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ep.5 私は復讐に燃える女ですが、なんと魔界に行けそうなので行ってみました

ここは人間界

草原が広がり、美しい川と海に山岳地帯の国『バンバレア』

かつては遊牧民たちが東西南北自由にこの国を拠点に行きかい、交通の要所として栄えた。


しかし15年前。

人間界に突如として厄災が襲った。

人間たちの呼称ではこれを『カウカの厄災』と呼ぶ。

カウカとは人間界にもその名が神話として伝えられている古の大妖怪『セアラ』の末裔にして、

人間界を侵略せんとした妖怪であった。


カウカは、10年前に人間界の軍事大国『グランドバレー王国』によって封印されるまで、いくつもの人間界の国を蹂躙した。

この国バンバレアもそのうちの一つである。


バンバレア国内にはいたるところにその傷跡が残っており、特に地方都市や田舎ではそれが顕著である。


ここ、バンバレアの山間部のとある村・ケリグもそのうちの一つであった。


「じゃあ、今日のお勉強はここまでよ。ちゃんとお家で復習するのよ。」

褐色の肌、ややパーマがかかったボブカットにブロンドヘアーの女性が机に向かって文字を練習する7~8歳の子どもたちに声をかける。


「ありがとう、アスセリお姉ちゃん!」

「また明日ね~!」


子どもたちは元気に廃寺院を駆け足で飛び出していった。


アスセリと呼ばれたその女性は、その子たちと同じくらいの年のころに、今は亡き両親と兄とともに妖怪カウカ軍の破壊から逃れるため、ありとあらゆる場所に避難場所を常に追い求めていた。


アスセリの教え子たちはカウカの厄災を経験していない。

「平和な時代になったわ。」


貧しくても平和を謳歌する子どもたちのことを、アスセリは心から愛していた。


アスセリは廃寺院にてカウカの厄災から焼失を免れた魔導書を読み漁っていた。

アスセリは現在20歳である。


彼女の父さえ生きていれば、しかるべき高等教育機関で魔法に関する専門教育を受けることもかなったであろう。

だが、戦争孤児である彼女にそのような機会は巡ってこなかった。


しかしながらアスセリには魔法に関する天性の才能があり、それと同時に彼女の血のにじむような努力の末一般人では決して習得しえない強烈な攻撃魔法を習得しつつあった。


その彼女の心の根底にあるのは妖怪に対する強烈な恨みがあり、彼女をひたすらに突き動かす原動力でもあった。


(いつか魔界に潜入し、私のお父さん、お母さん、お兄さんを殺した妖怪を一匹でも多く必ず殺す)


燃え盛る復讐の炎が彼女の才能と努力を支えて続けていた。


さらに時間は経過し、アスセリは廃寺院から自宅へと向けて歩いていた。

彼女は爆裂呪文を得意とし、独学で中級爆裂呪文エクラルをマスターしていた。


本来、中級以上の呪文を使いこなすためには、魔力を呪文に効率よく媒介する武具であるマジックウェポンや剣の類が欲しいところである。

しかし、彼女にはそれらを手にするだけの経済力はなかった。


資金を得るため、村の酒場で給仕をする話もあった。

だが、ドレスを着て、酔客の視線に晒される自分を想像するだけで、どうしても足が向かなかった。


(昼の子どもたちへ勉強を教える仕事だけでは生活に精一杯。マジックウェポンだなんてとても買えない……でも、夜の仕事は……)


そのようにして家路へむかっていると、道の中央、目の前にまばゆい白光を放つゲートが現れた。


高さは大体周りの建物の2階分くらいであろうか。

その大きさの白い光の環が大きく周りの建物を照らし、空間をゆがませているような気さえする。

さらにそのゲートの中からは、明らかに異質な瘴気が漂ってきている。


「なに、なんなの?これは……?」

周りにいた人々は恐怖におののいている。


(……魔界への入り口)

アスセリはそう直感した。なぜそのように直感したのかは彼女自身にもわからなかった。

だが、この瘴気は味わったことがある。そう、『カウカの厄災』の時にだ。


そうしてしばらく様子を見ていると、徐々にゲートの光は弱くなっていき、さらに縮んでいっているように見える。


(これを逃したら魔界に行くチャンスは今後来ない!絶対に!)


アスセリは迷うことなく、ゲートに向けて全速力で駆け出した。

群集の中から誰かが叫ぶ。

「おい、あんた!何をしているんだ!」


しかしアスセリはそんな群衆には一切目もくれず、ゲートに飛び込む。

その数秒後、光は消えて空間のゆがみは消えた。


こつん・・・こつん・・・

ゲートの中は天井に光がともっており、意外と暗くはなかったが、響くのはアスセリの足音のみである。


ゲートの入り口が閉まったことを確認したアスセリはもう前に進むしかないと覚悟を決めさらに奥へと突き進む。


だいたい10分ほど歩いたころであろうか、わずかに向かい風を感じた。

(向かい風があるということは、出口があるはず!)


そう思って駆けだすと突如として目の前に白く光る浮遊する石板が空中に現れた。

見たこともない紋章が描かれ、その上に文字が浮かび上がっている。


その看板にはこのように書かれている。

『―警告―

ここから先は魔界。

力なき者、覚悟なき者、迷い人はただちに人間界へ戻るべし。来た道を引き返せば、いつかは人間界への出口が再び開かれる。

―ゼージュ神の付き人・プリヤ―』


アスセリは廃教会の魔導書、聖書、古典から得た知識により、ゼージュ神に関する知識があった


破壊と死を司る神。

古代、人類文明は発達したが、発達しすぎた文明は神の領域、

(すなわち人の寿命をなくすこと)にまで達しようとして、神をおろそかにした。

それは神々の逆鱗に触れる行為であったため、ゼージュ神により一度文明は破壊され、今の文明はニ度目であるとされる。


また、その際のゼージュ神の粛清から一部の人間たちは、当時人間界との境目があいまいであった魔界へと避難したと伝えられている。

現在の妖怪の多くが人間と同じような姿・形であるのは、妖怪と人間の間で混血が進んだためである、と結論付ける神話や伝記の書物では伝えられているほどだ。


プリヤという人物名に思いあたる知識はなかったが、おそらく天使か何かであろう、とアスセリは考えた。


アスセリは少しの間、引き戻すべきか思い悩んだ。

なにしろ、着の身着のままゲートに飛び込んだのだ。

しかし、彼女の決意は揺るがない。


(ここまで来たんだもの。前に進もう。仇を討つためにも。)


アスセリの意志はより強固なものとなり、足を一歩前に出す。


そうして、光るパネルを素通りし、歩くことおよそ10分。


再び目の前に光るゲートが現れた。

ゲートの出口からは、強烈な雷音が鳴り響いていた。

アスセリはゲートをくぐり、空を見上げた。

薄暗い雲に覆われ、雨は降っていないが常に雷が空を支配している。


ゲートの出口は小高い丘のようになっていた。

見下ろすと、目の前にはレンガづくりの街が広がっている。

そしてなにより不気味なのが、その街よりはるかに巨大で、城壁のすぐ近くで浮かぶ瘴気で覆われた黒き城であった。

空中に浮かぶ城など、どんな魔力を持つ大国の高等魔法官たちが束になっても、人間に作れるはずがない。

「ここが、魔界。」


アスセリはレンガで作られた街へ、慎重に歩みを進めたのであった。

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