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剣の稽古

ソルランデットがずるいと言い出して、いつの間にかミルチャーとの2対1の格好になっている。

開けた内庭に移動して、少し距離を取って対峙するが、2人の可愛らしい様子に笑いが漏れそうになるのを必死でゲオルグは堪えなければならなかった。

ソルの剣の持ち方がサマにならず、ミルチャーが手を添えて直してやっている。気配に振り仰げば、剣術の師もひっそり見守っている様だ。

「そろそろ良いか?」

優しく問うゲオルグに、しっかり剣を構えた2人が肯くのを合図にゲオルグはゆっくりと間合いを詰める。ソルランデットが走って切り込もうとするが、剣を構えての動きは鈍い。

しっかりとゲオルグはソルの一撃を受けて、ゆっくり流す。よろけるソルとの間にすかさずミルチャーが入り込んで、2撃目を防いで見せた。

(ほぉ)

ゲオルグが感心しつつ、反撃を警戒するがミルチャーは打ち込まず、少し間を取ってソルの体制が立て直るのを守っていた。

(はて。もしかすると…?)

教科書通りの動きをしない、その様子からある事に気づいたゲオルグは今度は自分から仕掛けてみる。


ゲオルグは構えるミルチャーの剣を払って、ソルに向き直る。正面からソルランデットと向き合うが、ソルの方もひるんではいない。こういうところは、血筋というべきだろうか。

返す刀で側面からソルの剣目掛けてなぎ払いをかけた。加減したつもりではあるが、ソルランデットはゲオルグの剣の勢いで足がもつれる。

その間を風の様に切り込んでミルチャーがソルを体ごと支えてからソルランデットを後ろに庇って見せた。

「危ないぞ!」

思わず声をかけるゲオルグだったが、脇かからソルランデットがべそを描き始めたので、いったん小休止となってしまった。


「もう少し続けるか?」

ソルランデットを家令が脇へ連れて行って、菓子など出してなだめている姿を見守るミルチャーにゲオルグが声をかけると、振り向くミルチャーの顔がぱっと輝いた。

「はい!」


模擬刀を撃ち合う軽い音の響きが、軽快にあたりに響き渡る。スムーズな足運びに剣の捌き方。何度か撃ち合うとその上達振りはあきらかで、先ほどの動作とは目を見張る違い振りだった。

稽古に熱中して、どのくらい経ったのか。すっかり飽きてしまったらしいソルランデットが欠伸をし始めたあたりで、ミルチャーの集中力が切れて来た様だ。

最後にミルチャーの打ち込みを受け流して、ゲオルグは終わりを告げた。

大きな吐息を吐いて、ミルチャーは頭を下げた。

「ありがとうございました!」

「ずいぶん上達したな」

その言葉にミルチャーは嬉しそうな笑みをこぼした。

「ところで、お前長物はやってみる気は無いか?」

「え…?」

面食らうミルチャーにゲオルグは続けた。

「お前、あいつがいると、無意識にあいつを守ろうとして、攻撃が弱くなっているぞ。その気持ちは嬉しいが、それだと2人ともやられる可能性が高くなる。間合いが取れる武器を扱える様になっていれば、もう少し楽に戦えるんじゃないかと思うんだ。別に剣を捨てろというわけではなく、両方習得すれば良いだけだ」

ミルチャーは言われたことにピンと来た様だ。驚いた顔をしつつもうなずいている。

ゲオルグは剣の師が頭を下げるのを目に、ソルの頭をひとなでしてから屋内へ入って行った。


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