表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/17

九ノ書「命をかけて戦う理由」

試験が始まるまであとどのくらいだろうか。

周りがソワソワとし始めたからもう少しだと思うんだけど…。まぁ今はヘルフの話を聞こう。


「ところでレントさん…でしたっけ?」


「そう…だけど…名前言ったっけ?」


「直接は言われてないですけどこの中で知らない人はいないと思いますよ」


「あ、そうかこの中で堂々と名前言ってたわ…」


あの狂狼め…!


「あの、おいくつですか?」


「え?年齢?」


「はい!」


「18歳だけど…」


「わぁ!良かった!僕もなんです!同い年なんじゃなかって思ってたんですよー!」


なんか面白いな。この人。


「そうなんだ、僕も嬉しいよ。」


「えっと、レントさんは」


「レントでいいよ。対等に話そう?」


「そう?じゃあお言葉に甘えて…。レントはどこから来たの?出身は?」


やばい、この質問が一番の地雷だ。この世界の街や国の名前なんか知る由もないし………。


「それが兄のこと以外覚えてないんだ。記憶喪失で」


また嘘をついてしまった…。


「記憶喪失……ってことはレントは<奪われし者>なんだね」


「ろす…たー?」


「闇の神に記憶を奪われて自分の有り様を奪われた者。それが奪われし者、ロスター。一説には闇の神が危険と判断した存在を手にかけることが出来ないから記憶を奪って邪魔してるっていうのがあるんだ」


「なるほど…」


「ロスターの人は突出した何かを持ってるってよく聞くけどあれは本当みたいだ。だってレント凄かったもん!」


ロスター…。それが本当ならこの世界には記憶を無くした者が一定数いることになる。本当に闇の神の手によってかは分からないけどロスターの謎を解明すれば転移した理由も分かるかもしれない


「レント?大丈夫?」


「あぁ!大丈夫大丈夫。それより人多いんだな試験って。てっきり少ないもんだと思ってたよ。命懸けなのに」


「命懸けでも皆叶えたい夢や守りたい人がいる。だから勇者を目指すんだ……」


「夢…?」


「…」


「じゃあヘルフの夢は何?ヘルフはなんのために命をかけるの?」


「僕の夢か…。それは…」


「それは?」


「ぼ、僕臆病者で弱くて…。そんな自分が嫌だった。でもある日道端で疲れ果てて死にそうになっていた旅人を助けたらありがとうって言ってくれたんだ。初めて僕は人を助けるということを知って、もっと色んな人を助けたいと思った。だから勇者を目指したんだ」


「そうか…ヘルフは人を助けるために自分の命をかけているのか…立派だな」


「ありがとう。レントも立派だよ。記憶を失ってもすべき事をやる…。普通は出来ない。かっこいいよ、レント」


記憶を失っても…か。ヘルフは僕が知らない色々な情報を知っている。正直に話せば正直に返してくれると分かる。言うべきかもしれない。僕が本当はどこから来たのか。今どういう状況なのか。この剣はなんなのか。


「レント?」


信じてみよう。ヘルフを。


「ヘルフ…実は僕は…」


「只今より!勇者試験!第一の試験を始める!!参加するものはこの奥へと進め!」


「ついに始まったね!レント!」


「あぁ…」


「必ず二人で突破して、決勝で戦おう!じゃまた!」


「また…な」


真実を話す事は出来なかった。ヘルフは良い奴だ。

ヘルフなら信用出来る…でも本当に話すべきなのか…

レオの事もある。迂闊に喋れば余計な誤解を招くかもしれないし……。まぁいいとりあえず今は試験に集中しよう。勇者になる。それが先ず第一の目標だから。

かくして勇者試験が始まった。



十ノ書に続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ