期せぬ合流-2
「......!アイト...さん?」
オレの呼びかけに反応して、相手もこちらに気づいた様子。
「…友達?」
「まあそんな感じ」
今のやり取りをみて、ルピナスがそう聞いてくる。
「よかったね」
いつも一緒にいたメンバーの中だと、正直リセとはそこまでたくさん話す間柄ではなかった。
それでも、『知ってる顔がいた』というだけで少し気持ちが楽になる。
緊張状態だった心に、ちょっとだけ日常が戻ってきたような。
「リセ…今1人?他のみんなとは会った?」
リセは弱々しく首を振った。
「そっか。村の人たちはこの建物に避難してるの?リセはこの村で起こってることってどこまで知ってる?
オレが知ってるのは妙獣、とかいうのが侵入してきて村の人たちを襲っ――」
話してる途中で、ルピナスがオレの服をそっとつまんで引いた。
その仕草に、質問攻めになっていたオレは「ごめん…」と言葉を止める。
「ちが...う。この中には誰もいなかったの。だから...他のところ探しに行こうと思って、今ここから出て来たの。
何が起こってるのかは...わたしも知らない...。
家に帰ったら、誰もいなくて...待ってたんだけど、さすがに帰ってくるの遅すぎると思って...外に出たら、妙獣がっ...いて......」
震えた声で精一杯説明してくれるリセ。
「この建物が村の避難所とかではなかったってことかぁ」
「ここじゃないならどこなんだ…」
「わたしもここだと思って...最初に来たんだけど......」
「え?」
ずっとミリナ村に住んでいるリセも、そこら辺の情報を把握してないらしい。
「この村…まさか緊急の時の避難所とか決めてないのか」
「でも話聞いてるとさ、ちゃんと決められてないとしても自然と集まってくる場所じゃない?ここがさ」
確かに、オレもリセも皆この場所に逃げてるんじゃないかと直感して、ここに来た。
他の人も同じように考えていてもおかしくない。
「なのに誰もいないってことは……」
村人の多くが、逃げる暇もなく自宅で襲われ…となっているのか?
――そうだ、思い返してみれば
「リセ、ここに逃げてくる途中に外で死体とかってどれくらい見た?」
「え...それは、まだ......」
やっぱりだ…。
体感ではあるが、死体の数が少ない気がする。
特に中心部に来てからはほとんど見ていない。
「この村もっと人いるよな…」
生きているならもっと誰かと会えるはず。
妙獣に殺られてしまっているならもっと死体が転がっているはず。
「喰われたとかじゃなくて?」
「だったら残骸…くらい残ってると思うけどな」
生死は関係なしに、村の人たちは一体どこに行ったのか…。
「……じゃあ家の中とかも探してみる?
妙獣が家の中に入ってくることもあるし」
「そう、だな…。
リセもそれでいい?ここら辺の家を地道に探っていくしかないけど」
「うん...できたらわたしのい――」
「――危ない!」
話の最中、ルピナスが急迫した声で叫び、オレたちを抱えるように倒れ込む。
――直後、空気を裂く音とともに塊が弾丸のようにこちらへ飛び込み、オレたちが今立っていた場所を粉砕した。
「――ッ!」
何が起きたのか、すぐに理解できた――。
あの投擲攻撃で間違いない。
尤も、投げているのかどうかは不明だが。
「これって…」
「――――」
事前に話を聞いていたルピナスも、状況を察した様子。
リセはこれを見たのは初めてなのだろう。腰を抜かしたまま、魂が抜けたように視線は宙を彷徨っている
「……うわっ、あれ…。人の、足だ。
…あっちにあるのも……」
引きつった顔でそうこぼすルピナス。
例のごとく、辺りにも破片や肉片と思わしき何かが散らばっている。
これを見る限り、オレたちをピンポイントで狙ったとは思えない。
狙いも定めず大雑把に撃ち放っているような印象だ。しかも今回は――
「飛んできた方向が違う」
さっきは村の中心から飛来したように見えたが、今回はまた別の方向からだった。
これを飛ばしてくる何者かは、おそらく移動している。
追うべきか…?逃げるべきか…?
「――大丈夫?リセちゃん」
ルピナスは放心したリセの肩にそっと触れ、彼女の名を呼びかけていた。
「......ごめんなさい...わたし...」
「うんん。立てる?」
ぼんやりしていた瞳に焦点が戻り、ゆっくりと意識が現実に帰ってくるのが分かった。
「アイトくん、今のがさっき話してくれたやつだよね?」
「うん…」
「ルピナはあっちの方行こうと思うけどどうする?多分相当危ないと思う。」
そう言って指さすのは、あの砲弾めいた攻撃が飛んできた方向。
「オレも…行く」
「...え、大丈夫なん...ですか?」
不安と戸惑いを含んだ声でそう漏らすリセ。
なんでわざわざ敵の方に行くの?とでも言いたげな顔だ。
「――あ、そうだ。まだ紹介してなかったんだ。
この人、魔法が使えるみたいなんだ。しかもめっちゃ強い。だからこの人が一緒に居てくれたら安全だよ、きっと」
「最強の魔法使いになるルピナスって言います。よろしくね。
さっきもカッコよく魔法で守ってあげられてたら完璧だったんだけど…」
「あはは…」と自嘲気味に笑うルピナス。
「ああ...だから...」
リセは改めてルピナスが握る杖をまじまじと見つめ、納得した表情を見せた。
「......私も、行きます。1人じゃ怖い...ので」
「オッケェ。なるべくルピナのそばから離れないようにね」
こうしてオレたちにリセも加わって、 “得体の知れない何か”の行方を追うこととなった。
変な話だが、こういう非常時だと普段特別親しかったわけではない相手が、やけに身近に感じられる。
この感覚が、今の自分を支えてくれている気がした。




