『白影、戦線に立つ』
(間に合った……!)
凍土の風をかき分け、本部前に着地する。
アニエスの腕を支えながら叫ぶ。
「全隊!!
本部動線は俺が指揮する!!
氷走隊の侵入経路をここで断つ!!」
兵たちがざわめき、凍えた瞳に熱が戻っていく。
「中佐が……帰ってきた……!」
「これで……まだ戦える!!」
(急がないと……本部が崩れる……!)
「第一小隊!! 風下へ退避!!
第二小隊は左斜め前で射線を作れ!!
“風の裂け目”に誘導するぞ!!」
「了解ッ!!」
風向と地形を利用し、氷走隊を次々と撃ち落とす。
跳躍、着地、跳躍。
軌道はすべて未来予測どおりだった。
(押せる……押し返せる……!)
そう思った瞬間――
風が、唐突に“止まった”。
(…………?)
吹雪の音が消える。
まるで戦場が息を呑んだように。
「中佐!!
新たな敵影――!!」
報告より速く、“それ”は視界に現れた。
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【前線・兵士視点】
「な……んだ、あれ……?」
白い。
透けるように白く、細く、輪郭が揺れている。
氷走隊と同じ形状をしているのに、
ただ存在しているだけで怖い。
「動き……見えねぇ……
跳んでるのか歩いてるのかもわからん……!」
「え、影が……ない……?」
誰かが呟く。
その瞬間、白影は消えた。
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【ユーリ視点】
(未来が……途切れた!?)
風も揺れも跳躍前の“溜め”もない。
未来予測の線が、一瞬で白く焼き切られる。
「アニエス、下がれ!!
あれは……普通の跳躍じゃない!!」
「ここで置いていく気? 無理よ!!」
(くそ……!!
どこへ跳ぶ――)
白影が現れた。
“真横”から。
「っ!!」
ガキィッ!!
構えた銃が弾かれ、腕にしびれが走る。
(速い!!
読めない!!)
白影の跳躍は、予測の“外側”を滑ってくる。
まるで未来をわざと乱しているようだった。
「ユーリ!! 次!!」
「くっ……!!」
二撃目をギリギリで避ける。
足元の雪が鋭く裂け、白い粉が舞った。
(ここまで……読めない……!?)
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【アニエス視点】
(ユーリが……“固まってる”!!)
肩の動き。
視線の固定。
未来予測が乱れたときの悪い癖だ。
「ユーリ!!
未来じゃなくて……“今”!!
風の揺れを読んで!!」
白影が再び消えた。
「右下ッ!!」
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【ユーリ視点】
(風の……揺れ――)
雪片が、ひとつだけ逆方向へ跳ねた。
(そこだ!!)
ガンッ!!
白影の刃が弾かれ、跳躍がわずかに逸れる。
(読める……!
未来じゃなく、“今”なら!!)
「全隊!!
白影を“風裂の溝”に誘導する!!
射線を合わせろ!!」
「了解ッ!!」
白影が跳んだ瞬間、
風流が裂ける。
(ここが……奴の着地――!!)
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【イゴール視点】
遠くの高台で、イゴールは静かに目を細めた。
「なるほど。
未来を乱しても、なお戦うか……
ユーリ・コールドウェル。」
その声は愉しげで、どこか哀しげだった。
「だが……ここからが本番だ。」




