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2人の贖罪-世界+ ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者のタマゴォ】/燿霞乃夜
第1章

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次なる絶望

 





 開けっ放しにしてしまっていた玄関。




 オレはそこへ早足で向かう――。

 自分でもよく分からない感情だが、とにかく今はルピナスに早く会いたかった。




「――あれ?」




 外に出ると、『ここで待ってる』と言った場所にルピナスの姿はなかった。



「オレたちを置いて、逃げた…?わけないよな…」



 まだ会って間もない関係性ではあるが、そんな悪質なおふざけをするような子には見えなかった。


 とはいいつつも、あの子にはオレたちを助ける義理なんてない。

 万一逃げていたとしても責めることはできないのだが。




「おーい!……ルピナスさーん!」




 念のため一度呼びかけてみるが、反応はなし。


 家の周辺を探してみるも、見つからない。



 生き残りを探しに、周辺の家の中にでも入っているんだろうか。




「……まさか、な」




 ここまでの流れを思い返すと、どうしても良くない想像をしてしまう。


 魔法を使えて、あんな強いんだぞ…?

 簡単に負けるなんて思え.........思いたくない。



 いったんリセにこのことを伝えよう。流石にオレたち2人で動き回るのは危ない。 


 まだ家の中にいる彼女に聞こえるよう声を張り上げて、




「リセ!まずいことにな―――っ!」














 ――――巨大な顔、があった。














 後ろを振り向いた瞬間、忽然(こつぜん)と視界のほとんどを埋め尽くしたそれは、生理的な拒絶感を覚える妙に人間に似た顔。


 息が触れそうな距離で、こちらの反応を愉しみながら、オレの顔を舐め回すように見つめてくる。






 ――声も出せない。体も動かせない。視線さえも動かせない。


 できることなら心臓の鼓動さえ止めてしまいたい。




 オレの一挙手一投足が、この化け物の攻撃の合図になってしまう気がして――。






 無理だ。無理だ無理だ無理だ無理だ。




 絶対に逃げられない――――。








「あークッソ!!!やり過ごせなかった!」








 ――視界の端から差し込んだのは、聞き覚えのある声が放った、荒い言葉だった。




 絶命の淵に立たされた中で、意識だけをその声の方へ向けると、そこには悪魔のような風貌の少女――ルピナスが立っている。




 ――――え……!?




 今の今まで誰もいなかったはずの場所になぜ彼女の姿がある。



 そんな疑問が湧いたのも束の間、状況は待ってくれず否応なしに一転していく。






「ルピ――」


「――炎の魔法、レアオルブ!」






 オレが彼女の名前を呼ぶより先に、ルピナスは短く詠唱を唱え、魔法を繰り出していた。



 禍々しい杖の先から放たれた火の球が、目の前の大きな顔面に横から直撃―――生み出した一瞬の隙に、ルピナスはオレを抱えて巨顔の化け物から距離をとり、建物の陰へ。






 至近距離では輪郭すら掴めなかったが、退いたことでようやくこの怪物の全貌を視界に収めることができた。


正常な脳では理解が追い付くことのない異形の姿に、オレは心臓を鷲掴みにされたような恐怖に襲われる。



 これが現実(リアル)だなんて考えられるわけがない、史上最悪の悪夢でも見ているよう。




「なんだよ、こいつ......」




 全長はおそらく5メートル…以上もある、異様に大きな枯れた植物。

 そう形容するほかない外貌だった。



 コイツもきっと妙獣、なのだろう。



 真っ先に目に飛び込んでくるのは、各々が自分勝手に存在を主張する人面。

 大木に匹敵する太さの茎が伸びた先端に、咲くべきだったはずの花――の代わりに咲いた3つの人間に酷似した顔がぶら下がっていた。


 人間の上半身ほどもある3つの顔はそれぞれ、上の顔が嗜虐(しぎゃく)めいた笑みを、下の顔2つが、不機嫌そうな表情と涙ぐんだ表情を浮かべている。


 根元には不自然に膨らんだ葉の形をした何かがあり、それを一本足のように使い動いている。




ピゴラスとかいうブタに似た妙獣に負けず劣らずの――いや、それ以上に気持ちが悪い。






「これはヤバい……。ほんとにヤバい」






 隣でそう溢したルピナスの表情には、さっきまでの余裕は一切感じられない。


 よく見ると、さっき直撃したはずの魔法も、あの三つ顔植物にはあまり効いてないように見える。



「よりによって大型……。

 勢いで首ツッコんだの後悔したかも、正直…」

「大型?」



 彼女の言葉の中に気になる一語があり、オレは反射的に聞き返す。



「うん、あれ。妙獣の中でも特殊な…まあ簡単に言ったらそこら辺の妙獣よりも強い妙獣が2種類いるんだけど、そのうちの1つ。大型妙獣って呼ばれてるやつだと思う。

 ルピナが万全の状態だったとしても勝てるか分からないよ……」



 万全の状態だったとしても…?



「今万全じゃないってこと?」

「うん、ごめん…。

 実は旅の帰りで正直疲れてる。命力もあんまり残ってないし……」




 命力…?魔法を使うためのエネルギー、みたいなものか?


 とにもかくにも、頼みの綱であったルピナスの魔法無双はもう当てにしない方がいい状況らしい。




「どうしてこんな村に大型なんてヤツまでくるんだよ……」

「知らん!けどここがデュムールの近くだってこと、今はそれで納得するしかないでしょ!?」

「は…?」



 それと何の関係があるんだ………あ、そういえば今日の講義で…。


 ……いや今はこんなこと考えてる場合じゃない。

 この状況の打開策を―――






「......アイトさん...!ごめんなさい。だいぶ、遅くなってしまって......」






 張り詰めた空気が支配する中、少し離れたところから、頼りなげな声が小さく上がった………リセだ!



 待て…!ちょうどレンの家の前に大型妙獣が――。








「リセちゃん……!出てきちゃダメ!」


「......え?ルピナ――」








 ルピナスが身を乗り出して止めに行こうとするが、当然間に合うはずはない――。













 次の瞬間、三つ顔植物の上の顔――愉しむように笑う人面が、首とも茎ともつかない部分をろくろ首のように伸ばし、リセを頭から丸ごと呑み込んだ――――。















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