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2人の贖罪-世界+ ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者のツボミ】/ようかの夜
第1章 非日常を求めて

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夢見た別世界暮らし-2




 それからというもの、2人のおかげで衣食住には困らないので、オレは店の手伝いをしながら別世界ライフを満喫している。


 手伝いとは言っても、トルナおばさんの料理のアイデア出しをしたり、バルドおじさんがやってた木材集めを代わりにオレがやったりしてるくらいだ。

 これで恩返しに足りるかは分からないが、どっちにしろこんなことしかできない。


 チート能力! 魔法の才能! 伝説の武器! とかで最強無双展開を少しは期待してはみたが、生憎と凡人の域から出ることは叶わなかったしな。


 まぁオレが世界を飛び越えた方法は転生ではなく、多分転移とか召喚とかそっち系統。

 つまり、何か別の存在になったわけではなく、元の世界の人間のままこっちに来てしまったのだから、当然と言えば当然。


 かといって“前世界の知恵でこの村に革命を!”なんてことをする能力も気合いも持ち合わせていない。



 そんな事情もありオレの主人公ルートは没になったので、手伝いをしつつのんびり気ままに暮らすことにした。


 だが、このまま厄介になりっぱなしでいるつもりもない。

 実は、店の手伝いと並行して、ある活動をオレは進めていた。



「それで、職(・)探(・)し(・)の方はうまくいっとるんか?」

「んー、ぼちぼちって感じです…。

 特に得意なことがあるわけでもないし、どうしよっかなぁって」



 職探し。


 文字通り仕事を探してる、といえばそれまでだが、具体的な内容はざっくり言うと、就職活動に近いものだ。


 個人であちこち探し回ってるわけではなく、同世代の人が集まって、村の内外の仕事の説明を聞いたり、お互い情報共有をしたりできるセミナーのようなものに参加している。

 最近は、店の手伝いの前に、その集まりに顔を出すのが習慣だ。



「あまり力みすぎないようにねぇ。自分のペースでやるのが一番だよ」

「別にアイトがいつまでここに居(お)ろうが、ワシらは迷惑とは思わんで!

 手伝いもしてくれとるし、なんなら居てほしいぐらいやわ!」



 そう言って、バルドおじさんは『ガハハ』と笑う。


 その優しさはとても嬉しい。が、流石にいつまでもというわけにはいかない。

 いくら2人と気兼ねなく接する仲になれたとはいえ、負い目を感じる気持ちがなくなるわけではない。


 それに、



「オレもいい歳ですし、独り立ちしていろいろやってみたいんですよ。

 もちろんまだここに居たいって思いもありますけどね」



 小さく笑いながら、素直に考えを伝えてみる。


 前の世界から今の世界に飛んできた時に、タイムラグとかが生じてさえなければオレは今年で19になるはずだ。

 こっちに来てもう2,3ヶ月くらいは経つだろう、これまでとは異なる環境での暮らしにもだいぶ慣れてきた。

 純粋に1人でやっていきたいという気持ちも元から持ってはいたし、そろそろ独り立ちするには十分な時期だろう。


 まあ今の生活を維持する方が楽ではあるんだろうけどな。



「そう? アイト君がそうしたいって言うなら私たちは応援するけどね」

「まあでも、やたら世間知らずなアイトが社会に出てやっていけるかは心配やけどな。

 すぐ追い出されへんかったらええな!」

「うぅ……確かに」



 なんかフラグを立てられたような気がして、ちょっぴり不安になった。



「それはそうと、美味そうなもん食っとんな!

 …………ん、めちゃうまいなこれ。いもの食べ方で一番好きかもしれへんわ!」



 真剣なお話は終わって、話題はまた新メニューの話に戻る。

 バルドおじさんは、オレが食べていたハンバーガーの隣に添えられていた、じゃがいもの一品――フライドポテトを一気に10本ほど口に運んで感想を述べる。


 「食べすぎや!」と反射でツッコみたくはなるが、一応置かれてる立場が立場なのでツッコみづらい。


 ちなみに今さらではあるが、バルドおじさんのこの関西弁のような口調は、この村のものではない。

 彼は余所からこの村にやって来た側。

 彼の生まれ育った出身地の方で、この喋り方が一般的になっているらしい。



「これ、アイトが考えたやつやったか」

「はい。この店にある食材だけで作れそうだったので、トルナおばさんに提案してみたんです」

「へー、シンプルな料理なのに案外思いつかんもんやな!

 ワシらも長いこと店はやっとるんやけどな!」

「しかもね、この“ふらいどぽてと”、けっこう奥が深いのよ」



 言いながら、トルナおばさんは裏の調理場の方へ行くと、2枚の皿を両手に持ち、またこちらへ戻ってきた。


 2枚の皿の上には両方ともフライドポテトが盛りつけられている。

 しかし、全く一緒のものというわけではない。



「これ、食べ比べてみて。味付けは全部おんなじなの。

 違うのは切り方だけ!」

「どれどれ……」



 今、テーブルの上には3種類のフライドポテトが置かれている状態だ。


 元から置かれていたオレの皿には、細長いスティック状のポテト。

 トルナおばさんが持ってきた皿にはそれぞれ、同じくスティック状だが太く短めにカットされたポテトと厚切りのくし形ポテトが盛られている。


 オレは細長いやつが好きなのでこれをオーダーしたのだが、どうやら紹介した3つの切り方全て作ってくれていたみたいだ。

 バルドおじさんはそれぞれの違いを吟味するように、今度は3つの皿から、一本ずつポテトを味わっていく。



 ・・・・・・



 いや、オレのポテトもまた食うんかい。

 まだ手を付けていなかったが、残りがだいぶ少なくなってしまった…。



「んん……! 全然違うな。どれも美味いけどワシはこれが一番好きやな!」



 そう言って、くし形のフライドポテトを全て食い尽くすかのような勢いで平らげてく。



「店で出すときはどの切り方にしようかしら……」

「全部メニューに入れてみたらええんちゃうか? お客さんも好きなの選べるしな」

「それだと作るのが大変だわぁ」

「確かになあ……」



 2人が店の方針について相談してる間に、オレは朝食を食べ終える。

 


「ごちそうさま! そろそろ時間だし行きますね」

「おう、もうそんな時間か!」

「そろそろ開ける準備もしなきゃね」



 オレは手を洗い、2階の部屋に荷物だけ取りに行き、すぐまた1階へ降りる。



 そして扉に手をかけ、2人の方を振り返り、




「いってらっしゃい。時間空いた時にまたアイデア出し付き合ってねぇ」


「もちろんです! 行ってきます」


「頑張れよ!」




 明るく送り出してもらった。


 力強い元気をもらい、今日という一日の扉を開ける―――。






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