案だった。


 ルピナスと違い、オレには当てがない。

 オレの様子を見て、それを見越したうえでの言葉だったのかもしれない。




「――トラノくん、こっち手伝ってもらえるかしら?」


「分かりました」




 呼ばれた男は去り際に、もう一度オレに向き直る。




「……覚えておくだけでいい。

 頭の片隅にでも入れておいてくれ」




 短いやり取りだけ残し、彼は話を切り上げた。






「学校か……」






 正直なところ、今は乗り気にはなれない。



 けれど、どちらにしろ向き合って考えなければならない。

 何かしらの答えは、出さないといけないのだから。




 生きることを選んだのであれば――。






「――アイトくん」






 トラノとの会話が終わるや否や、今度は背後からオレを呼ぶ声がかかった。




「今の話ちょっと聞いてたんだけどさ……」




 目は合わせず――ルピナスは控えめに口を開いた。




「……アイトくん、旅は好き?」

「え、あ、まあ…好きだけど……」




 唐突な問いだとは感じつつも、オレは力の抜けた声で答えた。


 退屈な日常の繰り返しが嫌いなオレは、非日常を味わえる旅行は、昔から好きだった。



「ほんとほんと!? だったらさ…。

 ――ルピナと一緒に旅をしない?」


「――え?」



 質問の意味を理解しようとしていると、彼女は構わず話を続ける。



「ルピナは、今()()()を探して旅を続けてるんだけどさ。

 もしこれから学院通うにしても通わないにしても…。

 とにかく、セントラディアに身を置くつもりならさ、よかったらルピナと…旅をしない?……旅仲間ってことでさ」



 話している間、ずっとルピナスはオレの目を見なかった。

 というより、見られなかったのだろう。


 それだけで、どれほど勇気を振り絞って誘ってくれているのか、分かった。



「旅、か……うん」

「ほ、ほら!首飾りの件とかもまだ気になるし……さ? 

 もちろん無理にとは言わないけど……!」




 オレは言葉を探すように一拍置いてから、続けた。




「――じゃあ、喜んで。

 オレも、連れて行ってほしい」




 胸の奥で、何かが灯る感覚。


 根拠のない期待。


 でも、確かに前に進める予感。






 ――オレはその可能性に、賭けてみることにした。




「んんんよっっし…!!

 じゃあ、これからよろしくね」




 ほっとしたようにルピナスの表情が明るくなり、勢いそのままに手を差し出してきた。


 オレはその意図を理解し、静かに握り返しながら――




「……あ! 首飾りで思い出した。

 これのことなんだけど」




 オレは思い出したように、彼女から託されていた四芒星の結晶へと指を伸ばす。


 そして、あの時の出来事をルピナスに簡単に話した。



 この首飾りを通して、オレは魔法を使えたこと。

 どうやったのかは自分でもよくわかっていないこと。

 一回撃ったらもう撃てなくなってしまったこと。




「なるほど……魔法を…」

「そういう道具なの? これ」

「いや、分からない…。少なくとも今までは何もなかったし。

 念のため聞いておくけどさ、アイトくん自身がもともと魔法を使えたとかではない?」

「それは絶対ない」




 こっちに来てから、何度『自分の隠された脳力が開花する展開』を妄想したことか。


 痛いほど現実を見せられたのだから、これは確実に言い切れる。




「――だから、絶対この首飾りのおかげだと思うんだけど」

「うーん、そうだね……」




 ルピナスは顎に手をやり、少し考え込むと




「――どっちにしろやっぱり誘ってよかった。帰ったらいろいろ調べてみよう。

 とりあえずルピナと一緒に拠点まで来てね」

「分かった。……改めてよろしく、ルピナスさん」

「 “さん”なんてつけなくていいよ。

 これからは仲間、……戦友!になるんだし……!」




 『仲間』か……。




「どうしてもっていうならルピナ様、って呼んでもいいけど??

 …ってのは冗談だけどさ……」

「じゃあ、 “ルピーナ”にしようかな」

「……。ふぅん…」




 一瞬きょとんとした顔を見せたルピナス。




 ――あれ、距離感ミスったか?


 少し仲良くなれたかなと思って踏み込んでみたんだけど……。




 そんな杞憂をしていると、






「――待たせたな。2人はあちらの馬車に乗ってもらいたい」




 ヴィクトリーノが出発の合図を告げに来た。



「実は、こちらの兵にも数名戦死者が出ていたらしくてな。

 その分、あの馬車は予定よりも乗員数に余裕があるはずだ」

 

「......分かりました。すぐ行きます」

「じゃあルピナは先乗ってるね」

「――うん」




 やり取りを終え、ルピナスは馬車の方へ小走りで向かっていった。



 ――ついさっき出会ったばかりの子。

 だけどだいぶ打ち解けられた気がするな。









「一緒に、旅……」








 オレはずっと、あの日世界を跨いだ瞬間から、己の第二の人生が始まっていたと思っていた。

 

 けど、そうではなかったのかもしれない。


 きっと今日この時。

 彼女の招きを受けて、初めてこの世界に迎え入れられたのだ。




 だからこそ、本当の意味で再び歩き出せる。

 別世界での新たな(じんせい)を。






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