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2人の贖罪-世界+ ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者のタマゴォ】/燿霞乃夜
第1章

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奇妙な襲撃-2






「......っ......は?」






 目の前で起きた惨事に、処理が追い付かない。


 呼吸を忘れ、声も出ず、ただ目を見開いたままオレは立ち尽くしてしまう。




「――――」




 数秒遅れて聞こえてきたのは、ブタの化け物が満足げに友人の頭部を咀嚼する音。


 その表情はどこかこちらを嘲笑っているようにも見える。

 



 ――(もっと)も、あれに感情があるのかは分からないが。




 とにかくこの状況はまずい。

 多分想定していた以上の凶暴さだ。



 2対1の数有利ももう失った。

 あの化け物を仕留める方法は思いつかない。






 あれが食事に夢中になっている今のうちに逃げるしかないか…?


 様子を窺いながら、一歩後ずさり、逃げる準備を――






「……え、なんで」






 そんな余裕はなかった。




 ブタの化け物はタイゼンの頭の上半分を喰らった後、残された(むくろ)には興味を失った様子で、ゆっくりと視線を外す。


 


 そうして次の捕食対象――オレへと標的を移したのだ。




 ここで初めて、この奇妙な獣としっかり目が合う。

 人を冒涜するような不愉快な見た目、見続けていると頭がおかしくなりそうだ。






「――あ」






 そして、ずっと頭の中にこびりついていた小さな疑問の答えが出る。


 …やっと正体が分かった。


 村の人たちが度々口にしていた謎の生き物の存在……こいつがミョージュ―だ。

 ――否、妙獣だ。




 妙獣はその指のような脚で地面を掻き、こちらに狙いを定めている。


 一発噛まれれば終わり。

 こうなれば、危険だが賭けに出るしかない。


 この籠をやつの頭にかぶせて逃げる――。

 時間稼ぎにしかならないが、それでいい。




 オレは籠の口を反対に向け、身を低くして構える。


 獣の肩がわずかに沈み、聞いたこともない低い唸り声と同時に、こちらに向かって突っ込んできた――――。




「――んぐっ……!」




 ずっと握っていた恩人の腕を今この時だけは離し、全身を使って死に物狂いで猛進を受け止める——



「――よし…!」



 うまく入ってくれた。


 妙獣は籠に頭を突っ込んだことで、視界が悪くなり、無様にもがいている。




 今この隙に、急いでトバ食亭の建物の中へ逃げ込む――!




 走りざまに腕を拾い取り、中に入り扉を施錠し、客席の隅に身を隠す。




「......はぁっ......はぁっ!」




 信じられないくらい心臓が激しく鼓動している。


 窓から恐る恐る状況を確認すると、妙獣はちょうど籠から抜け出し、忙しない動きで辺りを探っていた。






「......バレては...ない?」






 ブタだから匂いで嗅ぎつけられるか?と一瞬焦ったが、どうやら鼻がいいわけではないのだろう。

 こちらには全く気づいていない様子。


 オレがいないと判断したのか、ブタ紛いの妙獣は村の中心の方へ向かって走って行った。






「......はぁぁ」






 やっと落ち着いて息ができる。


 念のためもう一度、窓から外の状況を覗き、ヤツがいないことを確かめてからオレは立ち上がった。




 あの惨劇を見せられた後だ。

 もはや期待などしていないが、ここへ来た本来の目的を果たすとしよう。






 夜なのに灯り1つつけていないトバ食亭の店内は、いつもとは違う雰囲気が漂っていて、うっすらと怖さを感じる。


 客席をぐるっと見回してみるが、人らしい影は見当たらない。



「上に逃げた…とか」



 もしかしたら物陰に隠れてまだ生きているかもしれない。望み薄と分かっていても、そんな期待を抱いてしまう。


 オレは視界が悪い中、慎重に2階への階段を上った。

 階段から近い位置にある部屋から、順番に扉を開けて、中を確かめていく。




「誰か、いたら...」




 返事をしてほしい。



 その言葉はだんだん小さくなっていって、最後まで声にすることができない。


 どうせ誰にも届いてないんだから。






 2階にある部屋もすべて確認したが、見つからない。

 となれば心当たりはあと1ヶ所。




 階段を降り、もう一度1階へ。


 客席を抜け、そのまま裏の調理場へ向かう。

 ここは他の場所よりも明かりが届いておらず、さらに視界も悪くなる。


 オレは壁や柱を頼りに、手をつきながら一歩一歩躊躇いがちに奥へと進んでいると、





「――ん」






 ……何かを踏んだ。


 べちゃっと靴裏にまとわりつくような、不快な感覚が足元に広がる。




 胸がざわつくのを無視しながら、地面に顔を近づけ確かめる。








「…うわぁっ……!」








 足元にあったのは、調理着を着た女性と思われる姿―――トルナおばさんの亡骸が横たわっていた。






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